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覇王の傲慢とアウトサイダー  作者: 佐藤 綾音
3/5

第2話 謎謎の論文

佐藤 綾音です。


所々、小さいな修正をするかもしれませんが、本筋は変わりませんので安心してください。

誤字脱字や稚拙な文章かもですが、暖かい目でみていただければ嬉しいです( ^ω^ )

何か、読み手の皆さんが感じたことをコメントしていただきたいです。

異世界転移するのに時間がかかりますので、ご注意ください。

研究室の扉が赤く染まり警告音がなり、思考の海に沈んでいた琉威を引き上げた。


ーーアクセス権限はありません。


この夜間の研究室に、突然の来訪者である。


機械音により、琉威はため息を漏らす。

それは、研究室に遊びにくる人物で心当たりがあるのは、一人しかいない。


琉威は、無視しようと逡巡するが、しつこく扉が叩かれて、観念して、近くの扉の開錠ボタンを押す。


「琉威ちゃん、お仕事ご苦労さま。ほら、コーヒーを入れたよ」


蒼い髪の少女だった。18歳の少女であり、その洋服は学生服ではなく白衣姿である。

艶めかしさのある肢体に、成長途中であるものの大きな胸。


研究室の男性スタッフに人気がある美少女である。


銀色のお盆に、マッグカップを乗せている。

嬉しそうに、琉威に駆け寄った。


「研究室に遊びに来るな。あと、俺のことをちゃん付けするのはやめろ」


「いいじゃん。私は、琉威ちゃんのおょ……めじゃなかった。恋人なんだから」


「誰が恋人だ。お前は、ただの『賓客』だろうが」


琉威の眉間が痙攣して、自称恋人ーー蒼井 胡桃のオデコにデコピンをくらわす。


「何を笑ってやがる」


「愛しの琉威ちゃんが私を触ってくれたのが嬉しくて」

呉羽は、頬を赤くさせながらウットリさせている。


蒼髪に、青眼。美しい青空をイメージするような透き通る瞳をしていた。部下の研究員たちは、彼女に好意的だ。

美人で、天真爛漫な彼女を琉威は好きになれない。


勉強と研究しか、取り柄のない琉威は女性経験が全くないために、どう接すればいいのか。分からずにいたが、勝手に話を進めたり、琉威の周りをウロウロする彼女に振り回されすぎて、苛立ちを覚えていた。


よって、彼女の扱いは琉威の中で気を遣わないでも構わない存在であるという認識になっていた。


厄介なことに彼女は、世界で唯一『赤い霧』の病魔にかからない存在であるため、特別待遇である『賓客』となっている。

赤い霧の研究には必要不可欠で貴重な存在である彼女は、優秀な研究員である琉威よりも価値が上である。


噂では、研究所の上に存在する麻黄病院の上階で住んでいるらしい。

不服だが琉威よりも権限が高い。研究室の権限は、さすがにないが。


この女を発見したのも、母の偉業の一つだ。

出世のためにも、このふざけた女を怒らせることは避けなければならない。


「琉威ちゃんのためにコーヒーを淹れたの。夜遅く、お疲れ様です」


「ああ、ありがとう」


琉威は、コーヒーを受け取り口に含ませる。

絶妙なコクがあり、酸味が少ない。

腹が立つことに、こいつが淹れたコーヒーは美味しい。砂糖を使わず、蜂蜜を使っている。あっさりした甘みがある。


実は、苦いものが苦手な琉威にとってはちょっぴり嬉しい。


「…………」


「なんで、そんなにジロジロ見ている」

コーヒーを飲むと、呉羽の視線が刺さる。目が爛々と輝き何か期待しているような印象だ。


「コーヒーは、どう? 美味しい、美味しい?」


迫る呉羽に、琉威は困った表情になった。

「美味しくないことはないな」

とそういい。頬が赤くなった。

純粋に、照れくささがとれる反応を示す琉威。


その機微な反応を面白そうに目を細めた呉羽は、ニマニマが止まらない。


呉羽の行動を一つ一つが、琉威の機嫌は悪くさせる。

「もう、帰れ。俺は、仕事をしている」


「私も手伝ってあげよう。琉威ちゃんは何を勉強しているのかな」

胸を張って、威張りながら琉威のテーブルに置いてある書類を手に取る。


「馬鹿ッ 資料を勝手に見るな」


すると、一瞬だけ呉羽の表情が凍りついたように固まった。その表情を初めて見た琉威は、少し驚いた。

何か、いつもと雰囲気が異なる彼女に違和感を覚える。

琉威が自分を見ていることに、気づいてすぐに笑顔に戻る。


「琉威ちゃん。私のこと見惚れていたな」


「そんなことあるか。で、お前は『赤い霧』について知っているのか?」


「『赤い霧』って言うのこれ? そういえば、テレビで見たことあるよ」


人差し指立て、頬に添えている。テレビ番組のワイドショーについて話をしていた。それを一生懸命に話す仕草は、いつもの彼女だった。

琉威は、自分の思い違いだろうと思う。『赤い霧』を見知っているような印象を受けたのは。


もちろん、彼女は『赤い霧』の被害者であり、知っていてもおかしくはない。だけど、初めて紹介された時は、『赤い霧』について

知らない様子だった。


「ねぇ、聞いているの? 琉威ちゃん、私が話しているのに考え事していたでしょ」


「俺は、研究のことで頭がいっぱいなんだよ。得体の知れない『赤い霧』を発生させた方法を探しているが、発見できる気がしない。くだらない論文に、悩まされて疲れているんだ」


「くだらない論文? でも、これって琉威ちゃんのお母様が書いたものでしょ?」


「ああ、一族の恥だな。こんな論文に価値はない。自分の母親が書いたなんて、考えたくもない」


琉威は、自嘲気味に言う。あまり、家族の話をしない男がぽろっと口に出した。珍しく弱気に言う琉威。どうやら、本格的に疲れているみたいだ。


しかし、口走った言葉を呉羽は笑って見過ごせなかった。


「貴方のお母様をそんな風に言わないで。いくら琉威ちゃんでも怒るよッ」


少女の蒼い瞳がつり上がり、琉威を睨んでいる。

ここまで感情的に怒る姿を、いままで見たことがない。その勢いに呑まれそうになるが、冷静で冷酷な琉威が表面に現れた。


「何をそんなに怒っている? 俺の母親のことを悪くいようがお前に関係ない」


自分の母を悪く言う。それは、褒められたことではない。琉威の悪い人間性が現れた言葉だった。しかし、それを他人から怒られたくはなかった。

琉威は、高いプライドが傷つけられることを恐れていた。


製薬開発技術者として、間違ったことは言ってない。論文とは、研究者たちの資産だ。お互いの研究成果を讃え合う誇り高いコミュニケーションだ。

その論文を、非科学的で全く根拠のない空想を並べて、再現性のない研究方法を載せている。


それは、研究に対する冒涜である。


生粋の研究者である琉威にとっては、恥だった。


他の研究者に、後ろ指差される。犯罪歴と変わらないほどの行為だ。桐林家のブランドを傷つけている。


言葉にするのは、不本意であり。感情的になった琉威の失態であるが、台詞の全ては本心である。



「関係ならある。貴方のお母さんは、私を守ってくれた。だから、琉威ちゃんがお母さんのことを忘れても、わたしは覚えているよ」


「そうだったな。お前の方が母を知っている。息子である俺が覚えてないのが、気に食わんが。お前が怒る理由は、納得できる。悪かった」


「だけど、俺の言っていることは間違えていない。お前も論文を読んだのなら、わかるだろう。これは、あまりにもめちゃくちゃだ。不完全すぎる」


琉威から不器用すぎる謝罪を聞いて、呉羽は満面の笑顔になる。ハートマークが彼女の笑顔から飛び出している錯覚を見る。

しかし、「お母さんのこと忘れているんだ」と呟いて、悲しい顔をした。


表情の変化が激しい奴だなと、感心する。

俺には、そんな真似はできない。

いままで、自分を殺してきた。


怒り以外の感情は、胸の奥底に閉まってある。

もう永久に出さないように、鎖で縛ってある。


呉羽は、指を立てると論文を見ていう。


「そういえば、琉威ちゃんのお母さんは謎謎が好きだった。もしかして、この論文は謎謎なんじゃない?」


「おい、おい。研究者がなぜ論文に謎謎なんか書く。隠すのであれば、論文を書かなければいい」


突拍子な呉羽の一言を鼻で笑って、

すぐに否定する。


『赤い霧』を本当に出現させることができれば、恐ろしい災害を人為的に引き起こすことができる。

そんな危険度が高い研究成果を発表するのは、最悪な結果をもたらす。製薬目的でも、『赤い霧』の悪辣さが真実であれば、だが。



だから、隠すという推測は理が通る。



しかし、わざわざ謎謎にして研究内容を隠すのであれば、論文を書かなければいい。そうすれば研究内容を誰にも伝えずに死ねば、永久に闇の中だ。

当然、自分の母であれば考えつく結論だろう。


しかし、書かなければならない理由がもしあったら。


説明がつく。


呉羽が暗号を解読しようと頭を捻りながら、論文を食い入るように見てる。


「えへへへ、わかんないや。琉威ちゃんももう一度見てみなよ」


論文が逆さまになったまま、琉威に突きつけられる。


「馬鹿っ これじゃ読めない」


琉威は、逆さまになった論文を凝視して思考が停止し、固定観念が崩壊する音が聞こえた。

ーーーこれは、もしかして。いや、あり得るのか?




評価をしていただければ嬉しいです。

今後の創作活動の精神的支柱になります。

٩( 'ω' )و

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