表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【漫才】帰郷

作者: 山﨑歩帆

ボケ「は~い、どうも~皆さんこんにちわんこそば!もう食べられない許してください!」

ツッコミ「……」

ボケ「な~んて言ってますけども!それでも食べちゃうのが人の常!な~んて、言ってますけどもっ!皆さんどうか、腹の具合にはご注意を! 腹はいつでも10分目!って!いつでも満腹じゃねぇか! もう、何にも食えねぇよ!ランニングしないと、食えねぇよ!でもわき腹痛くなるのやだよ、ランニングはいやだよーーー!で、おなじみの!(ボケの名前)でございます!そしてこちらが……! 火星人からやってきた―――」

ツッコミ「来てない!」

ボケ「あー、すいません、間違えました。地球から五億光年と三ヵ月ほど離れております、タピオッカ星からやってきました―――」

ツッコミ「来てない! そんな星はまだ発見されていません! 僕は、(ツッコミの所在地)から来ました! 電車乗り継いで! 来ました!」

ボケ「そんですかーんっ……」

   ボケ、その場で小躍り。

ツッコミ「……あのー、楽しそうなとこ悪いんだけど……」

ボケ「う~ん?」

ツッコミ「俺、お前の笑い、わからない」

ボケ「ズバ――ッ! は~い、ズバッと一刀両断! あ~れ~! どうか、おゆるしをぉおうう……」

ツッコミ「……」

ボケ「おうおうおうぅ……だっけっど! 自分で縫っちゃう! ちょちょいいのちょ~いだ、オーウ、ヤッフ! 治った治ったヤッフッフー!」

ボケ「(ツッコミの肩を掴み)あのさ!」

ボケ「フッ?」

ツッコミ「もう、帰らない? 田舎帰ってさ、うどん屋でもやらない?」

ボケ「え~? どうせやるならわんこうど~ん、次から次へとうどんがうどんが! ひぃっ! ヤアアああああっ!」

ツッコミ「……」

ボケ「わんこわんこでわんこうど~ん、あ~じ~つけはっ! お湯だけ! あ~じ~つけはっ! お湯だけっ!」

ツッコミ「(目頭を押さえている)」

ボケ「『おい、店主!』『はいっ! なんでございやしょ!』『ここのうどん、ちっとも味がしねぇじゃねえか! 一体どうなってんだ!』『あ~、すまねぇ、旦那! すぐ、代わりのもんを持ってきますよって!』『頼むぜ? んっとによぉ…!』」

ツッコミ「すみません、ごめんなさい。何かが急に始まりました」

ボケ「『ん? いい匂いがしてきたな。やっと来たのか、代わりのもんが? え?』『お待たせしました、旦那ァ!』『おおおおお! な、なんだそりゃ! そのでっけぇ桶は、一体なんなんでぇ!』『味がないとおっしゃいましたので? 出汁の風呂を持ってきたんでございます』『はぁ? どういうこってぇ?』『これに浸かれば、旦那から出汁が、出るようになりますよ……』」

   ボケ、深々とお辞儀をする。

ツッコミ「終わったー! 突然の小噺が終わったー! でもわかんないっ! 面白さ、全っ然、わかんない! 笑いって、なんだろう! あー、帰りたい! もう、帰りたあぁーい!」

ボケ「(ツッコミの名前)……」

ツッコミ「な、なんだよ?」

ボケ「ドントシンクフィー……」

ツッコミ「俺は感じるよりも考えたい」

ボケ「ぬぅおおおお! じゃ、じゃあさ! 砂のお城、作る?」

ツッコミ「作らない!」

ボケ「じゃあ、一緒に孔雀、とりにいく?」

ツッコミ「行かない! どこにいるか知らない!」

ボケ「じゃあじゃあ、歯ブラシ素材から作る?」

ツッコミ「作らない! プラスチックの原材料、知らない!」

ボケ「じゃあじゃあ……うどん粉、買いに行く……?」

ツッコミ「え」

ボケ「うどん粉と出汁の材料買って、田舎かえって、不動産屋行って、手ごろな物件探す……?」

ツッコミ「(ボケの名前)……」

ボケ「安易に繁華街にオープンするのではなく、『知る人ぞ知る』というイメージを持ってもらえるよう、あえてアクセスしにくいところにかまえる?」

ツッコミ「すげぇ、具体的」

ボケ「そしてメニューは三つだけ。肉うどんとかま玉と、素うどん。毎日7時から15時までの営業。水・日・祝日休み」

ツッコミ「おぉ……。休む時はしっかり休むタイプのお店……!」

ボケ「無論、麺は自家製。出汁は厳選した鰹節だけを使った、あっさり出汁。でも、何度でも食べたくなる、コクと旨味を感じられる、味わい深いスープになっています」

ツッコミ「あー、食べたい! それ、今すぐ食べたい!」

ボケ「店主の名は(ツッコミのフルネーム)。かつてはお笑い芸人を目指していたが、ボケの笑いについていけず解散。一人でお店を切り盛りしています」

ツッコミ「え、一人……?」

ボケ「店主に元相方さんの所在を訊ねたところ、『誰もあいつの居場所がわからない、コンビを組んでいたことすら、今となっては、わからない……』とのことでした」

ツッコミ「急。急に、ドキュメント調の怖い話になった。なんでそうコロコロ世界観変えるのよ」

ボケ「だって……俺は、諦めたくないから……」

ツッコミ「(相方の名前)……」

ボケ「わんこうどんの経営、諦めたくないから……!」

ツッコミ「うーん、まさかのわんこうどん! もう、いいよ。どうもありがとうございましたー」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ