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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
4章 文化祭
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第4章11話 文化祭2日目③

短めが続きます。

 さて、自分にもネックレスをつけた──というか姫乃につけてもらった──ところで大悟たちとばったり会った。しかし優乃のクラスの目の前だったので、大悟をここから遠ざける必要がありそうだ。理由はまぁ、わかって欲しい。


「大悟か。デート楽しんでる?」

「ちょ、タマッキー! 声大きいよ!」


 酷く慌てる亜美が新鮮で、もう少しだけ今までの仕返し……もといからかってやろうと思い言葉を重ねる。


「散々僕たちをからかっておいて自分たちのことは内緒にして欲しい、か。随分都合がよすぎるんじゃないか?」

「うぐっ…………それに関しては、その、すみませんでした」

「ふーん? そこまでして隠し通したいか──っ()


 従順な亜美を見ていると何故か嗜虐心がくすぐられてきた。そのまま新しい世界に目覚めそうになったところで、姫乃がブレーキをかけてくれた。まぁ、パンフレットを丸めて僕の頭を叩いただけなんだけど。


「環くん、亜美ちゃん虐めちゃダメ」

「仰せのままに。てか別に本気じゃなかったんだけどな」

「いやいや、タマッキー目がマジだったよ!?」

「あ、そう」

「反応薄っ」


 亜美が勝手に盛りあがってくれるので僕としては非常に楽だ。関係あるかどうかはさておき、少しだけこの文化祭という行事に好感が持てた。

 いや待て、まだ最初の目的を果たしていない。急いで大悟たちをこの場から遠ざけないと──と思ったところで、僕の努力(まだ何もしていないけれど)が全て水の泡になった。つまり、こういうことだ。


「手作りバザーやってまーす。見て行ってくださーい……ってあれ? 大悟くんじゃん」

「あぁ、優乃さんか」

「どう? 私らのクラス見てかない?」

「んー…………亜美、どうする?」

「いーよー。多分タマッキーたちがつけてるネックレスってここで買ったやつでしょ? 私も欲しーなー」

「へいへい」


 あれ?

 思っていたより普通の対応だった。僕の勘違いだったんだろうか、そう安心して姫乃の方を見ると、姫乃はじっと優乃を見つめていた。そして僕が何か言う前に優乃の方へ歩いていき、彼女の手を掴んでこちらに戻ってきた。


「えっと……結城さん?」

「姫、何を──」


 姫乃の考えがわからず、何をしたいのか訊こうとした僕の言葉を遮って、姫乃は言った。


「大きなお世話かもしれないけど……言いたいこととか聞きたいことがあるなら、自分に正直になった方がいいと思う」


 それを聞いた優乃は、困ったような笑みを浮かべて呟いた。


「そんなことしなくても……あの2人、付き合ってるんでしょ? 私なんかが邪魔するわけにはいかないよ」

「本当にそれでいいの?」


 姫乃は更に言葉を続けた。僕は止めるべきなんだろうけど、ここで止めてはいけないような気がして、静かに姫乃の言葉を待った。


「大悟くんのこと、好きだったんでしょ? その想いを抱えたままじゃ、優乃ちゃんが苦しくなるだけじゃん。ちゃんとその気持ちに区切りをつけてあげないと、後悔するだけだよ」

「…………わかってる。でも、怖いんだ。私の想いを伝えちゃったら今まで築いてきた距離が壊れちゃう気がするんだ。だから、言えないよ」

「それは、違う」


 気がつくと、僕はこんなことを言っていた。驚いたように僕を見る優乃。僕は優乃の目を見て、ゆっくりと言いたい言葉を探し出した。


「今まで大悟のことを見てきたなら、梅崎さん自身がよくわかってるんじゃない? 大悟はそんな人間じゃないって」

「………………っ! それは──」

「だから大丈夫だと思う。それに、何かあったら僕が後で大悟をシバいておくから」


 冗談混じりでそう言うと、優乃は漸く微かな笑みを浮かべた。


「そう、だよね……うん、わかった。ちゃんと伝えてくる」

「「頑張って」」


 優乃は「ありがとう」と言って大悟の元へ駆けて行った。僕たちは優乃の背中を見送って、バザーを後にした。その先を知っているのは、本人たちだけでいい気がしたから。


「それにしても」

「ん?」

「環くんはすごいね。私が言いたいこと、全部言ってくれた」

「すごいのは姫だよ。姫があそこで言い出してくれなかったら黙ったままだった気がする」

「…………優乃ちゃん、大丈夫かな」

「大丈夫だよ、きっと。まぁ、大悟たちにはこれ以上隠すなって言うべきなのかもね」

「そうだね」


△▲△▲△▲△▲△▲


「それで、次はどこ行きたい?」

「それはもう決まってるんだ。ここ!」


 姫乃が指し示すところに書いてあったのは、“カップル限定 その愛を確かめよう!”という少し不安になる言葉だった。3年生のクラスか。


「何か、すごいね」

「この学校自由すぎない?」

「でもちょっと楽しそうじゃない?」

「否定はしない。じゃ、行ってみようか」

「うん!」


 この時はまだ軽い気持ちだった。それなのに、まさかあんなことになるなんて。

 パンフレットの言葉の本当の意味を知るのは、もう少し後のことになる。とにかく学校側が許可したというのが信じ難い企画だった、とだけ言っておこう。


 ──本当に、どうしてこんな企画が通ったんだ?

次話以降、2人の身に何かが起こる!

乞うご期待!

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