第3章22話 無自覚イチャイチャ(登校編)
調子がいいので本日3話目!
休みで退屈してる学生さん(自分もだけど)達に届け!
※イチャイチャ多め
宣言通り、姫乃は制服に着替えたあと僕の部屋に戻ってきた。ちゃっかり学校の荷物と歯ブラシを持ってきているあたり、登校時間になるまで僕の部屋にいる、という意味なんだろう。
姫乃はリビングにやって来るなり、荷物を床に放り出して僕に訊いていた。さっきまでの赤い顔はどこに行ったんだろう。
「今日の朝ご飯は?」
「昨日のカレーが少し残ってたからカレーオムレツ。あとはトーストと野菜スープ」
「やった!」
「いや、手抜きなんだけどな」
そんな他愛もない会話をしながら椅子に座る。どちらからともなく手を合わせ、「いただきます」と言ってから食べ始める。オムレツは過去最高の出来だった。
「んー! オムレツふわとろだ」
「うん。自分で言うのもあれだけど、自信作」
「すごい美味しいっ」
「ありがと」
あっという間に食べ終えて、少しだけリビングで寛ぐことにする。姫乃の定位置は昨日と変わらず僕の隣。僕も姫乃が隣にいてくれると落ち着けるからありがたい。
「環くん、寝れた?」
「ん、どうして?」
「昨日、私がベッド占領しちゃったでしょ。体とか痛くない?」
「大丈夫だよ」
「そっか、ならよかった」
「うん」
何気なくテレビをつけて朝のニュースを見ていると、姫乃が僕の袖を引っ張ってきた。横を見ると身長差的に姫乃が上目遣いになる。『袖を引っ張る』と『上目遣い』のコンボの破壊力が尋常じゃない、というどうでもいい大発見をしてしまった。
固まってしまった僕を見て、姫乃が心配そうに僕の名前を呼んだ。
「…………環くん?」
「あ、ごめん。大丈夫。何?」
「ん、とね……お父さんと仲直りできたんだよね?」
「うん。それも含めて今日皆に話すつもり」
そう答えてから、父さんが姫乃に会いたがっていたことを思い出した。これを姫乃に言うべきか迷っていると、姫乃が時計を見て叫んだ。
「わ! もうこんな時間。環くん行こ!」
「あ、うん」
言いそびれてしまった。焦るほどのことでもないし、まぁいいか。
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外に出ると、気持ちいいほどの秋晴れだった。真っ青な空に目を奪われていると、先に出ていた姫乃から「置いてっちゃうよー」と声をかけられた。「今行く!」と返して後を追う。
道路を歩いていると、唐突に姫乃が腕を絡めてきた。びっくりすると同時に腕にあたる柔らかな感触に気づいてしまった。というか、やっぱり姫乃が積極的すぎる気がする。
「あの、姫…………」
「何?」
「ちょっと積極的すぎませんかね。その、コレとか」
胸が当たってます、とはっきり言えない自分が情けない。
僕の指摘に気がついた姫乃は、少しだけ考える素振りを見せてから真面目な顔になって答えた。
「こうでもしないと、環くんまたどっか行っちゃいそうで怖いんだもん」
「姫…………」
「だから離さない!」
「いや、あの……せめて手を繋ぐとかじゃダメ?」
「えー…………」
不満そうに頬を膨らませた姫乃は、「仕方ないなぁ」と呟いてから言った。
「恋人繋ぎなら許します」
「仰せのままに」
ほっと胸を撫で下ろして姫乃の手を握る。指を絡めると、姫乃は嬉しそうに含羞んだ。
可愛い。
と、ここまではいいのだが。僕はまだ気がついていなかった。いや、普通に考えれば気がついて然るべきなんだけど、浮かれすぎてそんな当たり前のことにまで頭が回っていなかった。
そう、登校しているのは僕たちだけではない、ということに。
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突然後ろから声をかけられた。というか頭を叩かれた。
「お・は・よ!」
「痛っ……何だよ大悟」
大悟は呆れたような、憐れむような目で僕を見て言った。
「お前、何も気づいてねーの?」
「……何に?」
「周り、見てみ」
大悟に言われるままに周りを見て、やってしまったと後悔する。が、時すでに遅し。
何が起きていたか簡単に説明すると、主に女子生徒が僕たちを見て顔を赤らめていたり、主に男子生徒からは恨みの込められた視線を向けたられたりしていた。
よく考えたら当然の結果だ。
「お前、スゲーな」
「いや、違…………わないけど違う!」
「ハイハイ、わかってますよー」
「ちょっ、話を聞け!」
僕の必死の叫びも虚しく、大悟は悪魔のような笑みで去っていった。さすが運動部、あっという間に引き離されてしまった。
これは確実に教室で拡散されるやつだろう。もう諦めるしかないのか。
「環くん、ごめん……」
姫乃が申し訳なさそうに謝ってきた。悪いのはどう考えても大悟だというのに。後で大悟をシバこう、そう決めてから姫乃に言う。
「姫が謝ることじゃないよ」
「でも……」
「別に付き合ってるんだし堂々としてればいいよ」
そう答えると、姫乃は嬉しそうに「うん!」と言って笑った。姫乃の笑顔が眩しい。
結局僕たちは手を繋ぎ直して登校を再開した。色々な視線を向けられたけど、こればかりは慣れていくしかない。
いつもより長く感じた通学路を歩いて学校へ到着する。大袈裟だと言われるかもしれないけれど、久々の学校は何だか新鮮な感じだった。
皆に何を言われるのか、少しビクビクしながら教室に入る。姫乃に歩幅を合わせていたのでゆっくり来たけれど、教室にいたのは数人だった。ただ、数人とはいえ全員がクラスメイト。すぐに僕たちのまわりに壁ができてしまった。
「柏木くん大丈夫だった?」
「心配させんなよー」
「急に休んだから驚いたよ」
色んな人からそう言われる内に、姫乃と離れてしまった。遠目にこちらを見ている大悟や桔梗に助けを求めたけれど、返ってきたのは口パクでの「頑張れ」だった。さすがにひどいと思う。
どうしようかと頭を悩ませていると、少し離れた所からとんでもない声が聞こえた。
「もう! 環くんと話したいの!」
「……姫!?」
姫乃のその叫びを聞いた人の壁が割れ、姫乃がこちらにやって来た。そして僕の腕を掴んで人混みから抜け出して、僕の席に座る。
誰も何も言うことのできない、あっという間の出来事だった。ただ、ほんの少しだけ恥ずかしい、かな。
少し遠くから、桔梗の「さすがですね……」という声が聞こえたような気がした。
やっぱ甘々のラブコメ好きなんだなーと書きながら思いました。




