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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
3章 家族
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特別編 環と姫乃と猫

猫の日なので特別編。


※本編とは何ら関係ありません、ご了承下さい。

 これは、まだ僕と姫乃が付き合う前の話。

 夏休み中盤の、出校日の下校中に起こったことだ。


「あ、猫」

「猫だ」


 2人の声が重なって、それに対して、また笑い声が重なった。

 炎天下の中、通学路にある住宅のブロック塀の陰で、黒猫と白猫が1匹ずつ涼んでいた。


「黒い子暑そうだね」

「どっちも暑そうに見えるけど……?」


 そう返すと、姫乃は頬を膨らませて振り返った。


「そーゆー真面目な返しいらなーい」

「ご、ごめん……」


 何故か怒られる形になって思わず謝ると、姫乃は意地の悪い笑みを浮かべた。


「アイス1個で許してあげる」

「姫乃、それが狙いだったよね」

「サーナンノコトデショー」


 姫乃は嘘をつくのが下手だ。今だって言葉が棒読みになっている。本人はそれに気づいていないので、何というか、見ていて面白い。


「わかったわかった。じゃあ後で買うよ」

「やったー!」


 朗らかに笑った姫乃は、背負っていた鞄の中から下敷きを引っ張り出した。何をするつもりなのか、黙って見ていると、そのまま2匹の猫に向かって風を送り始めた。


「クロ、シロ、涼しい?」

「……名前付けたの?」

「うん、可愛いでしょ」

「可愛いっていうか…………安直?」

「ひどっ! じゃあ環くんが名前つけてあげてよ」


 突然の無茶ぶりに、渋い顔をしていたのだろう。姫乃が僕の顔を見て楽しそうに笑った。

 そんな姫乃を横目に、2匹の猫をじっと見つめる。

 片方は本当に真っ黒で、それでも目だけがキラキラと輝いていた。

 もう片方は対照的に真っ白。陽光を反射していて、とても眩しい。

 この2匹から受ける印象をそのまま名前にすると………………


「夜と朝?」

「環くん…………人のこと言えないよ?」

「うっ…………」


 言葉に詰まる僕を見て姫乃がケラケラと笑う。何とか話題を変えようと必死に頭を回転させていると、後ろから声がかけられた。


「あれ、環?」

「あー姫ちゃん! 10分ぶりー」


 その声に驚いたのか、2匹の猫は逃げてしまった。


「あ! クロ、シロ……」

「それで決定だったんだ……」


 僕が名前を考えた意味はどこへ行ったんだ…………。そんなことを考えていると、事情を何も知らない大悟が「何かあった?」と尋ねてきた。小声なのは、姫乃に睨まれているのを気にしてだろうか。


「あーあ、大悟が大声出すからー」

「俺のせいかよ! てか何がだよ……」


 綺麗にノリツッコミを完遂する大悟を無視して姫乃に言う。


「姫乃、暑いしそろそろ帰ろうよ」

「うん、そうだね」

「いや俺を無視すんな」

「じゃあね、大悟」

「あぁ、またなー……ってなるか!」


 この超暑い中でも元気な大悟が少し鬱陶しく感じ始めたので、そそくさと退散することにする。大悟の相手は亜美に任せておけばいいだろう。


「ねぇ、タマッキー。何か失礼なこと考えてない?」

「別に? じゃあ僕たち急ぐから」

「あ、うん……」


 2人の追及を華麗に躱して家に向かう。そんな僕の肩を掴んで、姫乃が笑みを浮かべて言った。


「環くん、アイス」

「あ、はい…………」


 残念ながら忘れてはくれなかったようだ。

 ため息をついて、仕方なくコンビニに足を向けた。

猫飼いたい(猫アレルギー)

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