表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
2章 2人の関係
41/144

第2章4話 男子に恋愛相談をすると大抵こうなる。

少し長め?

テスト週間なので今月はこれが最後の更新になるかも

結構キリがいい感じにはなった……のかな?

 1番の難関だと思っていた伊織の問題も拍子抜けするほどすんなり解決し、ぼーっとしている間に週末になった。そう、大悟たちとカラオケに行く日だ。

 午前6時起床、6時半朝食、その後は暫くダラダラテレビを見ながら過ごして──午前8時、僕の家の前に大悟と伊織がやって来た。


「うーっす」

「おはよー」

「だから何で僕ん家集合にするのさ……」

「何となく」


 その返答に大悟を睨むけど、その当人はどこ吹く風だった。もう4ヶ月近くの付き合いだから慣れてしまったけれど、今更ながら大悟のマイペースっぷりに驚かされる。


「んなことよか早く行こーぜ」

「はいはい。場所は?」

「駅前のとこ」

「じゃあ現地集合で良かったんじゃ?」


 言っても無駄だ、そう思いながらもツッコまずにはいられなかった。そんな僕を見て、大悟たちは笑いながら歩き出した。

 仕方なく僕も家を出て2人の後ろを追った。

 カラオケまでの道で、伊織が僕と姫乃のことについて聞いてくることはなかった。つい先日、伊織から「応援する」と言われたばかりとはいえ、それが逆に僕を不安にさせた。

 そして1人勝手に悶々としながら移動すること数十分、僕たち3人はカラオケに到着した。


△▲△▲△▲△▲△▲


 既に大悟が予約してくれていたらしく、面倒(僕がそう思っているだけだけど)な手続きもそこそこに部屋に入ることができた。


「よっしゃー!歌うぞー!!!」

「おー」

「……おー」


 友人同士でカラオケにやって来たとはいえ、そのテンションは言葉の通り三者三様。大悟>伊織>僕の順に高いテンションで、同じ部屋でもどこか温度差があるように感じられた。

 しかしここで問題が発生、というか伊織が意図的に発生させた。


「そういえばさー」

「「ん?」」

「環、相談したいことがあるとか言ってなかったっけ?」

「…………っ!?」


 やっぱり伊織は怒っているのだろうか、一瞬そう疑ってしまったけれど、伊織の顔を見てそれは違うということに気がついた。あの顔から察するに、伊織ははただ単に僕をからかって楽しんでいるだけだ。そして僕は伊織の思惑通り見事に動揺してしまった。これでは「そんなこと言ってない」と言っても逆に不自然になるだけだ。

 大悟に至っては何も疑うことなく「そうなのか?」と僕に聞いてきた。こうなってしまっては、大悟にも全てを打ち明けるしかないのだろうか…………。

 そう思った僕は、諦めて口を開いた。


「相談っていうか……報告?になるんだけど」

「おう」

「僕、姫乃に告白するよ」


 これを聞いた時の大悟の表情の変化を、僕は当分忘れることはないだろう。大悟は口をあんぐりと開けたと思ったら、次の瞬間には満面の笑みになって僕の方をバンバン叩いてきてこう言った。


「マジかぁ、やっとかよ」

「うん」

「あ、でも……」


 そして振り返って何やら気まずそうな表情で伊織を見た。大悟は何も言わなかったけれど、その表情が意味する言葉、それを僕は(おそらく伊織も)容易に想像できた。

 だからだろう、伊織は一度頷いてから大悟に言った。


「大丈夫、俺知ってたからな」

「…………」

「大悟がそんな反応するってことは俺の好意もバレてたんだろ?」

「あー……まぁな」

「その俺が言うのもなんだけど、2人を見てるとさ」

「あぁー………………」


 そう言って大悟と伊織は気持ち悪いくらいの温かい視線を僕に送ってきた。2人の言いたいことはあまりわからなかったけれど、とにかく馬鹿にされているということは理解できた。


「何だよ」

「いや、別に」

「別にー」


 そう言ったっきり2人は僕から目を逸らしたのでこれ以上の追及は無理だと諦めて溜め息をつく。そして気を取り直してこう言った。


「というわけなので、どうかアドバイスを……」


 次の瞬間、カラオケボックスの中には2人の笑い声が響き渡った。


「何でそこで笑うかなぁ……」


 恨みを込めてそう言っても、2人の笑い声は更に大きくなっていった。だんだん険しくなっていく僕の顔を見て、さすがにまずいと思ったのか大悟が口を開いた。


(わり)い。だってさ……」

「だって?」

「アドバイスつっても、お前の素直な気持ちをそのまま伝えればいいだろ」


 それを聞いて納得する。僕の説明が足りていなかったようだ。そこで僕は姫乃に告白されたということも含めて、今日までのことを詳しく話した。

 それを聞いた2人は急に真面目な顔になって言った。


「お前、本当に文化祭まで待つつもりか?」

「それはねーだろ」

「…………え?」


 予想もしていなかった返答に息が詰まった。

 そんな僕を見て伊織が更に言葉を続ける。


「ただでさえ姫乃に先越されてんだろ。そこで更に待たせるとか……」

「ダメ……かな」

「「ダメに決まってんだろうが!」」


 2人同時に叫ばれて少し萎縮してしまう。2人の声は外まで響いていそうだなぁ、と思いながら大人しく大悟たちの言い分を聞く。


「何つーか、俺らが言えるようなことじゃねーけど」

「……うん」

「男ならビシッといけよ。ぶっちゃけ今のお前女々しいだけだぞ」

「うっ…………」


 自分からアドバイスを求めたとはいえ、ここまで直球に言われるとさすがに傷つく。そのまま項垂れてしまった僕を見て、伊織が励ますように言ってくれた。


「まぁさっきも言ったけどさ、俺らも応援してるんだし、両想いだってわかってるんだろ?」

「……うん」

「なら自信持てよ、お前に足りないのはそれだと思うぞ」

「自信かぁ……」


 確かに言われた通りだな。そんなことを考えていると、何かを考えていた様子の大悟が唐突に聞いてきた。


「で、だ」

「ん?」

「環は姫乃のどこが好きなんだ?」

「…………は?」


△▲△▲△▲△▲△▲


「今それ聞く?」

「いや、恋バナっていったらこれじゃね?」

「俺も気になるなー」


 そうニヤニヤ笑いながら言ってくる大悟と伊織。僕が「歌おうよ」と言ってはぐらかそうとしてもしつこく聞いてくる。これは正直に言わないと終わらない、そう察した僕は恥ずかしさを堪えて口を開いた。


「何て言うか……最初はただの憧れだったんだよ」

「憧れ?」

「うん、 明るさ(自分に無いもの)を持ってるっていうか……そういうのってない?」

「あー……確かにはわかる」

「でしょ?それから姫乃と関わってたらさ、今まで知らなかった一面とかも見えてきて……ギャップ萌え、じゃないけど何かそんな感じで」

「…………」

「気がついたら好きになってた」


 それを聞いた2人は黙って僕の顔を見てきた。その場の空気にいたたまれなくなって、僕は「どうしたの?」と2人に聞いた。そこで我に返った2人は気まずそうにこう言ってきた。


「いや、何つーか」

「その……すまん」


 突然に謝られたので、僕としてはわけがわからない。どうして謝ってきたのか、そう問い詰めると大悟が土下座でもするのかという勢いで「マジですまん!」と言って言葉を続けた。


「非常に申し訳ないんだが、俺らはてっきり『顔に惹かれた〜』とか『スタイルが〜』とかそんな理由だと思ってて……」


 そんなことを言われて、僕は1ヶ月ほど前に皆で海に行った時のことを思い出してしまった。確かに姫乃のスタイルは普通(世間の普通は知らない、あくまで知り合いの中でだ)ではなく群を抜いていた。僕も慣れるまでは姫乃を直視できなかったから。

 更に悪いことに、初めて姫乃と出会った時の不慮の事故──彼女の胸に触れてしまった時の感触も鮮明に思い出してしまった。

 これではまずい、そう思って首を左右に振って即座に否定をする。


「んなわけないでしょ!そんな理由で好きになるほど落ちぶれてないよ」

「だ、だよな。マジですまん」

「環、ごめん」


 ここまで素直に謝られると怒る気も失せてしまう。僕は大きな溜め息をついてからマイクを2人に差し出して言った。


「ほら、時間も勿体ないし早く歌おうよ」

「あー……そうするか」


 そして僕たちは声が枯れるまで何時間も歌った。歌って歌って歌いまくった。その結果店を出る頃には真っ暗になっていたわけだけど、僕は最後まで胸に刺さっていたトゲが取れたような、そんな気がしてスッキリしていた。陽真さんの時もそうだけど、誰かに相談して良かった、心からそう思えた。

 そして僕は決意した。


 ──明日、僕は姫乃に告白する。

ブックマーク登録数、20突破しました

読んで下さる皆様、本当にありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ