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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
1章 出会いの1学期
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第1章27話 夏休み(海)④

お久しぶりです。

やっと更新できました。

 何とかナンパ男の撃退に成功したわけだけど、その後が酷かった。

 伊織の疑うような視線が痛いし、姫乃は何故か目を合わせてくれなかった。


「あのー……姫乃さん?」


と声をかけると、「何?」と反応はしてくれるから意思疎通には困らない。

 だけど僕の顔は見ないからどこかモヤっとくるものがある。

 そんな状況に困惑している僕を見て、亜美、大悟、瑞希の3人は気色の悪い笑みを浮かべている。


 結局今日はそのまま終わってしまった。

 夕日をバックに写真を撮ってもらって、じゃあ解散、というところで、伊織に呼び出された。

 何の用かは大体想像がつく。


「環……正直に言えよ」

「うん」

「お前、姫乃のことどう思ってんの?」

「普通に良い奴だなって──」

「そんな玉虫色の答えは求めてねぇ……好きなのか?」


 そう言われて数日前の大悟との会話を思い出した。


──『ずっと一緒にいたい』とか『笑ってて欲しい』とか、そういう気持ちが『好き』ってことだと思ってる。


 僕だって姫乃は嫌いではない。でも好きかと問われるとそうでもないような…………

 黙ってしまった僕を見て、肯定の意味だと解釈したのか伊織が詰め寄ってきた。


「環?それはイェスってことでいいのか?」


 グイグイ来る伊織を宥めつつ、自分の正直な気持ちを口にする。


「どう……なんだろう」

「は?」

「好きかって聞かれたら多分そうなんだと思う。でも……それは恋愛の『好き』とは違う気が……」


 それを聞いた伊織は、どこか呆れたような顔になって笑って言った。

 全く敵意の感じられない、すごい爽やかな笑い方だった。


「ホントお前ってつくづく面倒臭い性格だよな……」

「まぁ、それは自覚してる」

「好きなら好きって言えばいいんだよ」

「わ、わかった……」

「んで、お前はもう気づいてると思うけど」

「ん?」


 漸く解放される、そう思ったけど伊織が言葉を続けたので足を止めてしまった。


「俺、姫乃が好きなんだ」

「だろうね」

「色々アドバイスくれよ、いや、ください」


 さっきまで『好き』ってことについてうだうだ悩んでた奴に言うことではないだろう、そう言って断ろうとしたけれど、伊織はなおも食い下がってきた。


「お前なら姫乃のこと色々聞けるだろ」

「待って、自分で努力しようよ」

「そんな度胸があったらとっくに告白してる」

「ドヤ顔で言われても……」


 結局僕が「わかった」と言うまで伊織は引き下がってくれなかった。

 わかった、と言っても直接そう言ったわけではない。あくまで「善処します」と言っただけ。

 「善処します」、この上なく便利な言葉だ。

 根本的な解決になっていない気がするけど、伊織はそれでいいんだろうか。


△▲△▲△▲△▲△▲


 やっと伊織から解放されて皆の所へ戻ると、既に皆着替えを済ませていた。僕と伊織も急いで着替えて海水浴場をあとにした。


「んー、楽しかった!」

「来年も来るか」

「そうしようよ!」


 もう来年の予定を決めている亜美たちの後ろを僕と姫乃は歩いていた。もちろん姫乃は僕と目を合わせてはくれない。

 だから急に話しかけられて反応が遅れてしまった。


「今日はありがとう」

「…………え?」

「ありがとう。その……守ってくれて」

「あ、あぁ……気にしなくてもいいよ」


 突然のことに戸惑い、どこかぎこちない会話になってしまった。

 というか、こんな状態でこのあとはやっていけるのだろうか。

 どこかで元に戻らないとなぁ、そんなことを考えながら帰路についた。


 疲れていたせいだろうか、その日は夢を見ることもなくぐっすりと眠ることができた。

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