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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
1章 出会いの1学期
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第1章18話 環と姫乃の夏祭り①

テスト勉強の息抜きに更新です。

 時が経つのは早いもので、補習と課題に追われている間にあっという間に夏祭りの日になった。

 夏祭り当日になったからと言って特に変化があるわけではない。午前中はいつも通り補習を受け、暑さに辟易しながら帰宅する。その繰り返しになる──はずだった。


 いつもなら指定された通学路を無視して寄り道をしたりするのに、何故か今日だけは胸騒ぎがしてそんな気分になれなかった。


 こういう時の悪い予感は必ず当たってしまう。


 家まであと半分という所まで来た時、少し前を姫乃が歩いているのを見つけた。しかし様子が変だ。フラフラと、いつ倒れてもおかしくないような歩き方をしている。

 危ない、そう思った時には既に駆け出していた。

 丁度姫乃のいる所に辿り着いた時、姫乃が倒れてきた。危なげなく受け止めるけど、内心は「間に合って良かった」という思いでいっぱいだった。


「姫乃、大丈夫?僕のことわかる?」


 触れている姫乃の体は熱かった。おそらく、いや、確実に熱中症だろう。


「あれ、環……くん?」

「うん、そうだよ」


 歩けそうにない姫乃を有無を言わせず背負い上げる。突然の行動に姫乃は少し驚いたようだったけど、ややあって、安心したように身を委ねてきた。


「ごめん、ありがとう」

「謝らなくてもいいよ」


 姫乃を安心させるように、優しい言葉をかけて歩き出す。途中の自動販売機でスポーツドリンクを買うのも忘れない。

 マンションに着き、やっと修理されたエレベーターを使い3階へ。

 姫乃の部屋まで送ってもよかったんだけど、女子の部屋を見る勇気は僕にはなかった。


△▲△▲△▲△▲△▲


 家に入り、リビングのソファに姫乃を寝かせる。すると姫乃は申し訳なさそうにこう言った。


「いやー、ごめんね」

「何で無茶したんだよ」


 スポーツドリンクを渡しながらそう言うと、姫乃はバツが悪そうに言った。


「ほら、今日夏祭りじゃん?だから環くんに変な心配かけないようにって思ってたんだけど……思ってた以上に弱ってたみたいで」

「だったらそう言ってくれればよかったのに」

「言ったら環くん『今日はやめとこう』って絶対言うじゃん!」

「当たり前だよ、祭りなんかより姫乃の体の方が大事なんだから」


 勢いでそこまで言ってしまってから、自分が何を言っているのか理解して顔が熱くなる。これだとまるで僕が姫乃のことを……。

 姫乃も似たようなことを考えたようで、顔が赤くなっていた。まぁ、熱中症のせいでもともと顔は赤かったから気のせいかもしれないけれど。


「あ、ありがとう……」

「とにかく無事でよかったよ。残念だけど今日はゆっくり休みなよ。またすぐ海に行くんだし」

「うん……でも──」

「ん?」

「やっぱり環くんと夏祭り行きたかったなぁ……」


 心の底から残念そうに呟く姫乃の姿を見てしまっては、「何もしない」という選択肢を選ぶわけにはいかない。

 今の僕にできることをやろう、そんな思いを込めて姫乃に言う。


「姫乃」

「ん?」

「ちょっと休んで落ち着いたら下に行って」

「いいけど……何で?」

「ちょっとね」


 笑ってそう言うと、姫乃は照れたように下を向いてしまった。そのまま何も言わなかったけれど、僕はそれを無言の肯定と受け止めて準備を始めた。

今年は熱中症になりませんでした。

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