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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
1章 出会いの1学期
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第1章15話 環と姫乃と膝枕

今週はもう更新しません。

見上げるとそこには姫乃の顔。

その手前には大きな2つの膨らみが……。

意識が覚醒していくと共に現状を理解して顔が熱くなる。

非常にいたたまれなくなって目を逸らすと、頭上から声がかかった。


「環くん、おはよう」


今までの彼女からは想像できない慈愛に満ちた優しい声に、僕の心臓は早鐘を打っている。


どうやら今の僕は、姫乃の太腿に頭を乗せている──いわゆる膝枕をしてもらっているようだ。

慌てて体を起こした時に、「あっ……」という少し残念そうな声が聞こえたのは気のせいだろう。


「えっと……ごめん」

「全然気にしてないよ。こっちこそ疲れさせちゃってごめんね」

「いや、別に……」


ふと周りを見ると、既に亜美たちの姿はなかった。

今の時刻は午後9時を回っているので、当然といえば当然だろう。


「亜美たちなら30分くらい前に帰ったよ」


心を読んだかのように姫乃がそう言ってきた。

僕は一体どれだけの時間寝ていたんだ?

そう思った時、また心を読んだみたいに姫乃が言った。


「環くんが寝てから30分くらいは皆で話してたんだけどね」

「あ、そう……」


ということは僕のあの状況はあの2人に目撃されているということになる。

何か嫌な予感がしてスマホを取り出して、絶句した。

そこには亜美と大悟からのメッセージ。

大悟のものはまだいい、『飯美味かった。ありがとう、あとお疲れ』という労いのメッセージだったから。

問題は亜美から送られてきている写真、それは僕が姫乃に膝枕されてぐっすりと寝ている写真だった。

そこに添えられたメッセージに顔が赤くなるのがわかった。


『タマッキーお疲れ!姫ちゃんの膝枕どうだった?気持ちよさそうに寝てたから起こすのが申し訳なくてさ。でもまぁ姫ちゃんも満更でもなさそうだったからお互いによかったね!』


動揺している心を落ち着かせるために数回深呼吸をする。

少しマシになったので、姫乃に尋ねた。


「何で起こさなかったの?」

「うーん、すごい気持ちよさそうに寝てたからかな」

「そ、そう」

「あとは寝顔がかっこよかった……」

「へ?」


姫乃も自分が何を言ったのか理解したようで、顔を真っ赤にして机の上に置いてあったティッシュの箱を投げながら


「なし、今のなし!」


と焦りながら言ってきた。

ティッシュの箱を避けてしまうと、キッチンに置いてある食器に当たってしまうので受け止めて、「はいはい」と適当に流しておく。


△▲△▲△▲△▲△▲


「それにしても」


2分ほどたって漸く落ち着いたのか、姫乃がぽつりと呟いた。


「ん?」

「環くんほんと気持ちよさそうに寝てたなぁ」

「そのことはもう忘れてください」

「無理だよ。ていうかそんなに気持ちよかった?」


何の邪念も込められていない純粋な目でそう聞かれてしまうと、ついつい答えてしまう。


「ま、まぁ気持ちよかったっていうか……落ち着くというか」

「へ〜、何で?」

「何でって、その、柔らかかったし……」

「ふ〜ん。なるほど〜」

「も、もういいでしょ?」

「裁判長、被告の言葉は以上です」

『ふむふむ、まことにけしからんですなぁ』

「は?」


聞こえるはずのない声が聞こえて頭の中が真っ白になる。

姫乃を見ると、微笑みながらスマホの画面を見せてきた。

通話中と表示されている画面、その相手は──杉浦亜美。

つまり、今までの僕の回答は亜美に筒抜けになっていたということだ。

未だ状況に追いつくことができずに硬直していると、亜美の言葉が続いた。


『やっぱタマッキーはムッツリさんでしたねぇ』

「ですねぇ」

「いやいや、ちょっと待ってよ」

『お、何か言い分でも?』

「いや、別に……」


何も言うことができずに困惑していると、目の前と電話口から笑い声が聞こえてきた。

ますます意味がわからない。


『そんな困らないでよ。冗談だって』

「お礼言いたいから環くんが起きたら電話してって言われてただけだよ」


と言われ、漸く自分がからかわれていたことを理解する。

まったく……心臓に悪い冗談はやめて欲しい、そんな思いを込めて姫乃を睨むけど、姫乃は気にした様子もなくスマホを渡してきた。


「亜美から、お礼言いたいんだって」


しぶしぶスマホを受け取り耳に当てる。

まだ笑い続けている亜美の声が聞こえてきた。


「亜美?」

『いやー、ごめんごめん。タマッキーがいい反応するからさぁ』

「もう忘れてよ……」

『努力しまーす。あ、今日はご馳走様!美味しかったよ』

「ありがとう」

『反応薄っ!もっと喜ぼうよ』

「これが普通なんだからしょうがないでしょ」

『あはは……まぁお礼言いたかっただけだから。姫ちゃんに手ぇ出しちゃダメだよ〜』

「誰がそんなこ──」

『おやすみ!』


僕が言い終わる前に電話を切られた。

納得しないままスマホを姫乃に返す。


「じゃあ私もそろそろ帰るね〜」

「あ、うん」

「ご馳走様でした。おやすみ、環くん」

「お、おやすみ」


とりあえず姫乃を玄関まで見送る。

姫乃はドアを開けたところで振り返って僕に言った。


「ちゃんと鏡見なよ〜」

「……?うん」

「じゃ!」


閉まるドアを見ながら、言われたことの意味を考える。

考えても答えが出なかったので、言われた通り脱衣所の鏡を見て思わず叫んでしまった。

やられた、僕の額には某2次元の格闘家よろしく、マジックででかでかと『ムッツリ』と書かれていた。

苛立ちが湧き上がってきたけれど、それをぶつける相手もいない。

まぁ皆が来ている前で油断した僕も悪いし、と自分を落ち着けるためにため息をついてそんなことを考える。

そしてすぐに顔を洗った。


ちゃんと水性ペンで書かれていたあたり、変なところで亜美たちの優しさを感じた。

環くんはムッツリです。

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