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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
第5章 お泊まり会とデート
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第5章30話 おやすみ②

お待たせ致しました〜

テスト期間は何故か更新が捗る(それでいいのか受験生)!

まぁ実力テストだからいいんです(暴論)

良ければ応援してくださいw


では本編へどうぞっ!


 拗ねたように服を引っ張る姫乃に謝って、僕はおずおずとベッドへと上がった。やはりというか、昨日の夜と同じようにどこかふわふわしている。自分のベッドであるのは間違いないけれど、別世界のように感じてしまう。


「えっと……お邪魔します」

「ふふ、自分のベッドでしょ」

「ごもっともです」


 ツッコミを入れた姫乃に苦笑で返しつつ、とりあえずは背を向けて横になる。それでも微かに触れた背中から姫乃の体温が伝わってきて、落ち着かない。

 昨日はある種のノリで一緒に寝てしまったようなものだ。しかし今日の僕は至って冷静だ(自分で言うのもあれだけど)。それ故にどうしても羞恥心が勝ってしまう。もちろん嬉しさや喜びもあるにはあるが、羞恥心に比べれば微々たるもの。

 そもそも一緒に寝るなんて経験を済ませた男女がするものではないのかと、そんな考えが頭をよぎり、かぁっと顔が熱くなってしまった。…………何を考えているんだ。

 と、後ろから小さく声がかけられた。


「ね、環くん」

「は……はい」

「こっち向いて」

「……っ」


 昨夜と全く同じセリフ。だというのに、その言葉はやけに冷静な頭に容赦なく突き刺さり、僕の心をこれ以上ないほどにかき乱した。

 狭いベッドで寝返りを打つと、ぎっとスプリングが軋んだ。その音が小さな部屋で反響し、僕の耳に届く。無意識のうちに、僕は息を止めていた。


「……姫はそっち向いたままなんだね」

「恥ずかしいんだもん」


 いや、恥ずかしいのは僕も一緒なんだけど。そんな言葉を飲み込んで、そっと姫乃の背中に指を這わせる。


「ひゃっ!?」

「……っと、暴れると危ないよ」

「急にくすぐられるんだもん」

「照れてる姫が可愛かったから、つい」

「むぅ……昨日はあんなに動揺してたのにぃ」

「慣れって怖いよね」

「それ私のセリフ」


 わかりやすく拗ねた姫乃はそれっきり口を閉ざしてしまった。からかいすぎてしまった自覚もあるので、謝罪の気持ち(とほんのちょっとの欲)を込めて姫乃のお腹に手を回す。抱きしめる度に思うけれど、改めてその細さを実感した。


「環くん?」

「ちょっと反省。あと、僕がこうしたかったから」

「そっか。ん、ちょっと離れて」

「ごめん、嫌だった?」


 姫乃の気に障ることをしてしまったのかと焦って謝罪すると、姫乃は大きく首を振って否定した。


「違う違う! やっぱり私もそっち向きたいから」

「そういう事か。良かった……」

「やっぱりチキンだね」

「……うるさい」


 逆にからかわれてしまった腹いせに、離れ際に姫乃の背中をつーっとなぞる。また同じことをされるなんて夢にも思っていなかったのか、一度目以上に大きく体が跳ねた。


「っ、もう!」

「ごめんごめん。ほら、もうやらないからこっち向いてよ」

「背中に危険を感じたのでそっちを向きます」

「って言うのは建前で……?」

「本当はもっと密着した──って何言わせるの!?」


 そう小さく叫んでこちらに向き直った姫乃を、ぎゅっと強く抱き締めた。

 一瞬体を強ばらせた姫乃だったけれど、暫く経つとゆっくりと弛緩していった。もっとぎゅっとして欲しいと言ってきたのは姫乃なんだから、もう少し慣れて欲しいところだ。


「お望み通り、ぎゅっとしてますが?」

「うぅ……癪だけどほっとする」

「なら良かった」


 ほっとする。嬉しいことにそう言ってくれた姫乃は、僕がそっと頭を撫でると「えへへ……」と小さく微笑んだ。

 不思議なことに、いつの間にか緊張は霧散していた。


△▲△▲△▲△▲△▲


 何度も言うようでくどいかもしれないけれど、彼女を正面から抱きしめた時に思春期男子がまず思うのは、当たっているということ(何がとは言わない)。

 さらにまずいことに、姫乃は寝る時は下着をつけない主義なようで、果実の柔らかさが直に伝わってくることになる。

 だというのに、先程までの動揺はどこへ行ったのか、僕の心はとにかく凪いでいた。……明鏡止水とでも言うのだろうか。

 とまぁそれはともかく何が言いたいかというと、睡魔に襲われた姫乃は無防備になってしまうということ。

 それほどまでに信頼してもらえていると考えれば彼氏冥利に尽きるんだけど、男としては少しだけ別の感情も生まれてくる。  今だって、額を僕の胸に押し付ける彼女を見ていると、どうしてもイタズラをしたくなってしまう。


「……姫?」


 そっと声をかけるが、何の反応も返ってこなかった。もしやと思って耳を澄ますと、姫乃の小さく穏やかな、規則正しい寝息が耳に届いてきた。

 簡潔に言うと、姫乃は眠りに落ちていた。


「……やっぱり疲れてたか」


 今日だけでも色々あったんだから当然のことだ。彼氏としてはもう少し何か進展をもたらすべきだったんだろうけど……それは僕たちのペースで進めていけばいい話。僕としては、今日のデートは楽しかった。きっと姫乃も同じ気持ちでいてくれただろう。

 そんなことを考えていると、唐突に眠気が襲ってきた。小さくあくびをしてから、自分もだいぶ疲れていたことを自覚した。


「ま、早く寝るのも悪くないよな」


 そう独りごちて、深く息を吐く。

 そして姫乃の頭にそっと口付けをしてから瞼を閉じた。


「おやすみ、姫」


△▲△▲△▲△▲△▲


 頭にキスされた感触で、うとうとと微睡んでいた頭がすっと覚醒した。頬とかおでことか、もちろん唇も含めてキスをされることは何度かあったけれど、頭に口付けされたのはこれが初めてだったから、驚いてしまった。

 何事かと思って次の環くんの行動を待ったけれど、続いて降ってきたのは「おやすみ」という言葉だけ。

 もしかして、いや、もしかしなくても何もされないの?

 でも環くんのことだからきっと──なんて1人で悶々とすること(おそらく)数分、何てことはない。だって本当に何もなかったんだから。それどころかおでこを押し付けている環くんの胸からは規則正しい呼吸が伝わってくる始末。どうやら環くんは寝つきがいいようです。


「何か期待してた私が馬鹿みたいだなぁ……」


 そう呟いた数秒後、急激に顔が熱くなった。『期待してた』なんて私がただのえっちな子みたいじゃんっ。……って昨日の夜も似たようなこと考えてたような……?

 いや、それよりも──


「──聞かれてないよね?」


 そう、もし今の独り言が環くんに聞かれていたのだとしたら、間違いなく恥ずか死してしまう。確実にしんでしまう。

 不安に駆られながらそっと耳を澄ましたけれど、聞こえてきたのは環くんの寝息だけ。


「良かったぁ……」


 そう安堵したのと同時、ふわ……と小さなあくび。

 漸く睡魔が襲ってきたようで、上手く思考ができなくなってしまった。とにかく眠い。こういう時はあれこれ考えずに寝るのが一番!

 だから、さっきの環くんと同じ言葉を同じように返す。


「おやすみ、環くん」


 そう言ってちょっと伸びをして、無防備な彼の唇にそっと唇を重ねた。

 早く明日にならないかなぁ……。


以上で第5章終了!

次話から第6章(という名のまとめ)に入っていきます。第6章はお泊まり会の後の話を数話やったらショートストーリーを何本か書いて完結!……に持っていければいいなぁ、と。

つまりもうすぐで終わってしまうんです!

共通テストまでに終わらせられるといいんですが……無理そうです。

とにかく最後までお付き合い下さい!

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