第1章14話 環と夢とクラスメイト④
そろそろイチャイチャを増やすべきか…………
「はい、出来たよ」
そう言って机に並べたのは、今日買った材料で作ったグラタン。
それだけではなく、サラダと1口サイズのフライドチキンも並べた。
「「お、美味しそう……」」
姫乃と違い僕の料理を見たことない2人はそんな声を漏らしていた。
もちろん姫乃の目も料理に釘付けだったけど。
「「「「いただきます」」」」
4人で手を合わせ、食べ始める。
亜美と大悟はグラタンを口に入れた瞬間動きが止まった──と思ったらすごい勢いで次から次へと口に運んでいった。
「そんなに急いで食べなくてもなくならないよー」
と姫乃は言うけど、君だってこの前これくらいの勢いで食べてたよね?
それを口にすることはできなかったけど、顔に出てしまっていたようで
「環くん変なこと考えてない?」
と怪しまれてしまった。
適当に誤魔化して僕もグラタンを口にする。
隠し味に少しだけ味噌を使ったことでコクが増している、美味しい。
「にしても環が料理こんなにできるとはなぁ」
「うん、びっくりだよ」
「ありがとう」
褒められて照れくさくなり、照れ隠しにひたすら食べ続けた。
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夜ご飯を食べ終えて、片付けも完了させて休憩──といってもお菓子パーティーに入っているので『休憩』とは言い難いけど──をする。
机の上にいつの間にか色々なお菓子の袋が出ていた。
「結構作ったはずだけど、皆まだ入るの?」
「何言ってんの、甘い物は別腹だよ!」
「太るぞ……痛え!」
大悟の悲鳴は、亜美に殴られたことによるものだ。
雉も鳴かずば何とやら……とにかく僕は何も言っていないし関わっていない。
亜美がこっちを見て「何?」とニッコリ笑って言ってきたのが怖かった。
並んで座る亜美と大悟に向かい合うように姫乃の隣に座る。
せっかくだから、ということで僕もチョコレートに手を伸ばす。
控えめな甘さが体に染み渡った。
「ん、そうだ。コーヒー淹れようか?」
「いいの?」
「うん」
そう言って立ち上がろうとした時、姫乃が慌てたように言った。
「わ、私がやるよ!」
勢いよく立ち上がってキッチンに向かったはいいけど、道具の置き場所知らないよな。
そう思って姫乃に道具がある場所を伝える。
それにしても、姫乃の様子がおかしい。
亜美たちも気味悪いくらいニヤニヤしてるし……
「2人とも姫乃に何か言った?」
「「いや、別に〜」」
これは確実に余計なことを吹き込んでいるな。
まぁ僕が気にすることではないか。
そうして暫く待っていると、姫乃がお盆に4つのカップを乗せて戻って来た。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
素直にお礼を言うと、姫乃はわかりやすいくらいに頬を染めてそっぽを向いた。
驚き半分呆れ半分という気持ちで姫乃にだけ聞こえる声で言う。
「何言われたか知らないけど気にしないでよ」
すると姫乃はぴくりと肩を震わせ、ゆっくりこっちを向いて言った。
頬は真っ赤、そして何故か目は潤んでいた。
「耳元で囁くな!」
遅れてやってきた鈍い痛みに呻く。
お盆で頭を叩かれたようだ。
亜美たちは僕を見て大爆笑している、許すまじ。
というか悪いの僕か?
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1日で色々なことがあったからだろうか、ソファで休んでいると眠気が襲ってきた。
このソファ、なかなかの高級品でとてもフカフカ、座るだけで眠くなってしまう。
ウトウトとしていると体が傾き……何かにぶつかったと感じて、意識を手放した。
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『環くん、環くん!』
『泣かないでよ**ちゃん。また会いに行くから』
僕を見て泣く彼女を見ながら、彼女の手を握ってそう声をかける僕。
彼女はそれを聞いてやっと泣き止み、言った。
『約束、だよ……?』
『うん、約束』
『じゃあ、ゆーびきーりげーんまーん──』
自分の小指と握ったままの僕の手の小指を絡め、可愛い約束の証を交わす**。
『──ゆーびきった!』
そして目に飛び込んできたのは、**の満開の笑顔。
子供ながらに少し照れ臭くなり、急いで車に乗る。
窓の外を見ると、**が大きく手を振っているのが見えた。
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また夢を見てしまった。
泣いていないといいけれど、そんなことを思いながら目を開けると、姫乃の顔が真上に見えた。
……………………は?
あれ、クラスメイト編ここまで長くなる予定だったっけ?