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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
第5章 お泊まり会とデート
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第5章20話 温かく、柔らかく(物理)

予告通り、お家デートの回 そのいち

「そのいち」っていうことは「そのに」もあるってことだよね。うん、書きますよ。

とりあえずはまぁイチャイチャをご覧下さいな。

 駅からの帰りは誰に会うこともなく、手を繋いでゆっくりと落ち着いて家に帰ることができた。

 家の鍵を開けて扉を開けると、姫乃は真っ先に「ただいまー」と言って入っていった。一応家主は僕なんだけど……と、そんなことを考えながらも頭の片隅ではいつかこれが当たり前になるんだろうかと期待を抱いてしまう。というか昨日も似たようなこと考えたよな?


「環くん、家入らないの?」

「ん、ごめん……って姫、靴揃えて」

「はーい」


 姫乃に声をかけられて、まだ家に入っていなかったことを思い出した。姫乃に比べれば小さい声で「ただいま」と呟けば、すぐに「お帰りー」と声がかかり、それだけで安心してしまう。


「手洗いうがい、忘れないでよ?」

「わかってますー。ふふ」

「……何で笑ったの?」

「環くん、何かお母さんみたいだなーって」


 どこか憧れるようにそう言った姫乃。姫乃の過去を知っている身としては、どう声をかけるのが正解なのかわからずに固まってしまう。


「あ……ごめん」

「どうして環くんが謝るの?」

「え、いや……その──」


 僕が全て言い終える前に姫乃も自分が何を言ったのかを思い出したようで、「あぁ、そっか」と納得したように頷いた。それでも姫乃の表情は晴れやかなもので、あっさりとこう言い放った。


「全然そんなつもりで言ったわけじゃないからそんな顔しないでよ」

「……え?」

「環くん、泣きそうな顔してるよ」


 そう言われて自分の口角が下がっていることに気がついた。無理矢理口角を上げて笑顔を作ってみたけれど、力ない笑顔だということは誰よりも自分がよく理解している。

 そんな僕を見兼ねてか、姫乃が小走りで駆け寄ってきた。そしてつま先立ちになりながら僕の頭をぽんぽん、と優しく叩いて言った。


「ごめんね、心配にさせちゃった。私は大丈夫だよ。環くんがいてくれるから大丈夫なの。だから環くんが辛そうな顔してると、私も不安になっちゃうよ」

「……ごめん」

「謝らなくてもいいんだって」

「うん。ごめ…………あ」

「だからー」


 呆れたような声でそう言いながらも、その言葉からは僕を責めるような感情は一切感じられなかった。それどころか僕をからかうような調子を含んでいるようにも思えた。


「ほら、笑って?」


 そう言って僕の口角をくいっと上げる姫乃。くすぐったくて、つい「んむ……」という声が漏れてしまった。それを聞いた姫乃が楽しそうに笑うから、僕も自然と笑みを浮かべることができた。


「早くお家デートしよ!」

「ん。そのま()に指はな()て」

「あ、ごめんごめん」


△▲△▲△▲△▲△▲


 洗面所で手洗いうがいをして、姫乃と一緒に僕の部屋にやってきた。リビングでもいいんじゃないかと思ったけれど、姫乃が「環くんの部屋がいい!」と主張したことで、僕の部屋がお家デートの会場になる運びとなった。

 と言ってもやることなんて普段と変わらない──と思っていたんだけどなぁ……


「あの……姫?」

「んー?」

「何で僕は後ろから抱きつかれているんでしょうか」

「ぎゅーってしたいから?」


 何故に疑問形!? いや、それよりも()()はまずい!


「姫、当たってる。当たってるから!」


 そう。女子に後ろから抱きつかれた場合、背中に何が当たるのかは火を見るより明らかだ。姫乃だってそれをわかっているはずなのに、一体どうして……!?


「むー……何でそこはわかってるのに『当ててる』って発想にならないかなぁ」

「当ててる!?」

「そうだよー。あ、もしかして正面からが良かった? それなら正直に──」

「ちょ、ストップ!」


 色々ツッコミどころがありすぎて頭が追いつかない。一旦整理する時間が欲しい。ということで姫乃には一旦横に座ってもらう。


「姫、どうして当ててたの?」

「んー……何でだろ」

「理由もなしにやったの!?」

「えっとね、手を繋いで、キスもしたけど……まだぎゅってした回数が少ないかなぁって」

「……うぐっ」

「な、何で環くんがダメージ受けてるの!?」


 姫乃さん姫乃さん、それは暗に僕がヘタレということでいいんですよね? いや、姫乃にそう思わせてしまったのは非常に申し訳ないんだけど、僕だって心の準備をする時間というものが欲しい。落ち着け、深呼吸だ。吸って……吐いて…………よし、大丈夫だ。


「それで、正面からって言うのは?」

「えへへ……あれは本当は私の望みというか、あの流れならからかいついでにできるかなぁって」

「…………はぁ」

「……やっぱり怒った?」


 姫乃の不安そうな問いには答えず、姫乃の正面に向き合えるように正座で座り直す。何故か姫乃も緊張した面持ちで同じ体勢になった。まぁ、その方が都合がいいか。


「あの、環く──きゃっ」


 高鳴る心臓の鼓動を感じながらゆっくりと近づいて、姫乃の望み通り、そっと正面から抱きしめた。姫乃が驚いたような声を上げたけれど、自分の鼓動が邪魔をしてそれすら耳に届いてこない。

 姫乃の体は、やはり頼りなく思えるほどに細く、折れないかと心配になる程だった。それでもその体は柔らかく、特に胸に当たる2つの大きな山からは普段より速いであろう姫乃の鼓動が伝わってきた。


「た、環くん?」

「…………これでもまだ足りない?」

「や、もう十分──んぅ!?」


 姫乃が何かを言い終わる前に、その艶やかな唇を自分の唇で塞ぐ。わかりやすく体を強ばらせる姫乃の頭を、その緊張を解すように優しく撫でる。すぐに “へにゃ” と弛緩し、体重を僕に預けてきた。

 唇を離すと、荒い息の姫乃がとろけた瞳で見つめてきた。思わずドキッとしてしまったけれど、その動揺を表に出さないようにゆっくりと呼吸した。その間に、姫乃は目を伏せてしまった。


「自分からは平気なのに、僕から抱きしめると逃げ腰になるんだ?」

「うう…………」

「嫌だった?」

「環くん……ズルい」

「何が?」

「絶対わかって言ってるもんっ!」


 うーん……これはもう誤魔化しきれないか。


「ごめんごめん。嫌だったら突き飛ばしてるよね」

「……暴力に訴えるつもりはないんだけど。とにかく、私は深く傷つきましたー」

「どうしたら許してくれるのかな?」

「何かニヤニヤしてる気がする…………」

「気のせい気のせい」


 そう言って優しく頭を撫でると、姫乃は「やっぱり何か誤魔化してるよね」と呆れたように呟いてから、仕切り直すようにこう言った。


「罰として、もっかいぎゅっとすること!」

「……罰というかむしろご褒美な気もするんだけど」

「──っ! すぐにそういうこと言う!」


 頬を膨らませた姫乃は、一瞬何かを考えるように俯いた後、突然僕に抱きついてきた。あまりに急な事だったから、今度はこっちが驚く番だった。


「ひ、姫!?」

「今度は、私の番だもん!」


 姫乃は抱きついた姿勢のまま僕の方に体重をかけてきた。何の準備もできていない状態でこっち側に体重を預けられたらどうなるかなんて決まっている──僕はベッドに押し倒された。

 ……普通逆じゃないか?


△▲△▲△▲△▲△▲


 押し倒されたはいいけれど、何かされる気配もない。視線を天井から姫乃に移すと、真っ赤な顔で口をパクパクさせていた。前も思ったけど、やっぱり金魚みたいだな。

 というかこれってもしかして……


「この後どうすればいいのかわかってない……とか?」

「う、うぅ…………」


 どうやら正解だったようだ。

 と、ヤケになった姫乃が叫んだ。


「しょうがないじゃん! 環くんが初めてなんだから! こんな状態になるのも初めてなんだからどうすればいいか分からないのもしょうがないじゃん!」

「あ……はい」


 姫乃さん、頼むからそんな大声で「初めて」なんて何度も叫ばないでください。非常にいたたまれなくなってくるので……。

 何となく気まずさを感じながら姫乃の顔を見ると、さっきまでとは打って変わって覚悟を決めたような表情だった。


「もうこうなったら」


 ……って、あれ? 姫乃さん? 何で服を脱ぎ始めてるんですか……って待て待て待て! この状況は本当にやばい。とにかく何が何でも姫乃を止めないと……!


「姫、落ち着いて! 冷静になって!」

「……へ? あ、や、違うの…………」


 すぐに冷静さを取り戻してくれたことは良かった。

 だけど…………あ、まずい。そう思った時にはもう遅かった。


「馬鹿ーーーー!!!!」


 これって、僕が悪いのか?

 というか姫乃さん、今日は水色だったんですね。

姫乃さん、テンパると何をしだすかわかりません。そして環くん、よく耐えた。

あ、今後は更新が滞ることもしばしば起こると考えられます。受験勉強のせいです。ご了承くださいな。

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