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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
第5章 お泊まり会とデート
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第5章14話 将来の話①

お待たせしました、久しぶりの前・後編の構成ですね。もしかすると三部構成になるかもしれません。

ということで早速どうぞ!

⚠暑いのでちゃんと冷房の効いた室内で読んでくださいね!

 ユキ先輩と別れた僕たちは、とある雑貨店にやって来ていた。ここに来た理由は、文化祭まで遡る。


------------------------------------------------


『あ、柏木くん柏木くん』


 お揃いのネックレスを買った後、優乃に呼び止められた。呼ばれたのが僕だけだったのが気になったけれど、とりあえず優乃のもとへ行くことにした。


『えっと……どうしたの?』

『もし文化祭が終わった後にデートの予定があるのなら、ちょっとお願いしたいことがあるんだけどさ』

『お願い?』

『何ていうか、市場調査みたいな。もちろん君たち2人にも利益はあるよ』

『別にいいけど……』

『やった!』


 優乃曰く、駅の近くの雑貨店に行ってほしいとのことだった。

 何でも優乃の姉が経営しているらしく、本格的なアクセサリーも揃っているらしい。市場調査というのは、その店で売れているのがどのようなものなのか調べてくるということ。

 何故優乃自身が行かないのか尋ねたところ、自分が店を訪れると姉がいい顔をしないから行くに行けない、という答えが返ってきた。何となく、優乃の姉の気持ちも分からないでもない。


『それで、利益っていうのは?』

『私からお姉ちゃんに言っておくから、2人が来たらいいアクセサリーを見繕ってあげてって』

『それはありがたいかも』

『引き受けてくれるかな?』

『もちろん』


------------------------------------------------


 そんなわけで、僕たちは “UMESAKI” という雑貨店にお邪魔することにした。

 扉を開けると、入店を店員に知らせるためのベルの音が店の中に響いた。その音に反応した女性がこちらを振り向いて、優しげな笑みで僕たちを迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。えっと……柏木くんと結城さんかな?」

「はい」

「妹から話は聞いているよ。優乃の姉の梅崎(うめさき)結奈(ゆいな)です」


 事情を知らない姫乃は目を白黒させていた。小声で「後で説明する」と囁くと、納得したようで挨拶をしていた。


「初めまして、結城姫乃です」

「柏木環です。よろしくお願いします」

「こちらこそ、妹と仲良くしてくれてありがとう」


△▲△▲△▲△▲△▲


 少し雑談、というか軽い話をしてから本題に入ることにする。


「えっと、今日訪れた理由なんですけど」

「ええ、聞いているよ。2人に合うアクセサリーだね」

「はい。お恥ずかしい話、そういった物に疎いので……お願いできればと」

「もちろん大歓迎だよ。そのために雑貨店をやっているようなものだしね」

「ありがとうございます」


 結奈さんは、早速お店の一角からいくつかのアクセサリーを持ってきてくれた。青い石で作られたブレスレットと、金色の小さなイヤリングだった。


「2人を一目見た瞬間にコレだって思ったよ。どうかな? どちらもターコイズを使用しているの」

「ターコイズ……石言葉は “繁栄・成功・強運・健康” でしたっけ」

「そう! よく知ってるね」


 話には聞いていたけれど、実際にパワーストーンを見るのは初めてで、不思議な魅力を湛える青い石に引き込まれるようだった。姫乃も「綺麗……」とブレスレットに魅入っていた。

 もう片方のイヤリングにも小さく加工されたターコイズが埋め込まれていて、深い青色と金色のコントラストが美しかった。


「これ、全部結奈さんが?」

「アクセサリー類はそうだね。他の雑貨はさすがに仕入れているやつもあるけど」

「だとしても凄いです。優乃が憧れるのも分かります」


 素直な感想を告げると、結奈さんは少し困ったような笑みを浮かべた。


「……結奈さん?」


 何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか。不安になっておそるおそる尋ねると、結奈さんは「あぁ……ごめんなさい」と小さく呟いてから、迷った様子を見せながらも口を開いた。


「ちょっとだけ心配なんだ」

「……心配?」

「うん。優乃の夢が、本当に優乃自身の夢なのかなって」

「…………」

「もし私の背中を追いかけて道を狭めてるだけだったら申し訳ないなぁって」


 結奈さんのその心配もわかる気がする。文化祭での優乃の笑顔を見た僕からすると、その心配は必要ないように思えたけれど、それを僕が言っても気休めにもならないだろう。

 そんなことを考えていると、話についてこれていなかったのか、今まで沈黙を保っていた姫乃が唐突にその沈黙を破った。


「大丈夫だと思いますよ」


 結奈さんは目を丸くして姫乃の瞳を見つめた。姫乃は柔らかい笑みを浮かべてから、文化祭で買ったネックレスを外して結奈さんに見せた。結奈さんは、驚いたようにそれを手に取った。


「これは……?」

「文化祭で優乃ちゃんが作ったネックレスです」

「綺麗だな……これを優乃が?」

「はい。自分の夢を確かに持っているから、それをこんな風に形にできるんだと思います。結奈さんが心配するようなことは何もないと思いますよ?」


 姫乃のその言葉で十分だと思ったけれど、一応僕も補足しておく。


「たぶん優乃は “追いつこう” としてるんじゃなくて “追い抜こう” としてるんだと思います。その……自分の夢を持ってる優乃が羨ましいです。僕なんてまだ何も決められていないので」


 自分の思いを交えながらそう言うと、結奈さんは何度か頷きながらこう言った。


「なるほど……そうきたかぁ。柏木くん、もしかして優乃に偵察的なことを頼まれてるんじゃない?」


 う……さすがに鋭い。誤魔化しきれないと判断した僕は、全て正直に暴露した。


「その通りです」

「あはは、我が妹ながら抜け目ないな」


 そう朗らかに笑った結奈さんからは、もう不安や心配は感じられなかった。そして、少し考えた後で僕の目を見て言った。


「それじゃあ、妹の無茶ぶりに付き合ってくれたお礼をしてあげよう」

「……え?」

「迷える少年に、人生の先輩からアドバイスをあげるよ」


 そう言いきってからニカッと笑った結奈さんは、何だか無性にかっこよかった。

はい、いかがだったでしょうか。ちなみに結奈さんも環たちが通う高校のOGです。

この話が環くんにとって大きな転換点になってくれればいいなと、そんな気持ちで執筆しています──おっと、これ以上はネタバレになりそうなのでここら辺で。

また次のお話でお会いしましょう!

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