第5章10話 デート
お久しぶりです!
お待たせしました!
後書きの方で報告がありますのでそちらの方もご一読下さいますようお願い申し上げます。
では早速本編をどうぞ!
さて、天気は快晴デート日和。少し肌寒くなってきたことで、秋が深まってきたことを感じた。もう少ししたら紅葉狩りデートに行くのも悪くはないかもしれない。
姫乃に「準備をしたいから少し待ってて」とリビングに追いやられてから十数分が経過した。今自室に突入すればラノベやマンガでよくあるラッキースケベが実際に起こるんだろうけど、紳士である僕はそんなことはしない──いや、強がっただけで本当はそんなことをできる勇気がないだけだ。
なんてことを考え始めた頃、リビングに姫乃が入ってきた。
「……お待たせ」
「──っ」
入ってきた姫乃を一目見た瞬間、頭が真っ白になった。理由は単純、可愛すぎたから。
清楚さを感じさせる白いブラウスに、ゆったりと大きめの黒のデニムパンツ。そして首には文化祭で買ったネックレス──売り物の服と併せても違和感がないんだから、優乃の器用さが窺える。白と黒という対称的な組み合わせが、姫乃の魅力を最大限に引き出しているようだった。何というか、大人っぽい。
「……環くん?」
不安そうに僕の名前を呼んできた姫乃の声で漸く我に返る。
「あ……ごめん」
「んーん、大丈夫。それより……変じゃないかな」
その言葉で姫乃の不安の正体──僕が姫乃に見とれていたせいで、姫乃の服装を褒めていなかったこと──に気づいた。
慌てて言葉をかけようと色々考えてみたけれど、本当に可愛いものを見た時って結局こんな言葉しか出てこない。
「姫、すっごい可愛いよ」
姫乃の目を見つめてそう答えると、姫乃は安心したような、嬉しそうな、それでいてどこか恥ずかしそうな、そんな複雑な表情を浮かべていた。暫く口を開いたり閉じたりしていたけれど、十数秒後、漸く「……ありがと」という言葉を口にした。
「……あ」
唐突に姫乃が僕を見てそんな声を漏らした。何か変だったかと不安になって姫乃の視線をたどると、行き着いた先は僕がつけているネックレスだった。やっぱり似合わないのか?
「環くんもつけてるんだ」
「ペアアクセならこういう時こそつけるべきだと思って……。普段こういうのつけないから少し緊張してるけどね」
「大丈夫。似合ってるよ」
「ありがとう」
「優乃ちゃんに感謝しなくちゃね」
「ん、そうだね」
将来優乃がブランドを設立したらその時は本当にお得意様になろうと、密かにそう決意した。
「それじゃあ、行こうか」
「うん!」
こうして僕たちのデートが始まった。
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姫乃が言っていた『小動物カフェ』だけど、調べてみると駅の近くにハリネズミカフェという施設があることがわかった。そこでいいか姫乃に聞いてみると、キラキラと目を輝かせて「そこ行きたい!」という答えが返ってきた。
込み合う電車の中では、こんなハプニングもあった。
『電車が揺れます。ご注意下さい』
そのアナウンスが流れた数秒後、ガタン、とカーブに差し掛かった電車が大きく揺れた。突然訪れたその揺れに抗う事もできず、つり革に掴まっていた僕に、横に立っていた姫乃──身長的につり革に掴まるのは難しかったようだ──が抱きつく形になってしまった。
その結果、姫乃の体温を直に感じることになってしまい、非常にいたたまれなくなった。
「ご、ごめん」
「いや、姫乃は悪くないっていうか……僕の方こそごめん」
そんな僕たちを見て、とある2人が声をかけてきたんだけど……その正体に驚いた。
「良かったら席譲りましょうか?」
「あ、いや、大丈夫です……って龍馬!?」
「紗夜ちゃん!?」
電車の中で大声で叫んでしまったせいで、斜め前に座っていた老婦人から冷ややかな視線を頂いてしまった。慌てて小声で「すみません」と謝りながら、改めて龍馬たちに視線を戻す。2人は必死に笑い声を堪えていた。
「おい」
「ごめんごめん。でもまさかこんな所で会うなんてね」
「……まぁ、そうだね」
「気合い入った服装から察するに、デートってところかな?」
「それはそっちもだよね?」
「まあね」
ふと隣に目をやると、姫乃は姫乃で紗夜と仲良く話していた。美少女2人が仲良く会話をしている光景、なかなかに眼福だな。
そんなことを考えていると、龍馬が一言。
「眼福だね」
「おっさんか」
同じことを考えていた自分を棚に上げてそう突っ込むと、龍馬は悪びれる様子もなく「ホントのことじゃん」と笑みを浮かべていた。おとなしい奴だと思っていたけど、外で会うとこんなにも違うのか。
「で、お2人さんはどこまで行くの?」
「んーっと……駅の近くのハリネズミカフェ」
「そんな所があるんだ。にしてもハリネズミって」
「別にいいだろ。それより龍馬たちは?」
「特に予定は決めてないよ。僕は紗夜といれればそれでいいし」
惚気か! とツッコミを入れそうになったところで、隣に座っていた紗夜が龍馬の脇腹を小突いた。それも結構な威力だ。
「ちょ、痛いって」
「恥ずいから少し黙れ!」
「痛い痛い!」
「何か言うことないの?」
「ごめんなさいごめんなさい!」
自業自得というか何というか……とりあえずこの2人のヒエラルキーは把握した。きっと龍馬が尻に敷かれることになるんだろうな。そんな2人の姿を想像して、笑いが込み上げてきた。
「環くん、見てないで助けてよ!」
「僕は姫乃で手一杯だから、2人で仲良くやってね」
龍馬の助けを求める必死な声にそう返すと、今度は僕の脇腹を姫乃が小突いてきた。解せない。姫乃の方を見ると、顔を真っ赤にして僕を睨んできた。
「あの、姫乃さん?」
「公衆の面前で恥ずかしいこと言わないで」
「あ、はい。すみません……痛っ」
「わかったならよし」
「そう言ってつま先踏むのやめてください!」
先に話題にあげた老婦人から、今度は苛立ったような咳払いを頂いたのはまた別の話だ。
えー……コロナさんによる自粛期間も明け(たところが多いのかな?)、皆様いかがお過ごしでしょうか。
まずは更新が前話から半月以上開いてしまったこと、誠に申し訳ございません。学校の開始、予習復習等々でまとまった執筆時間が取れずにいました。そして今後もそうなることが予測されます。
Twitterでは既に報告をしているのですが、私、現在大学受験生なんです。そして先日ニュースでやっていたように、共通テストも延期されず、今から受験勉強をしていかなければなかなかやばいという状況に立っています。
そんなわけで、今後は2~3週間に1度くらいのペースで更新できたらなー、と思っております。
読者の皆様、色々思うところもあるとは思います。
ですがどうか私の受験を応援していただけると幸いです。
最後になりますが、今後も全力でこの小説を書きあげる所存ですので、どうか「あの場所でもう一度君と」をよろしくお願い致します。