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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
1章 出会いの1学期
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第1章12話 環と夢とクラスメイト②

「環……あぁ、柏木くん?」


どうやらクラスメイトに認知はされていたようで、こちらを見てくる杉浦に対して「どうも」と挨拶をしておく。律儀に「おはよう」と挨拶を返されたけど、その目からは僕に対する敵意が伝わってきた。


「で、その柏木くんがどうして姫ちゃんと?」

「登校中に偶然あっただけだ…でっ!」


僕の言葉の最後、別に訛ったわけではない。

悲鳴、正しくは姫乃に足を踏まれたことによる悲鳴だ。

杉浦を見ると、肩を震わせて笑いを必死に堪えていた。

恨みを込めて姫乃を睨むけど、僕の視線などどこ吹く風で、堂々と言い張った。


「んーとね、先週末に助けてもらったんだ」


あたかも正当な理由のように話すけど、それは全く理由とは言えない。

それは杉浦も感じとったみたいで、呆れたような笑いを浮かべていた。


「姫ちゃん、理由になってないよ」

「姫乃、それ理由じゃない」


意図せず僕と杉浦の声が重なる。

思わず目を合わせると、杉浦が我慢できない、という顔で笑った。

僕が何かしたっけ?


「ご、ごめん。私柏木くんのこと何か勘違いしてたや」

「え?」

「そもそも姫ちゃんが仲良くしてる人が悪い人なわけないのにね」

「……ありがとう」

「私のこと分かるよね?」

「ん、杉浦さんでしょ?」


そう答えると、杉浦は少し不満そうな顔をした。

この表情は、あの時の姫乃とそっくりだ。ということは……


「『杉浦』って何か他人行儀。亜美でいいよ」

「了解。よろしく、亜美」

「うん、よろしく」


亜美のその言葉がきっかけになったようで、次から次へとクラスメイトが話しかけてくる。


「柏木って雰囲気変わった?あ、俺藤崎(ふじさき)大悟(だいご)な」

「うーん、髪は切ったけどそれだけで雰囲気って変わるの?」

「俺は変わると思う。少なくとも今の柏木は前より明るいし。な」


藤崎がそうやって笑顔で周りに同意を求めると、すぐに皆が頷いた。

それにしても、藤崎のこの爽やかイケメンぶり、さぞモテるんだろうなぁ。

今だって複数の女子が頬を赤く染めているし。


「ま、明るくなるのはいいことだよ。よろしくな、柏木。ん、環の方がいいか?」

「じゃあ環で。僕も大悟って呼んでも?」

「もちろん大歓迎だ」

「そっか。よろしくね、大悟」

「おう」


こうして亜美と大悟と友達になることができた。

と言っても半分は姫乃の魅力のおかげか。


「ねえタマッキー」

「タマッキー?」


突然慣れない呼び方をされたので、戸惑ってしまった。


「あれ、ダメだった?」

「いや、びっくりしただけ。ダメとかじゃないよ」

「良かった。さっき姫ちゃんが『助けてもらったー』とか言ってたけど何があったの?」

「あぁ、それは──」

「ちょっと環くん!?」


姫乃の焦ったような声が聞こえたけど、足を踏んだ仕返しとばかりにその声を無視してあの公園での出来事を亜美たちに伝えた。

案の定亜美と大悟は大爆笑、廊下までその笑い声は響いたようで、廊下にいたクラスメイトが何事かと教室の中を覗き込んできたほどだった。


「環くん酷い……」

「えぇ……ごめんって」

「私の心は深く傷つきましたー」

「じゃあ何すれば許してくれる?」


機嫌を悪くした姫乃に苦笑しながら許してくれるようにお願いする。


「夕飯ご馳走してくれたら許してあげます」

「まぁそれくらいでいいなら」


そう、それくらいなら良かった。

というか、姫乃がこの場でそれを言うことが何を意味するか、理解しておくべきだったんだ。


「何、姫ちゃんタマッキーん家で夜ご飯食べるの?」

「うん、環くん料理上手いんだよ」

「私も食べたいなぁ」


わざとらしく上目遣いでそう言ってきた亜美。

大悟を見ると、こちらもこちらで何か言いたそうにソワソワしていた。


「あー……じゃあ家で何かやる?」

「「よっしゃー!」」

「ただそうすると材料がな……」

「それくらいなら私たちが買ってくるよ」


ということで、今日うちでパーティーをすることが決定した。

まぁ亜美の発言の後に次のようなやり取りがあったのはご愛嬌だ。


「待て亜美、私『たち 』?」

「何?女子1人に重い荷物持たせる気?」

「わかったよ……」

環くんの周りが賑やかになっていきますね。


評価を新たに頂いたようです。ありがとうございます!

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