第5章7話 おやすみ……できるかな?
お待たせしました。
ちょっと今回は個人的に頑張ってみたのですが……どうでしょう(笑)
気に入ってくれるといいのですが。
夕食も済ませた、風呂にも入った、歯も磨いた。もう寝る準備は万全だ。そして時刻は午後9時半を少しすぎたところ。夜はまだまだこれから。明日は休日、夜更かしバンザイ。
夜にすることと言ったらこれしかない。
「んぁっ! あっ…………ん」
「姫、もしかしてこんなものなの?」
顔を赤くする姫乃。だが僕はまだまだ余裕、姫乃を煽ることだって可能だ。
「ん、まだま……だ」
「それじゃあこれはどう?」
慣れないのか、どこかぎこちない動きに追い打ちをかける。
「いや、待って……待って!」
「待つわけないだろっ」
「や、ダメ……ダメーー!」
「っしゃ、僕の勝ち!」
「もう! 環くんなんでそんなに強いの?」
何を想像したんだ? こんな日には夜通しゲームをするに限る。そんなわけで僕たちはスマ●ラで遊んでいた。
だがまぁ、姫乃はキャラが攻撃を喰らう度に変な声を漏らした。おそらく感情移入しやすいタイプなんだろうけど、そのせいで僕はゲームに集中できなかった。それは認めよう。
「姫、声やめてくれないか」
「え、何のこと?」
当たり前だが本人は自分がどんな声を出しているのか気がついていない。指摘するとまた姫乃の機嫌が悪くなりそうだから指摘はできない。だから僕は全力で心を無にしてゲームを続けた。その結果は15戦全勝。僕が強いんじゃない、姫乃が弱すぎたんだ。
「もしかして姫ってゲームやってこなかった系?」
「亜美ちゃんの家で2、3回やっただけだよー」
「いや、僕だって対人は初めてなんだけど」
「え?」
「家に呼ぶ人もいなかったからずっとCP相手だったな」
「あ、ごめん……」
姫乃、謝らないで欲しい。僕がすごく惨めに見えてしまうだろう。
それに今言ったのはもう昔の話だ。今は大悟や伊織、陽向たち──そして何より姫乃が隣にいてくれる。それだけで十分だ。
「大丈夫。これからは姫が隣にいてくれるんでしょ?」
「うんっ」
そう姫乃に笑いかけると、嬉しそうに顔をほころばせて距離を詰めてきた。ふわっと鼻腔をくすぐる甘い香りに思考を掻き乱されてコントローラーの操作が狂った。
「ちょ、姫……操作が」
「今のうち今のうちー♪」
「ま、待って……」
「さっきのお返しだー」
「あ、あ……あああっ!」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
何と、16戦目にして初の敗北。だがこれは仕方がないことだ。健全な男子諸君であれば、この気持ちをわかってくれるだろう?
△▲△▲△▲△▲△▲
「さて、何をしてもらおうかなー」
「ん? そんなこと聞いてないけど」
「そりゃ言ってないもん」
どうやら今の姫乃は完全な小悪魔モードのようである。僕の反論はもはや通用しない。今の僕には姫乃の命令を甘んじて受け入れるという選択肢しか残っていなかった。
「よし、決めた!」
「何でしょう」
「今夜は一緒に寝てね。拒否権はないから」
「……仰せのままに」
「よろしい」
別に姫乃が命令しなくても、頼んでくれればそうするつもりだったんだけど。特に断る理由も見つからないし。なんて考えていると、姫乃がこうつけ加えた。
「環くん、変なところで逃げそうだからね」
「うぐ……」
「命令にすれば逆らえないでしょ」
なかなか不本意だが、否定できる気がしない。
言葉に詰まっていると、隣に座る姫乃がくすくす笑ってきた。
「……何だよ」
「別にー」
にまにま微笑む姫乃にお仕置をすることにする。
「姫……覚悟はできてる?」
「え? あ、ちょ……っ!?」
僕はコントローラー操作のギアを上げた。それだけで姫乃がついて来れなくなり、あっという間に10連勝。これで25勝1敗。溜飲も下がったし、これくらいでいいだろう。
「むぅ…………」
「あはは、ごめんって」
「大人気ない環くんは嫌い」
「どうしたら許してくれる?」
そう尋ねると、姫乃は暫く考える素振りを見せた。
そして数分が経過した。考えた末に姫乃が導き出した答えは──
「明日も泊まっていい?」
「うん、それくらいなら…………へ?」
「明日も、泊まっていい?」
姫乃さんや、聞こえてたから2回言わなくてもいいぞ。ただ驚いただけだから、「大事なことだから2回言いました」みたいな顔をしないでくれ。それにしても、明日も泊まるのか。
「やっぱりダメ、かな」
そんな露骨に落ち込んだ表情を見せないで欲しい。何かこう……からかいたくなってくるから。だけどここで焦らすと姫乃の機嫌が悪くなるのは目に見えている。わざわざ虎の尾を踏むような真似はしない。
「いいよ」
「ほんとに!?」
ぱあっと輝いた姫乃の笑顔。ダメだ、可愛い。
「今週末は何の用事もないし、僕の方こそ姫乃と一緒にいさせて欲しいな」
「あぅ……」
姫乃と一緒にいさせて欲しい、これは僕の本心だ。姫乃を1人にしたくない、という意味合いの方が強いかもしれないけど、一緒にいたいことに変わりはない。
だから正直にそう言ったんだけど、姫乃には少し刺激が強すぎたみたいだ。
「やっぱり環くんズルい」
「えぇ……?」
「何でさらっとそんなこと言えるの?」
「何でって言われても、本心だからとしか」
「うぅ……」
ぷしゅーっと湯気が出てきそうなほど真っ赤になった姫乃。何も言わずに僕の足を叩いてくるだけだった。痛くはないし、照れているだけだとわかっているのでそのままにしておく。
時刻は午後11時半、そろそろ眠くなってきたな。
エロくない描写をそれっぽく表現するのって難しいけど何気に楽しかったなぁ……まぁ、今回が最初で最後なんだろうけど。
お泊まり会、延長の予感(というかほぼ確定)。
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