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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
第5章 お泊まり会とデート
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第5章5話 キス、そして最大の問題

おまたせしすぎてすみません。

言い訳……と言っていいのかわかりませんが一応これだけは言わせて頂きます。


キス未経験者にキスの話書かせるな!

(すみません自分がやりだしたんですわかってます許してください)


てなわけで、環くんはキスできるのか!

 僕からして欲しい? 何を……いや、話の流れ的にキスだろう。確かによく考えれば今まで(事故はノーカン)のキスは全て姫乃からだった。

 今思い返せば、僕から行動したことがあっただろうか。

 再開した時に関わりを持とうとしたのも、告白してきたのも、最初にキスをしたのも、すべて姫乃からだったじゃないか。……僕はこれでいいんだろうか。


 いや、決まっている。いいわけがない。


 確かに姫乃だったらどんな僕でも優しく受け入れてくれるだろうし、僕も姫乃のそんな優しさに惹かれたんだ。だとしても、いつまでもその優しさに甘え続けるわけにはいかない。優しさに甘えたせいで、彼女を待たせてしまったことも事実だから。

 無防備にこちらを向いて眼を瞑る姫乃。両手で姫乃の頬をそっと支えると、驚いたのか「……ん」と小さな声が漏れた。それでも振り払おうとしないということは、受け入れてくれていると解釈していいはずだ。

 だから──


「…………っ」


 上からかぶさるような体勢で、姫乃の唇を塞いだ。

 柔らかく、温かい唇をふにふにと食むようにしてみれば、最初は驚いたような表情をしていたものの、すぐにくすぐったそうに体を揺らした。暫くして蕩けた幸せそうな表情に変化したけれど、これ以上ないほどに愛おしく見える。すごく、可愛い。

 何秒経っただろうか、もう限界と言うように突き放された。姫乃は今にも湯気が出てきそうなほどに真っ赤な顔で「はぁ、はぁ……」と息を切らしながら僕に言った。


「……環くん、長い」

「ごめん」

「謝らなくてもいいけど……何で──」

「ん?」

「何でそんなに慣れてるの?」


 慣れているんだろうか。無我夢中だったからよくわからない。

 それにしても、言語化しづらいけれど……姫乃がキスが好きだというのが何となくわかった気がした。何て言うか、こう……温かくなる。


「わかんないけど、姫乃が可愛かったから」

「うぅ……恥ずかしいよぅ」

「別に変なところなんてなかったけど」

「そういうことじゃないの!」


 どうやら姫乃を怒らせてしまったみたいだ。だけどその理由は全くもって見当がつかない。これが世に言う “女心” なんだろうか。

 結局、姫乃は暫くの間顔を合わせてはくれなかった。


△▲△▲△▲△▲△▲


 話は変わるけれど、お泊まり会(こういう状況)での最大の問題は何だと思う?

 答えは単純、皆が1日に1回は必ず入るもの。つまり──


 お風呂、だ。


 別に一緒に入りたいとかそんなことを言っているわけじゃない。さすがにそれはまだ早いと思っているし、そもそも僕にそんなことができる勇気が備わっているとは思っていないから。

 では何が問題なのか。そんなの決まっている、()()()()だ。この場には2人しかいないわけだから、入り方は2通りしかない。


 ・姫乃が先で僕が後


 ・僕が先で姫乃が後


 前者は個人的にはNOだ。彼女が浸かった後の残り湯に入るとか僕の理性がぶっ壊れかねない。そしてそうなった場合姫乃に何をしてしまうのか自分でも予想ができない。

 しかし立場を逆にしてみれば、後者は姫乃的にはNOだろう。聞いてみなければわからないけれど、おそらくそんな気がする。


「あの、姫乃さん……?」

「…………何?」


 まだ怒っているのが如実に伝わってくる。

 だけど時間も時間だし、聞かなければいけないだろう。だから僕は姫乃の背中に話しかけた。


「風呂……なんだけど」


 ビクッと、姫乃の肩が跳ねた。


「た、環くんが先でいいよ」

「あ……はい」


 ものすごく動揺してるのが伝わってきたけれど指摘はしない。僕が入浴している間に姫乃の機嫌が治るのを願って、少しだけ長めに入ることにした。

 頭を洗い、体を洗い、洗顔をして湯船に浸かる。無意識に「……あー」と声が出てしまった。姫乃に聞かれていたら恥ずかしいな。そういえば僕の家の風呂は少し温度が高め(40~42℃)なんだけど、姫乃は大丈夫なんだろうか。長湯でのぼせないといいんだけど。

 15分ほど浸かってしっかりと温まってから浴室を出る。さすがにのぼせはしなかったけれど、無駄にぽかぽかするな。

 素早く着替えて脱衣所を出てリビングに戻ると、姫乃はソファに横たわっていた。


「姫、風呂どうぞ」

「ん、わかっ──っ!」


 姫乃は顔を上げて僕を見て、固まった。何かおかしいところがあっただろうか。確かに髪を乾かしきってはいないけれど……

 と、姫乃が顔を赤らめて呟くように言った。


「な、な……」

「7?」

「何でそんなにかっこいいの!?」

「はぁ?」


 風呂上がりの男子にかっこいいも何もないと思うんだけど、何故か姫乃には今の僕がかっこよく見えているらしい。謎だ。

 姫乃は勢いよく立ち上がると、ぴゃーっと音が聞こえるくらいのスピードで僕の部屋に着替えを取りに行った。一連の動きは、どこかぎこちなく見えてしまった。いや、かっこいいと言ってくれるのは嬉しいんだけどね。


「あ、ちょっと熱いかもしれないから気をつけて」


 僕が入っているうちに少しは冷めているかもしれないけれど、一応注意はしておく。少し間を置いて「わ、わかった」と返事が聞こえてきた。


 というか、付き合ってる彼女が自分の家の風呂に入るって……かなりやばい気がするんだけど。

 風呂から上がったはずなのに入っている時以上に体が火照ってきて、早く上がってきてくれと祈らずにはいられなかった。

はい、こんな彼女が欲しい人生でした。

俺も俺も〜って方は高評価してくれると作者が二重の意味で喜ぶらしいです。

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