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あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
4章 文化祭
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第4章19話 文化祭最終日②

また私事になりますが、いつの間にかこの小説の総合評価が★3.9になっていました。

この結果に驚いている自分もいますが、頂いた評価に相応しい小説が書けるよう精進していきますので、今後とも応援のほど、よろしくお願い致します。

では本編をお楽しみ下さい。

 体育館に入った途端押し寄せてきた熱気に圧倒された。ライブ開始まであと40分近くあるのに、既に4分の1程度が埋まり始めていた。

 本当に、伊織たちがここで歌うのだろうか。そんな疑問を抱いてパンフレットを確認する。本人から聞いたバンド名は“Rebellion(リベリオン)”。反乱とか暴動とか、そんな意味の英単語だったと思う。何故そんな名前にしたのかは置いておいて、パンフレットには確かにその名前が載っていた。


「……凄いな」


 自分だったらこんなこと絶対にできないだろう。というかそもそも、しようとすら考えないだろう。パンフレットには、他にも合唱部や吹奏楽部、軽音部の名前も載っていた。公式の部活だらけの中でライブを行うのはどんな気持ちなんだろう。

 早く場所を取らないとすぐに無くなってしまいそうだったので、そんな思考を頭の片隅に追いやって前の方に移動する。突然声をかけられた。


「柏木くんじゃん」

「……ユキ先輩」

「あー、覚えててくれたんだぁ」


 良かったぁ、と笑顔になったのは、昨日の“カップル限定”の案内人であるユキ先輩だ。それにしても、何故ユキ先輩が?


「どうしてって顔してるね」

「あ、はい」

「簡単だよー。私、文化祭実行委員なんだ。ウチらのクラスの出し物もね、生徒会の弱みを握ってるからできたことで──」


 怖い。笑顔でそう話すユキ先輩が本当に悪魔のように思えて仕方がない。大体生徒会の弱みって何なんだ?


「生徒会の弱みっていうのはねぇ──」


 いや、何で!? ユキ先輩ってまさかエスパーだったのか?


「あの、聞きたくないのでそこはいいです」

「あ、そう? それじゃあいいか」

「というか文化祭実行委員って何やってるんですか?」

「んーとね、運営だったり警備だったり……後はこーゆーライブとかの受付もやってるよ」


 あまりの多忙さに、絶対やらないようにしよう、そう思ったのはここだけの話だ。

 すると突然、ユキ先輩は心配そうな表情になって僕の顔を覗き込んできた。


「あの、さ」

「はい」

「昨日、あの後ってどうなった?」


 昨日、あの後、それだけでユキ先輩が何を言いたいのか何となく察することができた。それと同時に例のファーストキスのことを思い出して、頬が熱くなった。


「えっと……先輩が心配するようなことは何も」

「ホント!? 良かったぁ。何かごめんね?」

「いえ、目を瞑ってた僕たちにも非はありますし」

「でもまさか本当にキスする人がいるとはねぇ」

「先輩、声大きいです」

「あはは、ごめんごめん。そっか、それなら安心だよ。じゃあ文化祭最後まで楽しみなよー」


 先輩は笑ってどこかへ行ってしまった。ちょうどそのタイミングで、ポケットにしまっていたスマホが震えた。

 姫乃から「どこにいるー?」とメッセージが届いて数分、随分と息を切らした姫乃と陽向が目の前に立っていた。


「……何でそんなに疲れてるの?」

「結構、混んでるって……環くんに、言われた、から……」

「何かごめん」

「んーん、大……丈夫」


 全然大丈夫そうには見えなかったけれど、本人がそう言うなら大丈夫なんだろう。きっと、おそらく。

 ちなみに、姫乃が落ち着くまでに約10分を要した。

 そして、ライブが始まる時間になった。


△▲△▲△▲△▲△▲


 トップバッターは軽音楽部だった。最近流行りのJ-POPなどをカバーして、非常に盛りあがった。

 続いて吹奏楽部。クラシック2曲→アニソン3曲という選曲は、高校生を中心とした観客のウケも良く、予定にはなかったアンコール2曲を演奏するほどだった。

 だけど、僕にはどうしても壁を1枚隔てたところから聞こえてくるような、そんな風にしか感じなかった。演奏が下手だったわけではない、むしろ学生とは思えない、そんなレベルだった。それ故か、僕にとっては他人事のように思えてしまったのかもしれない。

 だから、正真正銘、心から震えた。


「次は……高校発の新バンド(ニューカマー)! Rebellionです!」


 放送部(紗夜ではなかった)のアナウンスとともに舞台上の幕が上がった。

 そして──


「──────♪」


 自己紹介もなしに突然始まった曲。

 ドラムの描き出すリズムが、ベースが奏でる重厚な低音が、そしてギターの主旋律とボーカルの大胆で繊細な歌声が、全てが僕に真正面からぶつかってきた。

 背伸びをしない、高校生の等身大の思いを込めた歌詞。大人びていないから、少しだけ青臭さが残るからこそ胸に響くものがある。

 1曲目が終わったところで、小栗先輩がマイクを手に取った。その場の誰もが、静かに先輩の言葉を待った。


「皆さん初めまして、Rebellionです。実はまだ成立したばっかりで、文化祭に出ようかも迷っている段階でした。それでも、今の僕たちの全力を見て欲しい。それがバンド全員──まぁ3人なんですけど──の意見でした。あ、ちなみにメンバー募集中なので、このライブ聞いていいなって思ったら、2年4組の小栗まで声を掛けて下さい」


 この大きな場でちゃっかり宣伝まで済ませる小栗先輩に、会場から笑いが起こった。小栗先輩はそこで一呼吸間を置いた。そして会場全体を見渡して、叫んだ。


「お前ら堅苦しい話は苦手だよな? てことで2曲目いくぞ! 聞いて下さい、“ZERO”」

「──────♪」


 その後、Rebellionは3曲披露した。成立したばかり、そう言っていたけれど、とてもそうとは思えないほど僕の胸に訴えかけるものがあった。

 気がつくと、僕の頬を涙が伝っていた。目ざとくそれを見つけた陽向と姫乃にからかわれたけれど、そんなものは気にならなかった。

 そしてこの時、この瞬間、僕はあることを心に決めた。

ライブの描写に少し納得いっていない部分もあるので、もしかしたら少し手を加えるかも。


※お泊まり会の話まで、あと少し

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