表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの場所でもう一度君と  作者: ましゅ
4章 文化祭
105/144

第4章18話 文化祭最終日①

昨日は更新できなくてすみませんでした。文化祭最終日、本格的にスタートします。

 文化祭開始が午前9時。伊織たちのライブが10時半からだったからそこまで焦る必要はないだろう、そんな甘い考えは、姫乃に一蹴された。


「早く並ばないといい席とられちゃうよ!」

「それもそうか……でもどうする?」


 2人で頭を悩ませていると、陽向が姫乃の肩を叩いた。振り返った姫乃に何か耳打ちをし、姫乃は困ったような、それでいて楽しそうな、そんな複雑な笑みを浮かべてから言った。


「環くん、場所取りしてくれる?」

「…………え?」


 天使の笑みを浮かべた2人の鬼が目の前にいた。これは絶対に逃げられないやつだ。無駄だと思いながらゆっくり視線を逸らす。陽向に回り込まれてしまった。振り返ると姫乃が見つめてきた。前門の陽向、後門の姫乃……か。そして姫乃は上目遣いでこんなことを言ってきた。


「環くん……お願い」

「…………わかったよ」


 上目遣いはずるいと思う。姫乃の場合、本当に申し訳なさそうに言うのでまだいいんだけど…………

 「やったー!」とハイタッチを交わす2人を見ながら、しみじみとそう思った。


△▲△▲△▲△▲△▲


 姫乃と陽向が2人でどこに行こうか話し合っている光景を見てふと思う。美少女2人が目の前で話しているのは非常に眼福だし、2人が仲良くしてくれる(仲が良すぎる気もするけれど)のは僕としても嬉しい。嬉しいんだけど、どこかモヤモヤする。これは……嫉妬なんだろうか。

 “嫉妬”。その言葉がしっくりと当てはまって、気づかれないように小さく自嘲気味の溜め息をこぼす。昨日、姫乃が嫉妬する未来しか見えないなんて考えておきながら、実際嫉妬しているのが僕だと言う事実。なんだかんだ、僕も姫乃がいない生活が考えられなくなっている。


「それじゃあ僕は場所とってくるけど……どうやって連絡すればいい?」

「んーとね、電話かけるから大丈夫」

「わかった。前の方でいいよね?」

「うん!」


 2人は「よろしくねー」と言ってそのままどこかへ行ってしまった。1人取り残された僕は、少しだけその場に立ち尽くしてから移動を開始した。その途中で、伊織と会った。


「伊織」

「ん、環か」

「ライブやるんだってね」

「おう。あ、そうだ。こいつと会うのは初めてだよな」


 そう言って伊織が紹介した人物と、僕は面識があった。話したわけではないけれど、昨日の今日だし顔を忘れることもない。


「篠田大樹……だっけ?」

「あれ? 知り合いだった?」

「知り合いっていうか、えっと……」


 どう説明したらいいのか悩んでいると、当の篠田が助け舟を出してくれた。


「昨日一緒のブースにいたんだよ。環くんって呼んでいいかな?」

「もちろん。じゃあ大樹って呼んでも?」

「構わないよ。よろしくね」

「うん、よろしく」


 大樹を呼び捨てにすることに申し訳なさというか引け目を感じていたけれど、本人が気にしていないなら大丈夫だろう。そんなことを思っていると、前から誰かが歩いてくるのが見えた。


「伊織と大樹、最後の打ち合わせしたいんだけどいいか……って、あれ? そこにいるのって……」

「小栗先輩……ですよね」

「やっぱ柏木くんか。何、どっちかと知り合いだったのか」

「はい。伊織と」


 やって来た小栗先輩と話していると、伊織がどこか呆れたような声で言ってきた。


「お前、俺の知らないところでどんだけ交友関係広げてんの……?」

「それは僕に言われてもなぁ」

「ま、それもそうか」


 伊織はそう言って笑った。こういったさっぱりした性格は少し羨ましいところがある。これだけさっぱりしていると、変なところで嫉妬したりなんてしないんだろうな。


「それで小栗さん、打ち合わせでしたっけ」

「ん、あぁ、そうそう。時間大丈夫か?」

「俺は大丈夫です」

「僕もです」

「んじゃちょっと来てくれ」


 小栗先輩はそう言って歩き出してから、僕の方を振り返って言った。


「昨日あそこで会ったのも何かの縁だし、良かったらライブ来てくれよ」

「あ、はい。そのつもりです」

「そうか、ありがとな」


 そして小栗先輩はまた歩き出した。その足どりは、気のせいかもしれないけれど、少しだけ嬉しそうに見えた。伊織と大樹も「また後で」と言って小栗先輩について行った。

 そんなわけで、僕はまた1人になった。とりあえず、そろそろ体育館に移動した方がいいだろうか。


△▲△▲△▲△▲△▲


 体育館に行く途中、誰かを探している様子の龍馬を見かけた。


「龍馬、どうしたの?」

「環くんか、丁度良かった」

「…………?」

「紗夜見てない?」

「いや、見てないけど」


 露骨に落ち込む龍馬を見て、ずっと聞きたかったことを聞いてみることにした。


「龍馬と紗夜ってどんな関係なの?」

「あ、えーっと……」


 途端に龍馬は挙動不審になって言葉を濁した。怪しかったので追い打ちをかけると、諦めたようにため息をついてから教えてくれた。


「環くんになら言ってもいいか……付き合ってるんだよ」

「へぇ…………え? いつから!?」

「ちょ、声大きいよ! 昨日からだけど……」


 龍馬によると、一目惚れだったらしい。ずっと見ていることしかできなかったけれど、文化祭で同じ仕事をしてから更に惹かれ始めて、昨日ダメ元で告白してみたらあっさりOKが貰えた、とのこと。

 大悟といい龍馬といい、文化祭の影響力って凄いんだなぁ。


「誰にも言わないでよ」

「ん、あぁ。わかってるよ」


 龍馬に念を押され、その必死な姿に笑みを堪えながら答える。そのタイミングで後ろから声がかけられた。


「あ、いたいた。りゅーくん」

「紗夜! どこにいたんだよ」

「ごめんごめん。美味しそうなチョコバナナが売ってたからつい……」

「そうなんだ」

「はい、どーぞ」

「え?」

「りゅーくんの分も買っておいたから、あげる」

「……ありがとうございます」


 一体僕は何を見せられているんだろうか。でもまぁ面白いからいいかな。というか『りゅーくん』って……それに何も言われなくても彼氏の分まで買ってくるあたり、もしかして紗夜って結構尽くすタイプなのかもしれないな。後で紗夜に詳しく聞こう、そう思ってその場を後にした。

 時間もそろそろなくなってきた。僕は少し歩みを早めて体育館に向かった。

私事ではありますがご報告をさせて頂きます。

先日、1日のアクセス数が1000を突破しました。今までは多くても700前後だったのでただただ驚いております……

そしてもう1点、総合評価が150ptになりました。応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。

お泊まり会までもう暫くお付き合い下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ