表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジック・オブ・ブレイヴ  作者: 早河 遼
14/26

十二節 光と闇

 

 それからしばらくして。


 新たに僕等の仲間の一員となった響君に、魔力の基本事項を改めて説明する事にした。


 魔力者としての経験は一番長い彼であるが、それでも魔力に関する知識は疎い。なので、せめて基本事項だけでも頭に叩き込んでもらおう、と考えたのだ。


 そもそも魔力とは何なのか、魔力解放や魔力暴走……等々、チャックが僕に説明してくれた事を、覚えている範囲で全て話した。


 説明を終えた所で、響君は成る程と相槌を打つ。


「言いたい事はよく解った。魔力の仕組みとかもお前らの目的も。つまりシルク君は、魔力者の認識を変える為にその精霊さんと行動を進めている、という事か」


「まぁ、大体そんな感じだね。具体的にどうすれば良いかは、まだこれっぽっちも決まってないけど」


「……それでもやっぱ凄ぇよなぁ。お前の仲間になれて、本当に良かったぜ」


「よ、よせ。照れるじゃないか」


 つい照れくさくなって、頭を掻いた。


「あ、そうだ、良い事を思いついた。ここを三人の秘密基地にしようぜ」


「秘密基地?」


 日野子は響君に訊く。


「あぁ、ここを三人の魔力の練習場にするんだ。他の魔力者を見つけた時の対策を練ったりとか。何かそう言うの、秘密結社みたいでカッコいいしな」


 目を輝かせながら語っていた。響君、予想はつくけどそういう一面もあるんだな。


 でも彼の言う事は筋が通っている。この辺りは、遊歩道に近い割には人気が非常に少なく、魔力の練習には持ってこいな場所だからな。秘密基地というより、拠点と言った方が響きが良い気もするが。


「すんごく良いアイデアだと思う! 私もそういうの好きだよ、秘密結社! 何だか、キャッツ・アイみたいで!」


「今時の女子高生が最初に出る例えじゃねぇだろそれ」


 しかも、秘密結社というより怪盗だし……。まぁ、似たり寄ったりではあるが。


「一応、僕も同感だ。対策や練習も、三人でやった方が断然良いだろうし」


「うし、それじゃあ決まりだな。じゃあシルク、団長をやってくれ」


「………ほぇ?」


 いきなりぶっ飛んだ提案が来て、変な声を出してしまった。てかその前に団長って何?


「中々目が利きますね、響さん。貴方のその人を見る才能を高く評価しましょう」


「あはははは! シルク団長とか面白すぎる! 良いんじゃない? それ」


 チャックと日野子は絶賛していた。てかこら、勝手に物事を進めるんじゃない。そして、そんな爆笑するな。軽く傷付いたんだけど。


「……おっと、もうじき五時か。俺、今日塾があるんだよ。ほんっとうに怠い」


「あ、そうなんだ。……時間的にもキリが良いし、今日の所はこれで解散しよっか」


 二人の会話を聞いて、スマホの電源を入れる。響君の言う通り、あと三十分位で五時になる所だった。空も赤みを増し、日が落ちてきていた。


「そうだな。それじゃあまた次の機会に」


 こうして僕等はこれを境に、それぞれの帰路に立つ事となったのだった。


 ……ちょっと待て。結局、団長だ何だの件は僕になったの? そこんところ、もう少しはっきりしてほしいんだけど、ちょっと?



 ◆◇



 ……十分後。


 何だかんだで、僕とチャックは夕陽を浴びつつ、横に並んで住宅街のアスファルトを歩いていた。カラスの鳴く声や、犬の吠える声が何処からか聞こえてくる。


 帰路を進みつつ夕陽を目に映しながら、僕はふとさっきの出来事を思い浮かべた。


 ……同じ魔力者、という共通点を持っている所為か、結構気が合う部分が多く、馬鹿げた会話だったけど話してて楽しかった。今日は結構充実した一日だった。皆、良い人ばかりだし。


 次に会うのが楽しみだ。そう考えて、僕はふっと表情を柔らかくした。



 ――()()は一瞬の事だった。


「―――――っ!」


 横にいたチャックが突然後ろを振り向き、短剣を振った。何かを察したかの様だった。


 チャックを目で追う様に僕も後ろを振り向く。途端、眼前に黄色い電流が走り、雷鳴の様な音が辺りに響き渡った。それと同時に、若干肌に刺激が走るのを感じた。


 どうやらチャックは、不意に放たれた何かを素早く察知し防いでくれたようだ。その〝何か〟が魔力である事に気付くのに、そこまで時間は要らなかった。むしろ言うまでも無い。


「ありがとう、チャ――」


「まだです! 急いで防御態勢を!」


 そう言われたのも束の間、すぐさま二つの太い電流がこちらにやって来た。


 電流、の割にはあまり速い速度では無い。しかし、目で追えるレベルであるだけで、油断は出来なかった。


 僕は咄嗟に魔力を解放すると、両手を交互に仰いだ。


 すると、それと同時に、白い靄の様な光に包まれた二体の霊が前方へと飛んでいく。霊は距離を伸ばすにつれて、人の様な姿をくっきりと作り出していった。


 あれこそが、僕の魔力によって現界した精霊達だ。ここ最近の自主練によって、大体の精霊は現界出来るようになった。あの下位精霊であれば、魔力の消費も少なく、簡単に現界出来る。


 二体の精霊は、電流の目の前までくると、手にしていた短剣を斜めに振るい、電流を相殺した。その後、役目を終えた事を理解し、まるで霧が晴れるかの様に消えていった。


「良い調子です、マスター」


「ありがとう。しかし、今のは一体……」


「察するに、あの魔力は〝電撃〟です。先程の電流も、恐らくその魔力によるものかと」


「成る程……」


 〝電撃〟か。微小に残る魔力反応から察するに、この魔力も響君の〝電棒〟と同じく使い慣らされた感覚がある。しかし、一体誰がこんな事を――。



「……思ってたよりは、大分使い熟してるみてぇだな。ま、期待外れでは無かったな。合格だ」



 すると、電流の飛んできた方から、僕等を嘲笑う声が聞こえてきた。目を向けると、そこには一人の少年が立っていた。


 〝電撃〟の魔力者はあの少年か。見覚えの無い、如何にも悪そうな顔だった。外見から察するに、僕と同じ年代に見える。


「……先程から私達をつけていたのは、貴方でしたか」


「あんたらの周りが居なくなるのを待ってたんだよ。全然散る気配も無くイラついてたが、漸く好都合になったという訳だ」


 目の前の少年はそう言うと、悪者っぽくニヤリと笑い、右手に電流を流す。そして、その手を此方に向け、僕等に向けて放ってきた。


 咄嗟に僕とチャックは外側に飛ぶ。その間を太い電流が雷鳴を響かせながら呻りを上げて通過した。


 無事に躱せたものの、電流がすぐ横を掠め、肌がピリピリと痺れた。


「…………ぐッ!」


「……ま、このぐらいは避けれるか」


 少年はそう呟く。


 ……今、コイツこのぐらいはとか言ってたな? 今のを避けるのでさえも精一杯だったのに……。まさか、更に強力なヤツが来ると言う事だろうか。


「…………ウッ、ウガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 ……僕の予想は正しかった。


 少年がその場で大声で唸ったかと思うと、彼の体内の魔力が一気に膨張していくのを感知した。


 魔力解放、だろうか。しかし、既に彼は魔力を解放している。それどころか、魔力解放の状態から、彼の魔力が変異的に膨張し、それが一気に解放された様に感じた。


 近い感じで言うと、日野子が魔力暴走を起こした時の彼女の魔力。その膨大さで例えれば、正にそんな感じだった。


 しかし、彼はその膨大な魔力を暴走させずに制御し、全て自らの物へと変えていた。 その魔力の膨大さは、日野子の暴走した魔力等とは、比べ物にならない。今まで感知してきた魔力の中で、最も反応が強かった。


 〝解放〟では無い。

 かと言って〝暴走〟とも言えない。


 上手く例えるなら、それは――。


 〝覚醒〟だった。


「俺様の名は〝雷鬼〟! 〝豪腕〟の名においてッ! 〝精霊〟の魔力者である貴様を排除するッ!」


 魔力の覚醒によって、身体中に電流を帯びている雷鬼と名乗る少年は、まるで狩りをする前の狼の様にギラギラした目でそう言い放った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ