表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/87

第74話:モブ子のきもち

 やがて地元の駅に到着した僕らは、駅前広場に集合する。

 いつのまにか空は茜色から群青色に変わってきており、懐かしい地元の空気に少しほっとした。


「はい! というわけで駅に着きました! みんな、家に帰るまでが遠足だかんね!」


 えっへんと胸を張りながら言葉を発するきな子姉ちゃん。

 しかし間髪入れずに刹那姉ちゃんが口を開いた。


「いや、そもそもこれ遠足じゃないでしょ」

「そうでござるな。修行合宿でござる」

「いやそれも違うあずき。温泉入って美味い飯食べる修行なんかないよね?」


 僕は頭に大粒の汗を流しながら、こくこくと頷いて言葉を発しているあずきへとツッコミを入れる。

 あずきはぽや~っとした笑顔を浮かべながら夢見心地で言葉を続けた。


「でも拙者、とっても心が豊かになったでござる。これは修行の成果でござるよ」

「そ、そう。まああずきが楽しめたなら何よりだよ」


 ぽへっとしているあずきのほっぺたを見つめながら、苦笑いを浮かべる。

 そんな僕の背後から、控えめな細い声が響いてきた。


「あの、桜崎さん、しぐれくん」

「ん? どうしたのモブ子さん」

「気分でも悪い? 電車酔っちゃった?」


 僕の隣に立っていた桜崎さんは、心配そうな表情を浮かべながらモブ子さんを気遣う。

 モブ子さんはぶんぶんと顔を横に振りながら口を開いた。


「あ、ううん大丈夫。そうじゃなくてね、えっと……」

「「???」」


 もじもじと両手の先を合わせているモブ子さんを見て、僕も桜崎さんも頭に疑問符を浮かべる。

 やがてモブ子さんは意を決したように両手をぎゅっと握り、言葉を続けた。


「ふ、二人に、買い物に行ってきてほしいの!」

「「え」」


 予想外のモブ子さんの言葉に、思わず硬直する僕と桜崎さん。

 やがて桜崎さんは再起動すると、モブ子さんへと質問した。


「買い物って、おつかいをしてきてほしいってこと?」

「う、うん。今週末駅前のデパートで一日限定販売のぬいぐるみが出るんだけど、その日は私遠出する予定なの。だから―――」

「ああ、それでおつかいしてきてほしいってわけか。いいよ」


 事情を飲み込めた僕は、二つ返事で了承する。

 週末は特に予定もないし、モブ子さんの頼みなら全然おっけーだ。


「ありがとうしぐれくん! 桜崎さんは?」

「え、えっと、私は……」


 期待するモブ子さんの視線を避けるように顔を背け、迷っている様子の桜崎さん。何か用事でもあるのかな?

 そうして桜崎さんが迷っていると、モブ子さんは落ち着いた様子で言葉を続けた。


「あのね、桜崎さん。ぬいぐるみはすごく大きいから、しぐれくん一人じゃ恥ずかしいと思うの。だから、一緒に行ってもらえないかな」

「そ、そう。そういうことなら……わかった、行く」


 桜崎さんはこくりと頷きながら、モブ子さんへと返事を返す。

 よかった。どうやら話はまとまったみたいだ。


「ありがとう桜崎さん! じゃあ、詳細はまたメールするね!」

「う、うん」

「わかった」


 妙にテンションの高いモブ子さんを不思議に思いながらも、頷きながら返事を返す僕と桜崎さん。

 その時、きな子姉ちゃんのハイテンションな声が届いた。


「おーし、じゃあみんなで飯食いに行くか! せっちゃんのおごりね!」

「だったらうちで作るわよ。スーパー寄っていい?」

「おおっ! 刹那姫の料理、久しぶりでござる!」

「うおおおお! 刹那姐さんの手料理、テンション上がるぜ!」


 いえーい! とハイタッチするあずきと猛。いつのまに仲良くなったんだ?

 いや、もしかしたら波長が合っていたのかもしれないな。


「ん。桃園さん、どうかした?」

「???」


 いつのまにか桜崎さんはモブ子さんの方を向き、頭に疑問符を浮かべながら質問している。

 モブ子さんの様子に、何か変わったところでもあったんだろうか。


「あ、ううん、なんでもないよ! 夕ご飯、私たちも手伝おうね!」

「う、うん」


 ぐっと両手を握りこんだモブ子さんの様子を見た桜崎さんは、少し驚いた様子でこくりと頷く。

 その後もモブ子さんはいつもより少しだけテンションが高く、僕と桜崎さんはそれを不思議に思いながらも、楽しい夜は更けていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ