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第57話:くじ!

「と、いうわけで“第一回バスの席決めくじ”を開催します! いえーい!」


 きな子姉ちゃんは高いテンションで作ったくじを突き出し、楽しそうに笑う。

 その手に握られた紙のくじを見た僕達は、ぽかんと口を開きながら返事を返した。


「いや、うん……突然どうしたのきな子姉ちゃん。てかそのくじどっから出したの?」


 僕は動揺した様子で額に汗を流しながら、きな子姉ちゃんに向かって質問する。

 そんな僕の言葉を受けたきな子姉ちゃんは、豪快に笑いながら返事を返した。


「こまけぇこたぁいいんだよ! それよりほら! 信ちゃんから引いて引いて!」

「えぇー? まあ、いいか。早く決めないとバス出発しちゃうし」


 僕は渋々きな子姉ちゃんの持っているくじを引き、そのくじの先端に書かれた文字を読み取る。

 そこには大きな字で“屋根”と書かれていた。


「あのー、きな子姉ちゃん? 席番号が書いてないんだけど」

「おっ! やったね信ちゃんそれ当たりだよ! 屋根に乗ってね!」

「席じゃないよそれ!? なんで僕だけそんなワイルドな乗り方するの!?」


 僕はあまりにも素っ頓狂なきな子姉ちゃんの発言に驚き、声を荒げる。

 きな子姉ちゃんはぱたぱたと上下に手を振ると、にこにこしながら返事を返した。


「しょーがないなー。あたしの席と交換するかい?」

「あ、うん。できれば……きな子姉ちゃんの席はどこなの?」

「ハンドル」

「それ席じゃないよね!? ていうか車のパーツだよね!?」


 きな子姉ちゃんの口から発せられた言葉に驚き、思わずツッコミを入れる。

 そんな僕の肩をぽんっと叩きながら、猛は促すように言葉を発した。


「まあまあいいじゃねえか信。俺なんか“タイヤ”って書かれてたぜ?」

「どういう体勢の席なのそれ!? なんかそう言われると屋根ってマシな方な気が……いや騙されるな僕。全然マシじゃないぞ。むしろ死ぬわ」


 屋根に乗ることを想像し、タイヤよりはマシかと思ったけどやっぱ無理だ。カーブで振り落とされて落ちる場面しか想像できない。


「ふふふっ。しぐれくんのお姉さん面白いね」

「そうね。私なんか“運転席”って書いてあったし。てか免許持ってないし」

「拙者は“カーナビ”って書いてあるでござる! ところでかーなびって何でござるか?」


 あずきは不思議そうに首を傾げ、僕達に向かって質問する。

 その質問に答えようと口を開いた時、刹那姉ちゃんからの声が響いてきた。


「もう。馬鹿やってないでバス乗るわよ。そろそろ出発時間なんだから」

「あ、うん……そうだね。席はてきとうに座ればいいか」


 刹那姉ちゃんの言葉を受けた僕は、こくりと頷きながら返事を返す。

 先に乗ろうとする刹那姉ちゃんの腰に、きな子姉ちゃんがひっついた。


「ええー? せっちゃん冷たひ! せっかくあたしがくじ作ったのに!」

「こんなふざけたくじ意味ないでしょ……姉さんも早くバス乗って」

「ちなみに刹那姉ちゃんはくじになんて書いてあったの?」

「おやつ」

「もはやバス関係ねぇー!? それきな子姉ちゃんがいま食べたいものじゃん!」

「えへへ。やっちまったぜ」

「やっちまったぜって……いや、まあいいや。とにかく乗ろう」

「拙者、こんなに大きな車に乗るのは初めてでござる!」


 あずきはぴょんぴょんと弾みながらバスに飛び乗り、僕達はそんなあずきを追って目の前のバスへと乗車していった。

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