第55話:車窓に広がる海ひとつ
急な仕事により本日分の更新は短めです。ごめんなさい!
そうして弁当を食べた僕達はそれぞれのお茶を飲み、まったりとした空気が流れる。
車窓には見た事のない街の景色が流れ、なんとも言えないワクワクとした感情が湧き上がってくる。
そうして電車に揺られること数時間、いつのまにか窓の外には青い海が視界いっぱいに広がっていた。
「おおっ!? 綺麗でござるなぁ!」
あずきは興奮した様子で窓に張り付き、キラキラとした瞳で海を見つめる。
小さく窓を開けると、海の香りが風と共に吹き込んできた。
「すっげー! 海だ海だぁ!」
「海だねぇ。この上なく海だ」
窓を開けて興奮する猛の隣で、僕も高鳴っていく鼓動を感じながら目の前に広がる海を見つめる。
砂浜にはぽつぽつとファミリーやカップルの姿が見えるものの、それほど混み合ってはいないようだ。
混んでないか少し心配してたんだけど、これならのびのびと遊べそうだな。
「海もいいけど、まずは旅館よ。はじめて行く場所だから先に行っておかないと」
刹那姉ちゃんは胸の下で腕を組み、横目に海を見ながら言葉を落とす。
そんな刹那姉ちゃんの言葉を受けた僕は、頷きながら返事を返した。
「初めてかぁ。それなら先に部屋に入ったほうが良さそうだね」
海で散々遊んで休もうとしたら旅館が見つからない、なんてことになったら悲惨すぎる。ここは刹那姉ちゃんの言う通り、先に旅館の部屋に行って荷物を置いてきた方がいいだろう。
まあ正直に言うと今朝からのバタバタでちょっと疲れてるから、部屋で一休みしたいというのもあるんだけど。
それに―――
「うおおおお! 海だぁ! どうする!? ここでスイカ割っちゃう!?」
それに、海のせいでテンションがだだ上がりになっているきな子姉ちゃんをクールダウンさせる必要もあるだろう。
めっちゃチョップを素振りしてるけど、やっぱりスイカは素手で割るつもりだったのか。
「いや、のほほんと考えてる場合じゃない! きな子姉ちゃん、とりあえずスイカは仕舞って!?」
トランクからスイカを取り出したきな子姉ちゃんを慌てて止める僕。
きな子姉ちゃんは「ぷぇ~? 割らないのぉ?」と口を尖らせているが、これは仕方ない。電車内でスイカを粉砕したら大惨事だ。
「いやぁ、ここでスイカ割りは無理っすよ姐さん。代わりに信とか割ります?」
「代わりってなに猛! 僕の脳天がかち割られるってこと!?」
だとしたらお断りだよ! と言葉を続けながら、猛にツッコミを入れる。
きな子姉ちゃんは再び口を尖らせながら「信ちゃんを割ってもなー。あ、海割ろうかな」と不穏な発言をしていた。聞かなかったことにしよう。
「馬鹿言ってないで、そろそろ降りるわよ。みんな準備して」
刹那姉ちゃんの声に反応して、みんなそれぞれの鞄を手元に引き寄せて立ち上がる。
やがて停車した電車から降りた僕達は再び強い日差しに晒され、一斉に「あつっ」と声を漏らしていた。




