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第11話:大胆すぎる作戦

「おはよー」


 無事猛を捕獲した僕は、ゆっくりと自分の席に座って周りの生徒へ挨拶する。

 ぱらぱらと返ってくる返事。しかし隣の席のモブ子さんだけはもじもじと指先を合わせているだけだった。


「えっと……モブ子さん? おはよう」

「ひゃい!? あ、あぅ、あ、おはよう、ございましゅ……」

「???」


 僕が顔を近づけて挨拶をすると、モブ子さんは何故か顔を赤くして俯いてしまう。

 毎朝こんな調子なんだけど、もしかして僕……嫌われてるんじゃないか。


「あの、なんていうか、ごめんなさい」

「な、なんで!? わ、私は、ぜんぜん、だいじょぶだから!」


 モブ子さんは焦った様子でぶんぶんと両手を横に振り、長い前髪に隠された顔をさらに赤く染める。

 もう耳まで赤くなってるんだけど、大丈夫かな。もしかして風邪?


「あの、モブ子さん―――」

「おう信! まだそんな辛気臭い顔してんのかぁ? 便秘以外に心配事でもあんのかよこの野郎!」


 猛は突然僕の肩に腕を回し、歯を見せて笑いながら話しかけてくる。

 これでも彼なりに心配してくれてるんだろう。ありがたいけど、どう相談すればいいんだ。


「しかし、どうしても君は僕を便秘にしたいんだね……いや、まあ心配事があるってのはその通りだけどさ」


 僕は小さく溜息を落としながら、机の木目を目で追いかける。

 横目で確認したらモブ子さんは小さくガッツポーズをして「今日は挨拶できた!」と呟いており、いつのまにか顔の赤みも引いている。どうやら風邪ではなさそうだ。

 そうなると僕の心配はただひとつ、あずきの学園デビューだけだ。

 いや、あずきだって学園は初めてのはずだし、刹那姉ちゃんもブレーキをかけてくれているはずだ。そんなに素っ頓狂な自己紹介はしないと信じたい。


「ふむふむ、お兄さんが親友の悩みを聞こうじゃないか。なんだい? 痔かい? 痔なのかい?」

「何故僕の悩みは下半身に集中しているんだ……」


 僕は頭を抱え、猛の脳天気な笑顔を横目で見る。

 いや、今は猛の発言にツッコミを入れてる場合じゃない。それよりもあずきの話だ。


「いや、僕が気になってるのはね、今日来るはずの転校生が―――」

『うーっしガキ共、とっとと席つけー。ホームルーム始めっぞ』


 聞き慣れたチャイムの音と共に教室のドアが開き、だるそうに自らの

 肩を出席簿で叩いた先生が入ってくる。

 もう時間切れか。まあ猛に話したところで何が変わるわけでもない。今は天命を待つしかないだろう。


「おっと、時間か。じゃ、またな信!」


 猛は右手を上げて早口で挨拶を残し、そそくさと僕の後ろの席に戻る。

 普段は破天荒なくせに授業だけは真面目なのだ、彼という男は。


『えー、あ、そうそう。今日はてめえらに新入生……じゃない、転校生を紹介すっぞ』


 突然の先生の発言に、教室中がどよめきはじめる。

 よかった、あずきはうちのクラスに来てくれたか。

 刹那姉ちゃんが何かしてくれたのかそれとも偶然かはわからないが、とにかく目の届くところにいてもらえるのは助かるな。


『えーっ、こんな時期に転校生?』

『マジマジ!? 男!? 女!?』

『可愛ければ男でも女でもいいな、俺……』


 クラスの中からは様々な憶測が飛び交い、にわかにざわつき始める。

 それも当然か、こんな真夏に転校生なんて滅多に来ないだろう。

 なんだか妙な発言があったような気もするが、まあそれはいい。忘れよう。


『転校生は、えー、女だな。喜べ男子共』


 クラスの中に「うおおお!」と野太い声が響き、ビリビリとした地響きが床を揺らす。

 まったくうちのクラスの男子はよく訓練されてるよ。異様なチームワークだ。


『あー、じゃあまあ、とりあえず入れや、転校生』

『は、はひっ!』


 廊下から聞こえた甲高い声にクラスの野郎共のテンションはさらにヒートアップするが、僕の心臓は破裂寸前だった。

 あずき、声裏返ってるよ……やっぱかなり緊張してるみたいだ。


「ひゅうっ♪ 聞いたかよ信! 転校生だってよ! しかも女子! 否が応にもテンション上がるってもんだよなぁ!?」


 僕の背後から、非常に猛っている猛の声が響いてくる。

 背中がぴりぴりするほどのその声に、僕の緊張感はさらに高まった。


「う、うん。そうだね……」


 猛の様子を見る限り昨日夕飯一緒に食べて、既にお互い知り合いだとは言いづらいな。

 ましてこれから一緒に暮らすなんてとても言えそうにない。

 いずれ話すとしても、今話したら大混乱は必至だ。僕があずきのデビューを邪魔するわけにもいかないし、とりあえず黙っておこう。

 それよりまずは、あずきの自己紹介だ。


「し、失礼!」

「うわぁ……」


 あずきは教室のドアを勢いよく開き、両手と両足を同時に前に出しながらまるで安物のロボットのように教壇へ上がっていく。

 ガシャンガシャンという効果音があれば、さぞ似合ったことだろう。

 いや、何馬鹿なこと考えてんだ僕は。しかしあずき、わかりやすく緊張してるな。


『な、なんだ、あれマフラーか? 何故真夏にマフラーを……』

『いや、でも顔は可愛くね?』

『馬鹿。付き合ったら間違いなく捕まるぞ』

『あの子、ちょっと変かも……』


 いかん、教室が悪い意味でざわつき始めた。

 それも当然か。真夏に真っ赤なマフラー巻いてれば、誰だって変に思うだろう。

 あずき自身がどんなにいい子でも、見た目の印象ばかりはどうしようもない。

 いや、しかしまだだ。これからの自己紹介を無難に、もしくはユーモラスにこなせばまだ勝機はある。

 とにかく第一印象さえ良い方向に押さえておけば、後は流れでなんとかなるはずだ。

 せめて、先生があずきにいいパスを出してくれれば―――


『おーおー、緊張してんなぁ。まあいいや、じゃあとりあえず自己紹介な。名前と趣味とか、その辺でいいだろ』


 先生は気だるそうに頭を掻きながら、あずきに向かって言葉を紡ぐ。

 僕は生まれて初めてあの人のいいかげんさを恨んだ。


『ぬぁぁっ……! なんて粗悪なパスだ、くそっ! 何年多く生きてんだ!』


 僕は心の中で先生に悪態をつきながら、ハラハラとした心境であずきを見つめる。

 せめて、せめて“ござる口調”はやめてくれあずき。あれは一撃必殺の威力があるから。

 やがてあずきは慌てて視線を左右に巡らせると、おぼつかない口元で言葉を紡いだ。


「あ、えっと、拙者の名は、“望月あずき”でござる! 趣味は、えっと、忍術の修業でござる! ひとつよろしくでござる!」

「マイガッ……!」


 あずきの自己紹介を聞いた瞬間僕は机に額をぶつけ、鈍く大きな音が響く。

 やっぱダメだったかぁーっ! せめて事前に原稿を渡すことができれば……!

 僕は悔やんでも悔やみきれない感情を胸に秘めつつも、かろうじて頭を上げる。

 いやでも、意外と受けるかもしれない。変わり者キャラってことで、このまますんなり―――


『うわ、え、どゆこと? 忍術?』

『すげーな。個性とかそういう次元じゃねえわ』

「……っちっくしょう!」


 わかってた、わかってたさこれくらい。

 でも最初っから、好感度マイナスで始まることないだろ?

 あずきの学園生活、初っ端から難易度設定がベリーハードじゃないか。


『おーおー、吠えるなジャリ共。みんな仲良くしろよ? じゃあそうだな、望月の席は……』


 先生はキョロキョロと教室内を見渡し、空いている席を探す。

 普通事前に決めておくもんだと思うけど、果てしなく自由な人だ。

 みんなあからさまに先生から目線を外してるな……さっきの反応を見る限り、それも当然か。

 僕の近くの席が空いていればよかったんだけど、どうにも力になれそうにない。

 こうなれば僕が、空いている席を探すしか―――


『お、桜崎の後ろ空いてるじゃん。じゃあ望月、お前の席あそこな』

「は、はひっ!」


 あずきは緊張した様子で先生へと返事を返し、再びロボット歩きのまま席へと向かう。

 やはりこの短時間で緊張が解けるのは無理か……この環境には徐々に慣れてもらうしかないな。

 それにしても、桜崎さんの後ろの席か。桜崎さんはクラス内でもかなり人気のある女の子で、特に女子からは絶大な人気があったはずだ。

 サラサラとした桜色の髪とはっきりした顔立ちは遠目から見ていても可愛いのがわかる。

 ……まてよ、これはチャンスじゃないか? 桜崎さんがあずきを受け入れてくれれば、クラスの女子も自然とあずきを受け入れられるはずだ。

 今は女子達も面食らってるけど、まだワンチャンあるぞこれは。


「えーっと……よ、よろしく」

「よろしくでござるよ、桜崎どの! えへへ」

「…………」

『だ、ダメだあああああああ! 桜崎さん思い切り顔が引きつってるよ! そりゃそうだよね、ござる口調の女子高生なんか僕見たことないもの!』


 僕はがっくりと肩を落とし、そのまま机に肘をついて頭を抱える。

 すると次の瞬間、大きな物音が教室に響いた。


「ひゃっぷ!?」

「あずき!?」


 あずきはなぜか思い切り転び、全身を地面に叩きつける。

 そんなあずきに驚いていると、やがてあずきは何事もなかったように立ち上がった。


「やー、まいったでござる。草履の鼻緒が切れてしまったでござるかな?」


 あずきはスカートの埃を払うと悪戯な笑みを浮かべ、軽く頭を掻く。

 どうやら緊張のせいで、転んでしまったみたいだ。もっとも発言の方も大分転んでいるんだけど、桜崎さんの反応は大丈夫だろうか。


「は、はぁぁ? 鼻緒って……」


 桜崎さんは大口開けながらそんなあずきを見返すが、次の言葉が出てこない。

 ですよねー。そりゃポカンとするよねぇ。

 いやしかし草履って、何言ってるんだあずき。普段から履いてる人なんて見たこと無いよ。


「やーまったく、物を大切にするのも限度が……おを!? は、鼻緒が無いでござる! なんでござるかこのみょんみょんとしたものは!?」


 あずきは自らの履いていた上履きのゴムを伸ばし、本気で驚いた表情のままみょんみょんとゴムを動かしてみせる。

 僕は思わず声を荒げ、ツッコミを入れた。


「いや、普段草履履いてなかったじゃん! てか今上履きだから!」


 僕の声が静かな教室の中に響き、大きく反響する。

 あずきはしばらくぽかんと僕の顔を見つめ、やがて花開くような笑顔を見せた。


「おおっ!? 信どの! 信どのもこの“くらす”だったのでござるか!?」


 あずきはぴょんぴょんと飛びはねながら両手を振り、心底嬉しそうに僕の顔を見つめる。

 Oh……思わず突っ込んでしまった。まあ別に問題ないか、いずれわかることだ。


「信!? お前、あの子と知り合いだったんか!?」


 猛もさすがに驚いたのか、両目を丸くして僕を見つめる。

 なんだか隠していたみたいでばつが悪い僕は、軽く頭を掻きながら返事を返した。


「うん、まあそんなとこかな。あずき、早く座らないと先生に怒られちゃうよ?」


 僕は少しだけ大きめに声を出し、あずきへと言葉を届ける。

 なんにせよ、今のままじゃホームルームが進みそうにないな。


「おおっ、そうでござった。かたじけないでござる、信どの」


 あずきは太陽のような笑顔を見せ、少し恥ずかしそうに頭を掻く。

 そのまま数歩歩みを進めると、何事もなかったように桜崎さんの後ろの席へと腰を下ろした。


「桜崎どのも、ありがとうでござる。拙者、登校初日ゆえ席がわからなかったでござるよ」


 あずきは相変わらず能天気に笑いながら、桜崎さんへとお礼の言葉を送る。

 桜崎さんはそんなあずきを一瞥すると、引きつった笑顔で返事を返した。


「あ、ああ。うん、まあ、良かったわね」

「Oh……相当困っていらっしゃる」


 僕は両手で頭を抱え、再びがっくりと肩を落とす。

 そりゃ反応にも困りますよ。だっていきなり草履とか言われても、普段馴染みがなさすぎるもの。


『ふぅ。しかしとりあえず、ホームルームは乗り切ったみたいだな……』


 僕の小さなため息と共に、教室内の空気が弛緩していくのがわかる。

 あずき……君の教室デビューはあまりにも心臓に悪いよ。おかげで手の平には汗がべっとりだ。


「しっかし驚いたな、お前があの子と知り合いだったとは。一体どうやって知り合ったんだ?」


 猛は心底不思議そうに僕の顔を覗き込み、小さな声で言葉を紡ぐ。

 僕はしばらく考え、やがて返答した。


「……まあ、色々あってね」

「???」


 的を得ない僕の返答に猛は頭に疑問符を浮かべ、不思議そうに首を傾げる。

 うん、無理だ。どう考えても一部始終を混乱なく伝えられる自信がないし、あずきが忍者だと信じさせるのも無理だ。何せ僕自身半信半疑なんだから。

 無用な混乱を避けるためにも、とりあえず今はお茶を濁しておいた方が良いだろう。


『お、チャイムか。じゃあ一限まで休みだな。あーやっとタバコ吸える……』


 先生は肩の骨をボキボキと鳴らしながら、ルージュの引かれた口にタバコをくわえると、気だるそうに教室のドアを開けて去っていく。

 最後まで凄いなあの人は。


「ふむ、転校生が来たホームルームの後、初めての休み時間か。本来なら転校生が質問責めに遭う、絶好の友達作りポイントだが……」


 猛は両腕を組み、神妙な顔つきであずきの方を見つめる。

 僕もまた嫌な予感を盛大に感じながらも、猛の目線を追いかけると……


「ふ~♪ ふんふ~♪」

「オップス……」


 たった一人で鼻歌を歌う、あずきの姿が目に飛び込んだ。周囲には欠片も人の気配が無い。

 あずきは椅子に座って上機嫌に鼻歌など歌いながら足をぱたぱたと動かしているが、その様子がさらに哀愁を誘う。

 いや、もう駄目だ。ていうか何やってんだ僕は。今こそ話しかけに行くべきだろう。


「ま、それもお前が話しかけてやりゃ―――っておい!? もう行ってんのかよ!」


 猛はすでに歩き出していた僕の後ろを追いかけ、早足でついてきているようだ。

 しかし僕は一刻も早くあずきと話したくて、そのまま歩みを進めていた。


「あずき、お疲れ様。なかなか良い自己紹介だったよ」


 僕はあずきの席まで歩みを進めるとそのまま屈み、あずきと目線を合わせて言葉を紡ぐ。

 あずきは歯を見せて笑いながら、嬉しそうに返事を返した。


「あ、信どの! いやー、拙者緊張してしまったでござるが、桜崎どののおかげで助かったでござるよ」


 あずきは恥ずかしそうに頬を染め、誤魔化すように笑いながら、首を傾げる。

 よかった。あまり落ち込んではいないみたいだ。


「あ、そうだあずき。彼は僕の友達の猛っていうんだ。僕の後ろの席に座ってるよ」


 僕は追いついてきた猛を手の平で指し示し、あずきへと紹介する。

 どうせこの後「紹介しろ、紹介しろ」とやかましいだろうから先手必勝だ。


「おっす、あずきちゃん! これからよろしくな!」


 猛はにいっと笑った歯を白く輝かせ、親指を立てた手をあずきへと突き出す。

 いつもながら勢いと爽やかさは他の追随を許さないな……僕も見習わなければ。


「よろしくでござる、猛どの! 猛どのは元気でござるなぁ」


 あずきはぽやぽやと笑いながら猛を見つめ、相変わらずのんびりとしたオーラが全開だ。

 とりあえず落ち着いたようで何よりだけど、クラスに溶け込むにはもっと時間がかかりそうだな……

 僕は顎の下に曲げた人差し指を当てながら、どうにかしてあずきがクラスに溶け込めないかを考える。

 あずきはそもそも良い子なんだし、何かきっかけがありさえすればいいと思うんだ。

 問題はそのきっかけを、どうやって作るべきか……


「迷ってることはわかるぜ信。あずきちゃんがこのままじゃ、女子の中で浮いちまうってことだろ? 女子だけの授業も多いし、確かにこのままじゃまずいわな」

「えっ!? あ、そうか。全部の授業が男女混合ってわけじゃないし、確かにまずいよね……」


 確かに、猛の言うとおりだ。

 もしこのままあずきがあの女子達の中に入って、授業など受けようものなら―――いや、想像するのもつらい。

 きっとあずきは女子達から腫れ物のように扱われ、微妙な距離を取られたまま三年間を終えてしまうだろう。

 なんでだろう……なんだか、嫌な気分だ。


「猛……教えてくれ。僕に、あずきのためにしてあげられることはないのかな?」


 普段から鈍感で猛くらいしか友達のいない僕には、出来るだけあずきの傍にいることくらいしか出切る事が思いつかない。

 でも、それだけじゃ駄目なんだ。僕だってずっと一緒にいられるわけじゃない。

 女子達と仲良くすること。それがあずきの学園生活を守る、最低条件なんだ。


「ううむ……難しいな。女子達の関係に男子が直接関わると、大抵ロクな事にならんし……」


 猛は頭を抱え、うんうんと唸りながらその辺りを歩き回る。

 僕も無い頭を回転させて考えてみるが、良い考えは思い浮かばない。

 あずきにマフラーとか、ござる口調をやめてもらうか……? いや、それは無理だろう。定着している口調は一朝一夕で直せるものじゃない。


「ぐ、ぬ……ん!? そ、そうか!」

「えっ!? 何か思いついたの!?」


 猛はぽんと手を叩き、満面の笑みで僕を見つめる。

 な、なんだろうその笑顔。良いアイディアなら僕も嬉しいはずなのに素直に喜べない。

 僕の第六感が、何か危険なものの到来を予感している。

 猛はゆっくりと僕の肩を掴むと、やがて口を開いた。


「信、お前……桜崎さんをモノにしろ。それしかねえ」

「……………は?」


 何を、ナニヲイッテルンダロウ、彼は。

 言っている意味がわからない。僕が、桜崎さんを、なんだって?


「だぁーかぁーら! 女子に人気のある桜崎さんをお前にメロッメロにして、あずきちゃんとの仲を取り持つんだよ! そうすりゃおのずとあずきちゃんの人気も上がる。一番てっとり早いだろが!」


 猛は僕の肩を両手で掴み、一際大きな声で僕の耳に言葉ぶつける。

 キンキンとなる耳の奥に、猛の大きな声が確実に響き渡った。


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