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第九話 生贄の少女

あらすじ:ダンジョンにロリ生贄がささげられた。


9/30 ご指摘を受けまして、主人公がヒロインを受け入れるまでの流れを、もう少し整合性を取るべく改稿いたしました。主人公の思考が、少しなりとも深く(少しエロく?)なったかと思います。

 まあ。


 このまま見てみないふりをし続けるわけにもいかない。融和派はこういう時の選択が難しい、ってママも言ってたっけなー。


 って言っても、今回はとっくにボクの中で答えは決まってる。彼女を殺すなんてするわけない。なんてったって、ボクはまだまだこの世界のことを知らなさすぎるからね。いきなりだったからちょっと尻込みしただけなんだ。

 まだ小さい彼女がどれだけ受け答えできるかはわからないけど、それでも現地人の生の声は聞いておきたい。

 こないだの五郎兵衛君たちは、保護とか云々以前の、あっという間の出来事だったからなあ。

 男しかいなかったし。男しか、ね……。


 ともあれ……形はどうあれ、向こうから接触を試みてくれたのは素直にありがたい。しかも丁寧に生贄という形で、元々属していた社会から切り離して提供してくれている。ならばここは向こうの思惑通り、丁重にお迎えしてあげよう。


 ってわけでメニュー操作、侵入者に対して保護指定を実行、っと。


「ジュイ、悪いんだけどその子連れてきてくれる? マスターフロアの手前までね」


〈わかったー〉


「それから……現ボスのゴブリンナイトは、マスターフロアの扉前で待機させて……これでよしっと。あとは……」


 モニターに目を移すと、真っ青な顔でされるがままジュイに背中まで持ち上げられる女の子。えーと、木下ちゃん。

 二人が立ち去った入口には、木下ちゃんと一緒に持ち込まれたものだけが残された。あれも、ボクに対する供物だよね? 中身を見て、ほしいものはもらっておこう。


「マスタールームへ転移、と……」


 意思のない物体……アイテムの類は、所有者がいないものに限りダンジョンマスターの自由に場所を移動させることができる。これが地味に便利。部屋の模様替えとかでも結構活躍する機能なんだけど、ダンジョンマスター的には公然の裏ワザとして認知されている。


「あとは……服はそれらしくしたほうがいいかな」


 さすがに人を招くのに普段着はちょっとね。それに、今まで一張羅を使う機会がなかったから、ここらで一発ちゃんと使っておこう。


 ということで、ボクは対外用にと用意していた衣装をクローゼットから目の前に転移させ、早速お着替えを。


 今まで来ていた服は、人目がないこともあってゆったりとしたシャツだった。けれど、この衣装のイメージソースは軍服。ぴしっとほどよい緊張感を抱かせてくれるのは、礼装タイプをモデルにしたからだろうね。新品の輝きを放つボタンや、山吹色の飾緒がさぞまぶしいだろう。んふふ。

 これを、ボクはマントのように羽織る。裾と一緒になびく長袖が最高にかっこいいよね! あ、インナーはもちろん着るよ? モンスターだからって甘く見ないでね。裸をさらす趣味はないのだ。


 そして、ボクの下半身である純白の花・・・・・・・・・・に数滴の水を散らす。こうすると、光を反射してきれいに見える上に、潤いを増した花弁はほのかな色香を漂わせるようになる。これは、ママから教わったテクニックだ。

 最後に鏡でチェックをして……うん、ばっちり!


 さーて、たまにはマスタールームから出ますか。


 ボクは鏡の中の自分へにこりと笑いかけると、出迎えのために移動する。ダンジョンマスターはダンジョン内に限っていつでもどこでも転移可能だけど、普段からそれをしてると身体がなまってしまうし、外に出た時に困ることになる。ただでさえ歩きに定評のない種族なんだし。


 ボスフロアまで出て、腕を組んで待機する。後ろには、ゴブリンナイトが控える。

 ほどなくして、ジュイが木下ちゃんを乗せて現れた。ジュイは彼女を降ろし、ボクの隣に座る。


 ジュイにとっていつものことって言えるけど、木下ちゃんにはどう見えてるんだろうね、この構図。


 ……さっきよりうろたえてるところを見るに、まあ、お察しくださいってところか。

 このままだとらちが明かない。そう判断したボクは、木魔法の【アロマセラピー】を発動させた。


 これは精神状態を落ち着かせる香りを放つ魔法だ。そのままずばり、混乱や魅了、恐怖と言った精神系の状態異常を治療する効果がある。今の木下ちゃんにはうってつけだろう。

 案の定、魔法を発動させてすぐ、彼女は落ち着きを取り戻し始めた。ただし状態が恐怖の上位、恐慌だったからか少し時間はかかったみたいだけど。


 彼女が元の顔色を取り戻して、こちらを観察するくらいの余裕ができたあたりを見計らって、ボクは日本語で声をかけた。


「大丈夫?」


 その声に彼女はびくりと身体を硬直させる。けどすぐに力を抜いて、おずおずといった感じで頭を下げた。


「それは肯定ってことでいいかな?」

「は、はいっ」


 返事が来たことに、ボクは思わず笑みを浮かべる。がんばって覚えたスキルが通用すると、嬉しいよね。


「ああ、顔は上げていいよ。畏まられるのは嫌いじゃないけど、そのままだと話しづらいから」

「は……はい」


 ボクの言葉に応じて、木下ちゃんが顔を上げた。


 改めて自分の目で見ると、彼女の幼さがよくわかる。と同時に、やっぱりこの周りはあまり経済状態がよくないんだろう、ということも。


 彼女の顔立ち自体は、決して悪くない。世界が違うからか故郷の人間とは方向性が違うけど、それでも将来は美人になりそうだ。黒髪黒目はベラルモースでは珍しいから、あっちに行ったらなかなかモテるんじゃないかな。っていうか、ボクから見ても十分おいしそう・・・・・だ。


 でも、細い身体つきがマイナスかな。そんなに食料がないんだろうか。後ろでまとめた髪は、あまり手入れがされてる雰囲気がない。肌の日焼けは健康的というより、長時間外で働かなきゃいけないような環境下にいたって感じで、美しさが足りない。

 それを証明するかのように服も、つぎはぎはかろうじてないみたいだけど、袖口がほつれてたり、汚れが落ち切ってなかったりと、貧困の気配がぷんぷんする。


 飽食の世界からやってきた身としては、いい気分にはなれないなあ。


「さて、どこから話そうか? とりあえず、君はどうしてここまで来たのかな?」

「あ、あの、生贄、です。森の主さまに、捧げるよう、と」

「森の主? もしかして、この子のことかな?」


 言いながら、ボクはあくびをかみ殺しているジュイの頭をなでる。もっふもっふ。


「は、はいっ。……あの、森の主さまは、こちらの狼さまでは……」

「違うよ。ここで一番偉いのはボクだ」

「じゃあ、あっ、で、では、あなたさまが森の」

「それも違うね。そもそもボクたちは神とか精霊じゃないから。たまたまふらっとやって来ただけの、よそ者に過ぎないよ」

「そ、そうなんですか……?」


 そうだよと頷きながら、ちらりと横目にジュイを見る。彼には神属性がついてるから、あながち間違いってわけでもないけどね……。


「っと、そういえば自己紹介がまだだったね。ボクの名前はクイン。それからこっちがジュイ、だ。君は?」


 鑑定でわかってるけど、一応聞いておく。それで驚かれても話の腰が折れるだけだ。


「あっ、あいさつが遅れてすいません! あの、私かよといいます! 十三歳です!」


 ……十三歳にしては幼すぎる気がするんだけど。この世界の人間がみんなこうなのかな? それとも、栄養不足? あるいは、単に個人差?


 わかんないな。これ真理の記録アカシックレコードで答え出るかな。一応調べてみるけど……。

 それよりも、この子の名前は木下・かよじゃなかったっけか。苗字だけ名乗るなんて、不思議だ。これはこの世界の習慣?


 うん、調べもの決定だ。でもとりあえずは棚に上げて、目下の問題を片づけよう。


 ボクは質問を矢継ぎ早に投げかけていく。

 木下ちゃんは年齢のわりにしっかりしていて、ちゃんと受け答えができていたから、思ってたよりはスムーズに状況を把握することができた。


 つまり、だ。


「なるほどねえ、ここ最近ジュイが派手に獲物を取ってたから、森の主が怒ってるって思われたのかー。それで怒りを鎮めてもらうために、君が生贄にされたんだね」


 こくりと頷く木下ちゃんに、ボクも頷き返して唇に指を当てた。


 暴れてる存在に対して生贄を捧げる対応は、ボクにはすごく弱気に思える。まあ、木下ちゃんにしろ五郎兵衛君にしろ、レベルの度合いを考えると間違いでもない気はするけど……。

 何はともあれ、逃げるという選択はされてないみたいで、ちょっと安心した。


「……でもさ、君みたいなちっちゃな子を生贄にするってどうなの? 周りの大人はそれでいいと思ってるわけ?」

「その……村で未通で適齢期の女が私しかいなくて……。神様にささげるものは、きれいじゃなきゃいけないって……」

「あー……そう考えるのか……」


 確かに、神様の怒りを鎮めてもらうのが目的なのに、中古品(とても悪い言い方だけど)を贈るのはまずいかもね。


 ……いやでもさ。


「……適齢期? 悪いけど、ボクには君は子供にしか見えないよ?」

「わ、私はもうできます! 月のものもきてます!」


 そうやって必死に否定する姿は、ばっちり子供だと思うけどなー?


「適齢期の判断雑すぎないかなそれ……」


 まあ、ありかなしかで言えば、断然ありなんだけどね。

 種族柄、小柄な人間程度までしか成長しないから、人間にそう言う目を向ける場合は、大人より子供のほうがその気になれるんだよね。

 だから人間からは、たまにロリコン種族って罵倒されるんだけど。自分たちの視点でしか物事を見ないのはやめてもらいたいね。


 ……それはともかく。


 一通り話を聞き終わって、ボクの中で彼女の扱いは決まった。

 ボク好みに育てて現地妻にしよう! 磨けば光る原石だと思うし!


 参謀とか副官とか、そういういわゆる頼れる仲間もほしいけど、会話のできる癒し相手はもっとほしい。

 っていうか、ぶっちゃけ話し相手が欲しい。こっち来てから、ホント独り言増えたもん。

 ジュイはしゃべれないから、話し相手ってのとはまたちょっと違うしさ。

 それに、どうせ話すなら男より女の子のほうがいいに決まってる。


【モンスタークリエイト】で名づけネームドを作ればそれも解決するんだけど、まだ量産できるような状況じゃないから……。


「……何はともあれ、だ。君は生贄としてボクに捧げられたわけだね」

「えっと……はい、そう、です……」

「なら、それをどうしようがボクの勝手ってことになるよね。君を食べたって、いいんだよね?」

「ひ……っ、あの、は、はい、そう、です……」

「よし。それじゃあボクは、君をめとろう。いいね?」

「ひゅっ!? は、は、はいっ。えぇっ? あ、あの」

「ふふ、安心しなよ。別に取って食いやしない。人外なのは確かだけど、無暗に殺したりなんかしないさ。かわいがってあげるよ」


 性的な意味では食べるけどね。

 そう思いながらボクは笑うと、木下ちゃんのすぐ前まで移動する。


 できるだけ怖がらせないように視線を合わせながらゆっくり動いたんだけど、それでも少し引かれた。


 むむ、なんか悔しい。絶対に慣らしてやろう。


「とりあえず、中に入ろう。いつまでも土の上で話をするのもなんだしね。案内するよ」

「ひゃあっ!?」


 妙な決意をしながらも、ボクはそう言って木下ちゃんを抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこってやつだ。

 そして持ち上げて思う。


 軽い。軽すぎる。これは間違いなく、栄養不足だろう。


 うん、まずは食事だ。食事を充実させよう。男女の別なく、性的な魅力ってのは健康な身体に宿るものだ。そのためには、美味しいご飯に適切な栄養が必要だよね!


「あ、あの、えーっと……」


 おっと。

 少し意識が遠くに飛んでいたね。いけないいけない。


 ボクの腕の中で、もじもじと戸惑っている様子の木下ちゃんに微笑みかけながら、ボクはくるりと踵(そんな部位はないんだけどね)を返した。

 ばさり、と羽織っていた服の裾が翻る音が鳴る。それにまぎれて、彼女がぼそりと言ったのをボクは確かに聞いた。


「だ、だ、旦那……様……? あの……ふ、不束者ですが、よろしくお願いします……」


 あ、ちょっと。何その呼び方、心くすぐられる! それ破壊力抜群だよ!?


《個体名【クイン】と【木下・かよ】が婚姻契約を結びました》

《称号【木下・かよの婚姻契約者】を獲得しました》


 あ、世界の声さん久しぶり。そしてありがとう。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


メインヒロイン登場。ロリですが別にクインはロリコンじゃありません。

本人も地の文で独白してますが、人間の子供くらいまでしか見た目が成長しない種族柄、子供のほうが美的感覚にマッチするのです。

ええ、それだけなのです。クインは! ロリコンじゃ! ないんです!!(力説


クインの種族については、もう少し後で一話使って解説するつもりですのでそれまでお待ちを……。

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