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ダメだ、ああダメさ。つくづく俺はドロスちゃんの規格外ってトコを見せられた気がするよ

もう疲れました・・・



プロット上の前半部分しか書けなかった。幼女が一度(ひとたび)動き出すと止まることを知らないので・・・、ね。

俺は頷いた。それは良い。だけど・・・



何をどーやって作る?電波は・・・



もち圏外、レシピサイトは無理か・・・



振り返るとそこには慣れ親しんだとは言い難い引っ越して一月経たない新居、チンケな賃貸の6畳の部屋。まず目についたのは一人用ベット、その上にくしゃくしゃのシーツと起きた時のままのダウンの布団、まだ寒かったので出しっぱなしの炬燵、地デジは飛んでいないので映らないテレビとAVデッキ、電気が無いので無用の長物のPS、買ったばかりのエアコンも勿論動かない。ジュース用の小型冷蔵庫も止まっているが買いだめしてあるのでビールはOKー飲酒は二十歳から、でも一人暮らし始めたらノリで買っちゃうだろ?それだよそれ。毎日晩酌とかじゃないよ。ほんとほんと。これもその場のノリで買ったばかりのマルボロー喫煙は二十歳から。以下同文。喫煙クセは着いてないからライターを買ってなかったりする。ま、いいか。電波も電気も止まっているので殆んど使えないもんばっかだな。勿論、窓は有るが開けても見える景色はドロスちゃんの部屋の中。ドアは・・・


「んー、開かないか。やっぱり。」


ガチャガチャとドアノブを廻しても手応えがない。この先に出れたらコンビニまで歩いて2分なのに。部屋の隅には実家から持ってきた衣類の段ボールとゲームとか漫画の段ボールとか細々した雑貨や何やの段ボールと。開け始めると腐海と化すから今はやめとこう。後はUBとクローゼット。


「お。」スルーッと開く。


「こっちは開くな。」


クローゼットの扉はらくらく苦もなく開いた。


「何をしてるの?」


振り返るとドロスちゃん。コテンっと首を傾げる小さな女神を見て思い出す。こんな事をしたかったわけじゃなかったんだ。、と。気を取り直して何が作れるか考えてみる。鳥の卵さえあれば・・・



「鳥の卵って・・・ドロスちゃんの部屋にあるかな?・・・」



ドロスちゃんを横目で窺い、それとなく聞いてみる。


「無いよ?」


「やっぱりな・・・」


無いのか。これは困ったぞ、いきなり暗礁に乗り上げた気分だ。無かったら作れない処か他の物をすぐに思い付かない、俺。


「取ってこようかー。」


頭を抱えた俺が悩んでいるのを見たドロスちゃんは無邪気な笑顔で俺の下から見上げて何悩んでんの?とそう言いたげだ。なんだ、部屋に無いだけであるんじゃないか卵。


「卵あると、助かるー。」


暗礁を抜け出せた。卵さえあれば色々作れてあると無いとじゃダンチだ。そうは言っても卵、取ってくるって言ったよねドロスちゃん。そんなニコニコして言われても、卵取ってくるってどこから?どこに?スーパーマーケットは無いよね、たぶん。


「心配しないで。すぐ、すぐだから。」


ド、ドロスちゃん?ま、まさか・・・歩き出すドロスちゃんを視線で追いかける、その先にはモニターが。振り返るとにこっと笑ってドロスちゃんはすぅうっと消えて。モニターに入ったんだろう、たぶん。ドロスちゃんは見掛けに騙されがちだけどあれでもやれば出来るちゃんとした女神だ。


「たっだいまー。」


「返してきなさい。すぐ、すぐにっ。」


すぐに飄々と画面から声がした。にゅっと左の掌がモニターから生えて、にゅぅうっっっとその後からドロスちゃんの無邪気な笑顔が覗く。そうして帰ってきたドロスちゃんがモニターからのそのそとと出てくるのだが。何やら嫌な予感がしてモノを見る前に俺は叫んでしまった。ぽんっと出れずにのそのそと出てくるには理由があったのだ。ドロスちゃんの小さな右の掌のどこからそんな力が出るのか解らないが、握られて引っ張り込まれたものは大きな翼の鳥・・・鳥か?これ。返してきなさいっっっこれは違う!違うな、違うよな。俺が見上げ無いといけない程大きく部屋に入りきらない翼は、


「鳥だよね?卵。」


「ノー!もっともっともっと小さくていいの!」


「はぁーい。」


あれは何だったのかな、解ってるのは鳥類の何か。ドロスちゃんが握っていた掌を弱めて広げるとモニターの中へ消えた。サイズ指定はしてなかったよ?確かに。そこは俺が悪い。でもさ、ドロスちゃん。部屋に入りきらない大きな鳥捕まえてどーやって卵貰うのさ。そもそもくれないと思うんだけど。まあ、頑張って(?)くれたドロスちゃんを責めれないから黙って苦笑いを浮かべる、俺。あ、ははは。


胸の前でこーやって四角を作ってサイズを指定したら鳥の大きさが伝わるかと思っていたさ。いかんな、いかんな。思い込みってのはダメだ、ああダメさ。つくづく俺はドロスちゃんの規格外ってトコを見せられた気がするよ・・・


次にモニターに消えて、帰ってきたドロスちゃんは。にゅぅうっっっと両手から現れた。両手には掌から溢れそうな胸の前で四角を作ってサイズ指定はばっちりだった。サイズは鳥のつもり、だったんだけどなあ。


ドロスちゃんはにっと八重歯をキラキラ輝かせてぺたんこの胸の前で大きな卵を掲げる。そうだ。ドロスちゃんはサイズ指定の大きさより大きいくらいの卵を持って現れたんだ。恐竜の卵かよっ!ってツッコミ入れたくなるのを俺は必死に押さえつけた。まあ、百歩譲ってコレは卵だ、作れない事は無いじゃないか。恐竜の卵(仮)で卵焼き、作ったっていいはず。苦労(?)を労ってお礼を言うべきだろう、まずは。



「ありがとう、ドロスちゃん。」


素直に感謝を示し、俺はドロスちゃんの頭を撫でてやりながらお礼の言葉を掛ける。撫でられるのが擽ったいのかドロスちゃんは照れたように真っ赤になり『きゅぅう』と声が洩れた。しっかし、見れば大きいし、持ったら重いな。ドロスちゃんの抱える恐竜の卵(仮)を努力して受け取る。努力して受け取らなきゃならない卵で卵焼きを作る事になるなんて思って無かったぜ、ほんのさっきまでは。


卵焼きを作ってあげよう。


と、思ったさっきの俺を取り敢えず何か鈍器で殴りたい。そしたら、この押さえきれない、ぶつけ所の無い衝動も収まるだろう。ドロスちゃんの小さなお手手のどこにコレを楽々ニコニコと持ち上げる力が?俺は苦悶の表情でギリギリやっと持ち上げられるって言うのにさ。まるで対照的だな。


また、問題が出来た。殻が固くて割れない(笑)ほんと、薄ら笑いが勝手に出てしまうくらいめちゃめちゃ固くて歯が立たない。包丁の背で叩いても跳ね返ってくる。お手上げだ、ごめん、ドロスちゃんが折角取ってきてくれたのに。物理的に堅すぎて(ひび)一つ入る様子の無い卵なんて無理だったのさ、残念だけど。


「ドロスちゃん手伝う?」


此の世の終わりみたいな顔をしてるのだろう俺を心配して、眉を下げ、にゅっと覗き込みながら聞いてくる小さな女神。ドロスちゃんに何て顔させてんだ俺。しっかりしろ俺。しかし、もう出来ることないよな俺。ココは薄っぺらいやっすいプライドなんて捨ててドロスちゃんに頼ろうず。


「卵、割れないんだ。ドロスちゃんできる?」


「まっかせてー。」


にはっと満面の笑みを浮かべてドロスちゃんは何を思ったか本棚に向かう。おい、おいい・・・


俺の思った通りドロスちゃんは選ぶでもなく決めていた訳でもないだろう、何やら表題の読めない手頃な厚さの本を持ち出すと、卵を構えてっと言われたので胸の前で構えたかったけど、何分重いからさ。ぐぎぎと言う擬音を溢しながら腰の前辺りで気合いで何とか構えた、俺。


「ドロスちゃん、手加減したよ?」


ちょんっとジャンプしたドロスちゃんは手で持った本を振り下ろす。辞典ほど分厚いワケじゃない、ハードカバーほどの本は見事卵の殻に皹を入れることに成功した。本が凄いのか、ドロスちゃんの力なのか。卵を抱えるのに必死だった俺には衝撃は来なかったのに、スパアアアんン!と言う擬音が聞こえて来そうなそんな情景だった。実際はカンッ程度だったのだけど。


「凄いよ、ドロスちゃん。」


誉めて、ね、誉めて。と言いたげにチラッチラッと俺を横目で見てくるドロスちゃんの頭を、髪の毛をくしゃくしゃと撫でてやる。本の使い方はそうじゃないそうじゃないと思いたいが、皹が入った。これで何とか割れるしやっと作れそうだ、卵焼き。本は本棚に返しておいでとこの規格外の小さな女神に躾をするように言うと、はーい。と返事をして素直に本棚に返しにいく。その間に、フライパンを取り出し火を入れる。弱火に調節して、表面に油を垂らし円を描くように満遍なく油を行き渡らせたら、皹の入った卵を・・・どうしよう?かき混ぜるにしたってボールに入りきらないぞ。バケツかなぁ。いやいや、生理的にバケツをどんなに綺麗に洗ったって嫌だ。そうなると鍋かな。俺は思案し鍋をシンク上の棚板から取り出す。寸胴なんて無いよ、カレー鍋だよ。


卵を持ち上げれないので、皹の入った頭頂部辺りに包丁を差し込みガリッガリッと殻を外していく。うわ、これはこれでけっこう大変。殻を外すと用意しておいたお玉で中をかき混ぜかき混ぜかき混ぜ・・・念入りにかき混ぜてから掬う。黄身の色が緑色とか原色な色してたらどうしようと思ったけど、良かった。半熟みたいなオレンジ色。黄身の色見に安心するとカレー鍋に少しずつ移しながら、持ち上げる事が出来る様になると卵を持って、直接カレー鍋に移す。料理ってこんなに汗だくでするものだっけなあ。しかもただの卵焼きだし。とか頭では愚痴りながらね。カレー鍋に勿論入りきらないので途中で止め、入った分の卵をかき混ぜる作業に入る。こうした作業中も背中に痛いほどドロスちゃんの期待の視線を受けながら。あんまりにも痛いほどの視線に振り返り、


「後は焼くだけだから、待ってて。」

「うん。ドロスちゃん、待ってる。」


細目になって額の汗を手の甲で拭いながらドロスちゃんを見るとニコーっと満面の笑みを浮かべて答える。いい笑顔だ、疲れもふっとんだぜドロスちゃん。カレー鍋に視線を戻し、充分過ぎるほどかき混ぜた卵をお玉で掬う。弱火を中火にしたらフライパンに卵を垂らす、またお玉で掬う。垂らす。量もこんくらいでいいかな。そろそろ巻かなきゃ。箸で隅を剥がすとクルクルと卵を巻いていく。火を止める。あとは醤油でもマヨネーズでも。と、冷蔵庫開ける。・・・醤油ないなあ。どこやったっけ?マヨネーズでいいか。散々待たせたしな、醤油に拘らなくてもいいよな。卵を皿に乗せてマヨネーズを添える。なんか凄い苦労した気もするけど、恐竜卵(仮)焼きの完成でーす。カツブシもあるといんだけど、今はちょっと見当たらないか。


「お待たせ、ドロスちゃん出来たよ。」


「わーい。ごっはんごはんー。」


ごはん?炊いてないよ、勿論。昨日の残りならあるかも。幼女の声を聞くまでごはんの存在をすっかり忘れていた。卵焼きだけで体力も精神もゴッソリ持っていかれたから夜でいいよね炊きたて。ごはんが出てこないのでドロスちゃんはテーブルの下から植物の繊維で編まれた籠を取り出し中からキツネ色に焦げた細四角い棒状の、


「しょーがないなー、パケットを分けてあげよ。」



『ん』と差し出された小さなお手手に乗っていたのはパンだった。あるのかパン。ってもどこでパン作ったの?パン焼けるとこ部屋にはないよ?目をまん丸にして静かに驚いてたら、


「いらないなら食べちゃうゾ。」


ちょっと、ほんのちょっと機嫌悪そうにそう言ってドロスちゃんは更に『ん』と、パンを差し出してくる。疑問はあるが今は苦労して作った卵焼き食べよう。と思い直し、ありがとう。とお礼を言ってパンを受けとる。卵焼きをまずはプレーンでひとくち。


なにコレ。


「「おっいしーい。」」

俺とドロスちゃん見事にハモる。目をキッラキラさせて卵焼きを含むドロスちゃんがふわわ。と感嘆の声をあげて喜んでも俺には目に映らない様な、ほっぺたが落ちるとは言うけど。それどころではない、ほっぺた溶けた上に喉が幸せ過ぎて溶けてしまう。なんじゃこれー。ただの卵焼きを嘗めてた。素材でこんなにうわ、旨くなるのか。大量に食べたいってワケじゃないけど少しずつ口に運びたくなるのは貧乏性なのか(笑)


「うまいっ旨い!」

「ねー!」


視線がかち合ったドロスちゃんは相槌を返してくれる。パケット(パン)を千切って口に放り込みながらドロスちゃんも更に卵焼きを頬張る。きゅぅうーと幸せそうに微笑む。こんなに旨いモノは食ったこと無いと食レポおきまりの言葉だけど、近江肉とか高級品食べたこと無いけど敢えて言う!こんなに旨いモノ食えて幸せです!!と。この卵だとだし巻きは勿体無くて出来ないなあ。高級肉はソース付けるのが勿体無くて岩塩だけで食べたいあれと同じで。と、同時に卵から物凄い生命力を貰ったって感覚がある。一体、何の卵だったんだろ?怖くて聞けない・・・


「美味しかったねー、優くん。」

「ごちそーさま、ドロスちゃん。」




卵焼き美味しかったね、ごちそーさま。


「もっと美味しいもの食べたーいー。」


「また夜でいいよね?疲れたから休むよ・・・」


ニコニコしてたドロスちゃんにちょっと剥れ顔でお願いされたけどもう無理、限界。



おやすみなさい―――――起きたら日本に帰ってたらいいなと思いながら。











ひとまずドロスちゃんこれくらいでっ3っを書こうかな。と 今日も幼女は可愛かったです◎ パワフルでした◎

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