ドロスちゃんの助手
散歩してたら思い付いただけの物語です ぷにぷにドロスちゃんに振り回されるふつーのどこにでも居そうな大学生、神田優の何となく異世界の神様life。
「でわ、大量に美味しい料理のレシピを伝播します。」
俺はそう言うとそれを横目で眺めている幼い少女を窺う。床からの魔光がぼんやりと幼女を照らす。
「おもしろそう!採用。」
見た目は砂場で遊ぶのが好きそうな幼女が身を乗り出してウキウキと俺の言葉に賛同する。許可を受けて俺は頷き手を指定された位置へ幼女に誘導され、
「ここだよ!強く念じてみて。」
指示された通りに強く念じる。俺が今まで挑戦してきた甘い甘いスイーツや世間一般的な卵焼きとか。すると魔光の明かりが目映く照らし出し、正面の床に浮き上がるモニターのビジョンの中で変化が起きた。
俺?俺は神田優、大学1年の童貞Sweet男子ということにしといて。髪型もまぁそれなりで服装も見栄え悪くない程度頑張っててダサくは無いと思いたい。体型も気になることも無いくらい平均で顔はパッとしない。そーだよモテようと頑張ってるけどモテたことねーよ。解ってるから、背伸びしちゃってるのバレバレなんだろ?周りに。そんなことはもうどうでもいい、そう思える事態に俺は巻き込まれたんだ。
ゲームをしてたら突然ゲームのキャラに覗き込まれた。何を言っているかわからないだろう?俺だってどう言っていいかわかんないくらいだしな、わかるぜその気持ち。モニターの中から予定調和の枠外の台詞を聞くのなんてまず無いことだよな。最初はこうだ。
何周目かのSRPGを何となくやっていたら、見たこと無いキャラが混ざってた。隠しキャラかなくらいにしか思ってなかったそのキャラは敵のターンとお構い無しに暴れ回った。まだこの時はイベントか何か何だろ。で済んでた。敵を殲滅した途端。
にたーっと笑ったそのキャラはシナリオクリア画面で俺を覗き込んで来た。そして、
「合格!」と言った。
ありえない!俺がデスクトップ画面の前で固まっていると掌をポン!と可愛く叩き、ゆっくりとのモニターの外に浮き出て来たから吃驚してぎゃああ!って叫んだ。
「あんた、合格!今からドロスちゃんの助手ね。」
何が合格で何の助手かわからない俺は取り敢えず夢だ!って思って右腕をつねってみたら。いったー、痛い。夢じゃない、
「あ、あたしドロスジェルム。ドロスちゃんて呼んでね。」
ドロスちゃんと呼べと言う幼女は俺の手を取って、
「それじゃ行くね。」
そう言って部屋の壁をくり貫いた。え?何々、何が起こってるの。くり貫いた様に見えるけどそうじゃない。部屋中の壁がまるで異次元のあの感じ。ウネウネと動いてて。
「ほい、着いたー。」
着いたそこは20畳ほどの部屋。そこに俺の居た部屋ごと転移していた。幼女・・・ドロスちゃんの部屋って言うには子供らしさがまるっきり足りない。何やら読めない表題の本が沢山納められた本棚。真ん中の無い低いテーブル。真ん中は無い変わりに何かを映し出すモニターにも見える。部屋の隅にクローゼットを確認。
「ここどこだよ。」
無意識にぽつり言葉が零れ落ちる。
「もちろん、わたしの部屋だよー。」
「帰してくれ・・・これは拉致っていう犯罪だぞ。」
にこにこ笑うドロスちゃんは両手を広げてどうだと言いたげ、俺は正直帰りたい・・・
「えっと、それはムリムリ。ダメダメ!それよりぃー、お兄さん名前は?」
剥れた顔をしてぷぅっと頬を膨らませたかと思えばすぐににこにこと微笑み小首をコテンと傾げ、俺の顔を覗き込む。モニターの中から覗き込んできた時のように。正直に名乗ると、
「えー。そっかそっか優って言うんだね。それじゃあ早速お仕事しようねー、優くん。」
おっしゃ!とガッツポーズを取るドロスちゃん。まずは座る。とテーブルの前に案内される。いや、俺はやると言ってない、言ってないよね?けどそれはあっさりスルー。
ドロスちゃんどうやら画面を見せたいみたいで、小さなお手手で、『ん!』と画面を指差す。
指示されるままに画面を覗き込む。そのまま見ててと言うドロスちゃんは指揮棒を取り出し、モニターについっと差し込み。
「ほいじゃ、行っくよー。やり方を見て覚えてねー。」
指揮棒からモヤモヤっと煙が立ったかと思うと、ふわふわと雲になり雨がサアアッと降り注ぐ。まるで神様の箱庭を見ているよう。と言うかやり方を覚えてどうすると言うのか。俺をこんな玩具で遊ばせるために拉致してきたとでも?チラッチラッとこっちを見てくるドロスちゃん。
「見た。覚えたよ。で、これが何してるの?」
ちょっとイライラしちゃったよ俺は。幼女の遊びに付き合ってる暇無いのだ。帰って仕込んで置いたオニオングラタンをオーブンレンジで焼いて食べなきゃなのだ。
「世界に雨を降らしたんだよー。もう!ちゃんとみてたの?」
やおら不機嫌になってドロスちゃんはぷんぷんです。いや、ですが俺はオニオングラタンをですね。
「ほら、感謝してる人がお礼をしてるよ。」
見てみてと言わんばかりにモニターの上でぶんぶんと指揮棒を振るドロスちゃんはモニターと俺の顔を交互に見つめ、
「はい、それじゃ優くんの番。」
そう言って、指揮棒で『ん!』と指示をする。それにしても良くできた玩具だ。モニターの中の人が言ってる声が届くんだから。んえ?声が届いてるだと。
「ドロスちゃん。」
「なあに。」
「聞いてもいいかなー。」「いいよ。何々?」
俺は思いきって思ってる事を聞いてみた。真剣だったドロスちゃんはすぐにににこにこと微笑み小首をコテンと傾げる。
「これ玩具だよね?」
「えっと、それは感謝してる人がなの?」
「これ神様の箱庭だろう?良くできてるけど玩具だよね?」
「何言ってるかなぁ、優くん。本物だよ?ドロスちゃんは女神で調停神なの。」
おい。。おいい。。。ドロスちゃんが痛い事を言ったぞ。不思議そうな顔をしていたと思うとすぐに悪戯っぽくニタリッと笑う。諭すように自分は女神だと言うドロスちゃん。
「えっと、わたしだけで調停してたらね。皆滅んじゃうの。だからね、助手のアイデアを取り入れようと。」
え?皆滅んじゃうの。だって・・・人間が?
どうだと言いたげなドロスちゃんは胸を張って(無いけど、ぺたんこだけど。)
「お兄さんの世界じゃなくてわたしの世界だよ。」
は?どうやらドロスちゃんの言い分を纏めると、俺は異世界で女神だと言う幼女の助手になんだかなっちゃったみたい。これからどうなんだ?