小さい子と思考回路が似ている。だから目を離すと!?
男の子型携帯の機能で相手《女の子のお姉ちゃん》につながったので女の子が話し始めた。
「お姉ちゃん、わたしだよ」
私はヒューマノイフォンがちゃんと出来るか心配だ。
<怜香? この番号は?>
「かっ、かしてもらって」
<そう。良かった>
男の子型携帯が早着替えでしっかりとした美しい衣装を身にまとう。
「…………ホストなの!?」
私の思い込みでの言葉を女の子が冷静に訂正した。
「というかヅカ系?」
「そうなの!?」
女の子の声が遠くなったのが心配だったからかお姉さんが聞いていた。
<聞こえてる?>
<今、1階の本屋さんにいるけど……>
迎えに行くまでそこにいるのよとお姉さんが言う前に女の子が先に応えたので電話相手のお姉ちゃんが聞き返す。
「わかった!! 私の方から行く!!」
<え?>
特にそれを言っておきたいといった感じでしっかりしている所を見せたい女の子が宣言していた。
「お姉ちゃんは待ってていいの!! 迷子なのはお姉ちゃんなんだからあたしが迎えに行く!」
そんなどこかわがままな妹の扱いに慣れているのか、仕方ない子ねを言葉にのせて電話を切る(その間、男の子型携帯がきりっとした表情でまだ見ぬお姉さんの仕草を真似ていた)
<……それならお礼も言いたいし、電話の持ち主さんに来てもらって>
お姉ちゃんはもっと素敵だしと女の子が不服そうな表情で男の子型携帯に辛口評価をする。
「……35点」
男の子型携帯がショックを受けていそうだなとは思ったが、私は気の利いた言葉も思い浮かびそうにないなと困るしかなかった。
一通り電話で話が伝わっているというのもある、私は女の子に一緒に行っていいか尋ねる、
「近くだね、行こうよ!」
女の子が聞いた場所に向かう前に強がりを口にしていた。
「お……お姉ちゃんはしょうがないんだから!」
このデパートの販促か何かで着ぐるみがフロアにうろついているのに気づく男の子型携帯。
「!!」
そのイヌの着ぐるみに男の子型携帯は自律回路『感情プログラム』を刺激された。
小さい子どもと同じように出来るだけ目の届く範囲にいないと心配、電話だからないと不便だしという理由で私は男の子型携帯にいて欲しいので彼のいるはずの方向を振り向いたのだが――
「そうそうっ、はぐれないように手をつな……」
女の子と私はその時になって何処かへ行ってしまっている事に気づいた。
「あれ?」