最新型なのに時代と逆行!?
私はそうだよねといった感じに男の子型携帯に向き直る。再チャレンジな感じで上着に付いているボタンを押そうとした。
「そうよ。まず電話……よしっ」
また何かされるのかもと、内心ビクビクしながら触ろうと思っていたので威嚇のポーズで声を発せられた私は心臓に悪い思いをする。
「とっ、とるるるるっ」
「まだ何もしてないのに~!!」
後ろを振り向くと、お母さんが家の電話で私専用の携帯にかけ終えた所のようであった。
「へ~、初期着信音はそういうのなのね」
「お母さんったら! すごくびっくりしたよおぉ」
私はお母さんに文句を言わずにはいられない。驚きで心臓のドキドキがなかなかおさまらなかった。
結局今度は男の子型携帯を使って仕事が終わって帰宅途中の(駅前の店に飲みに行くとかあるかもしれないがそれは今関係ない)父親に電話をかけてみる。
『で、試しに父さんにかけてみた訳だな』
電話なのだから男の子型携帯の口から声が発せられるのは当然だが、可愛らしい外見で聞くと変だと思う気持ちはぬぐえない。
「可愛い姿なのに聞こえるのがお父さんの声だと変な感じ」
私だけじゃなくてお母さんもそう思うようであった。
「そうよねえ」
男の子型携帯が箱の中にあるお父さんセット(ヒゲとヅラを)を装着する。
「お母さん、この子が健気すぎて涙腺が!!」
お母さんと同じような気持ちを私も感じていた。
「もうっ、お父さんには電話したくない!!」
『なんで!?』
年頃の娘にそう言われてしまったという事で私はお父さんを傷つけてしまったかもしれない。
男の子型携帯に服を引っ張られる私。「ん?」と振り向くと『先程の番号をアドレス帳に登録しますか?』との事みたいだ。勿論家族の一人なので、私は登録するように告げる。男の子型携帯は自分の機能を有効活用されたのが嬉しかったからか、どこか明るい表情をしている様に見えた。
「お」「と」「う」「さ」「ん」
男の子型携帯が一文字ずつボタンを自分で押して登録していた。そうする事で暗記中になるようである。
「ハゲているくせにっ。私より先に名前を呼んでもらうとかっ」
私はお父さんに先を越された(?)悔しさでヒザを折る。
「ハゲ関係無くない? 実物は(まだ)ハゲてないよ」
お母さんが冷静な表情をしていたが、さりげなくひどいツッコミをしていた。
「私も名前で呼んてもらいたいもん!!」
つい私は泣き言をつぶやいてしまう。男の子型携帯がオロオロといった動作をしていた。
「それなら自分のプロフィール設定をしたらどう?」
私はお母さんの助け舟にそれだ! と思う。
「そうだよ! そうすればっ!」
さっき登録していたように私も暗記してもらえばいいんだと男の子型携帯の方を振り向く。
そうしたところ、男の子型携帯がプロフィールの書類を持ってきた。
『どうぞっ』
私は男の子型携帯に書類とペンを手渡される。
「…………………………」
私は隣の自分の部屋に戻って、学習机に書類を置いて書き込んだ。くそうっ電子式じゃないのかよと思いながら。