これが携帯電話なの!?
私は時音。中学一年生の女の子だ。ずっと前から憧れていた(今時は小学生でも持っている子が多いのに)携帯電話をやっと買ってもらったところである。文明人に近づけたかな。
「お母さん進級祝いありがとう!! 大きい箱だね~」
私のお母さんが後ろで含み笑いをしていたが、喜びが勝っていてそれには気づかずにいた。
「はーいっ!」
箱の中には小さな男の子の人形が入っている。
「これって!?」
私はスリープ状態で、体のあちこちにボタンがついている電話(?)にビックリする。
「今日からウチのよ! それが本体なの!」
どうやらお母さんにとって、私のそんなリアクションは待ってましたという感じだったみたいだ。
「これがほっ、本体なの!?」
私は驚きが隠せなかった。携帯だから片手で折りたたむ形式を想像していたので尚更である。
「何と、人型携帯とか!」
携帯よりスマホが主流のこの時代、最新型のスマホを超えた端末の試作品として実験的に特価で販売されていたらしい数台だけのこれをお母さんが買えたのは強運だった。
「人型!!??」
とても珍しいタイプだとの説明を店員さんから聞いてきた私のお母さん。気になるのか急かしてくる。
「ほーら、時音。電源つけてみよう?」
少し焦ったけど、右耳の辺りにあるボタンを押してみた。
「電源はどれ? これ?」
「ハジメマシテ、マスター。オゲンキデスカ?」
人形みたいな外見なのでより幻想的なツールになっている。
「あっ、話したよ!! すごいなー」
どうやら精巧に、人間に近く作られているようで私はビックリしてしまった。小さい子の見た目だから知らない場所にいるって怖がるって感情でもあるのかな、すごいけど扱いに困っちゃうよ。
「目線を外すとかあり!? 人見知り?」
私は受け入れて欲しいので、あやす感じで頼んだ。ただ端末としての機能を試してみたいだけなのにこんな苦労があるだなんて。
「怖くないよ。こっち向いてね~っ」
なかなか振り向いてもらえないので気分的に私も泣きたいくらいだ。
「だめねー、時音はあなたのマスターなんだから」
微笑ましそうに私の母親が諭すようなあやすような言い方をすると、人型携帯の男の子がハッとしたかのような動作をする。
「マス……ター」そう声を発しながら私の方に近づいてきてくれた。あっ可愛いと思って私は男の子型携帯の頭をなでてあげようと手を差し出してみたんだけど――
「よろしく~」
その私の手の動きに驚いたのか男の子型携帯に手をはたかれる。
「怖い~っ」
私はそう拒否られた事がショックで涙が出てきてぐずる。携帯をもらったのは嬉しいのに、その男の子型携帯に嫌がられた事に対して。男の子型携帯がそんなつもりじゃなかったのにマスターを悲しませて!?といった様子でオロオロしていた。
「お母さん 。わっ、私には難しいみたい。使いこなせませせんんっ」
「電源つけただけでしょ。使ってないわよまだ」
その後でお母さんに試してない事を試してみたらとすすめられる。
「使い心地試してないから遅くないでしょ!」
私はお母さんに当然の事を言われてしまった。最新型が規格外過ぎて何をどうすればいいか一時的に頭から抜け落ちてしまったようである。
「使う??」
「基本は電話なんだから!」