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仄暗い短編集

ある美しい女の話

作者: yuri

えーと。何の話でしたっけ?

ああ、姉の話だったかしら。

姉のことが知りたいの?ふふ、照れなくてもいいのよ。

姉をあのコンビニで見つけて?勇気を出して話しかけて?そう。言っちゃ悪いけどあなたそれちょっとストーカー入ってない?

姉は確かにあのコンビニで働いていたわね。でも双子の妹であるあたしも働いていたのよ。だからあなたがコンビニで見た女の子はあたしかもしれないわよ?

え?雰囲気が違う?そうかしら。

確かにあそこで働いていたときとは違うかもしれないわね。だけどほら、働いているときとプライベートで少し性格が違うのは当たり前じゃない?むしろ自然なことじゃないかしら?


さっきも言ったように姉はあたしにそっくりなの。双子だから当たり前?まあそりゃあそうなんだけどね、少しは違いがあるのが普通よね。双子だから、顔がそっくり。身体のありとあらゆるサイズも一緒。だからあなたも間違えたわね。さっきはいきなり話しかけられてびっくりしちゃった。「お久しぶりです、真美さん」だなんて、姉の名前をあなたが言うから。ふふ、間違えられるのはいつもよ。姉とは仲がよくてね。いつも一緒にいた。性格もほとんど一緒なのよ。だから何を考えているかもほとんどわかるわけ。まさに以心伝心ね。

……この紅茶おいしいわね。この喫茶店、雰囲気もとてもいいわ。

そう、あたしは紅茶が好きで。姉も好きだったの。あたしが紅茶を飲みたいと思うとき、姉もそうだった。すべての行動のタイミングが一緒なのね。合わせているわけではないの。自然にそう思ってしまうの。

姉とはすべてが一緒だった……テストの点数。トイレのタイミング。好きな男の子まで。

あたしたちは仲が良かった。こんなに気の合う人はいないわ。

双子に生まれた特権で……あたしたちはよく入れ替わって遊んでいた。何週間も入れ替わったままのときもあった。友達も気づかない、親でさえ気づかない。あたしたちは騙される人たちを見て、くすくす笑っていたわ。ふたりで顔を見合わせて。

でもね、あるときふと感じたの。あたしと姉は入れ替わっても気づかれない。つまり同じ人間がふたりいるということ。ねえ、同じ人間てふたりも要るかしら?

……彼女もそう思ってたらしいのね。

それでね、あたしたち似てるでしょ、だから相手を殺そうとするタイミングも同じだったのね。

手段も同じだった。いくら相手を殺したかったとはいえ……誰よりも愛する姉よ?苦しまずに死んでほしかった。

だから毒で殺したの。相手の紅茶にこっそり混ぜて。そしてご想像どおり、姉も全く同じ行動をとっていたのよ。何故思いつかなかったのかしら。あたしたちの行動はいつも一緒だったんだから。相手を殺そうとするタイミングと方法も、全く同じだったのね。あたしたちはほぼ同時に倒れて、それで、それでね……ひとりは生き残ったの。


まあ、それはあたしなんだけど……でもね、毒の後遺症かしら、病院で目を開いたあたしは記憶をなくしていた。部分的には覚えているの……でも、肝心なところが、頭に霞がかかったようになっていて….…

もうわかるわね。

あたし、どっちだか、わからないの。もともと、どっちでもあまり変わらなかったのよ。だからあたしとりあえず「真奈」と名乗っているけれど、もしかしたらあなたのいうとおり、「真美」かもしれないわね。あなたどっちだと思う?あなたが愛した女は、一体どっちだったんでしょうね?


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― 新着の感想 ―
[一言] 一人称の語り口調で始まって、徐々にシリアスになっていく…。短編とはいえ、物語の雰囲気に飲み込まれてしまいました。ゾワゾワする展開がグッド。結局、彼女は双子のどちらなのでしょう? すごく気にな…
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