Princess duel1
プロローグ程度ですが、やっと更新できました。
これからもまた不定期ですが、よろしくお願いします。
◆◇◆◇◆miyako◇◆◇◆◇
「ただいま、ってあれ?どうしたの雅ちゃん、リュックなんか出して」
学校帰りに寄った人形屋敷から帰ってきてみると居間で二つ年下で小学六年生の妹、雅ちゃんが大きな遠足用のリュックにタオル等を詰め込んでいた。
「お帰り、お兄ちゃん、明後日から林間学校なの。まぁ知ってるわけ無いよね、言ってないし」
一応断っておくと雅ちゃんと僕はあまり仲が良くない、いや良くないどころか劣悪だ。
「そう、楽しんできてね」
僕はそれだけを言うとさっさと自室に向かった。
さっき僕が雅ちゃんに話しかけたのはただ単に目が合ってしまって無視する事が出来なかっただけだ。僕はきっと雅ちゃんから見れば鬱陶しい奴なのだろう。お兄ちゃんと呼ぶ声もどこか棘を感じてしまう。さっき話したように雅ちゃんが林間学校であるということを知らなかったように、普段から話す事は全く無い。別にこんな仲の良くない兄妹なんて珍しくないだろうけど、それでも居心地の悪さはあるし、気まずい。別に僕が雅ちゃんを嫌っているわけじゃない、そこはハッキリしている。でも向こうは僕を嫌っている。理由なんて考えたらいくつか候補が上がるけど決定的な理由なんて無い。
そんなものでしょ?
理由も無く仲のいい兄妹も居れば、理由も無く仲の悪い兄妹も居る。
たまたま僕達はその後者だったって訳だ。
よくある話だよ。
どっちかといえば世の中は後者の方が多いんじゃないかな?別にどうでもいいことなんだけど。
とまぁこんな風に僕は妹の雅ちゃんとちょっとコミュニケーションを交わしただけでこんなにも意味の無い思考をしてしまっている。それほど僕は雅ちゃんの事を意識しているんだろう。
いや、決して僕はシスコンなんかじゃないよ。たださ、気分がブルーになると何か言い訳じみた事を考えてしまうだけなんだ。例えばレンタルビデオの返却日を勘違いしていて安くない延滞料を払った後とかさ、果たしてあのビデオの内容は余分に支払った金額分の価値のある物だったのか?とか、返却日を勘違いしていた自分に対する罰として相当なものなのか?とかやたら程度の低い哲学めいたことを延々と数十分も考えてしまう。つまりはその程度なんだ。余分に払った数百円で一日がブルーになるのと同じくらいに雅ちゃんと話したらブルーになるってだけだ。あれ?この説明だと僕は雅ちゃんのことを嫌ってないのでは無く、ただ単に関心が無いみたいだ。おかしいな、そんなつもりは無かったんだけど。でも無意識にこういった説明になってしまったということはこれが僕の本心であり、雅ちゃんへの素直な思いなのだろう。
つまりは、この時の僕は心の底から楠木雅に対して興味が無く、彼女の心中でどんな想いが渦巻いていたかなんてことはまるで知らなかったってこと。
だからきっとこれは罰なのだ。余りにも無関心で、どうしようもなく怠惰で、救いようが無いほど愚かな僕に対する。
今日は七月四日、未来君がまた新しく小説を書き出して三日が経った。そしてあと二日後には、日向さんとの約束した日になる。
その日に僕はお姫様に会った。