Princess duel13
◆◇◆◇◆miyako◇◆◇◆◇
「難題」その単語が出てくる御伽噺、最初に読んだ本編、そしてこの設定はつまり。
「竹取物語と浦島太郎をそのままくっつけただけじゃん!!」
多少ひねってはあるけど完璧にあの二つの物語の設定と単語が使われている。
「なんだよ最厄の秘薬玉手箱って意味わかんねえよ」
時刻は五時前、一人でぶつぶつと零しながら都は山道を脳内の地図を頼りに早足で駆けている。
「大体読めてきたぞ」
最初に読んだ時に登場したお爺さんは間違いなくこの老翁だ。そして誘拐した少女というのは輝姫、ようはかぐや姫のことだろう。誘拐した経緯はバッサリ端折られてて殺意が沸くほど謎だけど登場人物の目星はだんだんついて来た。
それでも
「やっぱり雅ちゃんがどこにも当てはまらない…」
お爺さん、お婆さん、亀の姫、輝姫、屋敷の主…あとは………
「誰なんだ一体…?」
山道を抜け少し開けた場所に出た。
◆◇◆◇◆miyabi?◇◆◇◆◇
(誰? 一体何をしたの!?)
意識を失うまで震えていた腕も、痛かった足も、冷たかった肌も、まるで言うことを聞かった。
眼すら自由に動かすことが出来ずに目の前の光景から逸らすことも許されない。それは野球場のナイター照明の眩しさにも劣らない光球の雨が次々と降ってくるさまだった。
「あらら、起きてしまいましたか? まあ一日はぐっすり眠っていましたし遅いくらいですね」
自分の意思とは無関係に動く口が流暢に話し出した。その間も光がやむことはないが紙一重で直撃を避け続けている。
「あなたの身体、もし壊してしまったらごめんなさいね」
何それ…壊れる? 冗談じゃないって!
(返してよ、ミヤの身体。勝手に使わないでよ!!)
「今返したらすぐにあなたは粉々になりますわ。アレを避ける自信はありますの?」
眼が無理やりまた光の雨へと向けさせられる。光球は絶え間なく振り続けていてミヤの運動神経では間違いなくすぐに命中してしまうだろう。
「申し訳ありませんわ、どうしても今私とあなたが生き残るにはあなたの協力が必要なのです」
そんな、勝手に巻き込んでおいて何言ってるの?
「お許しください、あの憎き女郎から逃げ切るにはあなたがどうしても必要なのです」
……
(そんなにミヤが…必要なの?)
「はい」
淀みの無い返事に少しだけその言葉を心の中で反芻した。
(ミヤが"いらない"ことはない、必要な子なの?)
「そうでございます」
(そっか、じゃあ貸してあげる。ミヤの身体)
「ありがとうございます」
(でも絶対やられちゃやだよ?)
「心得ておりますよ、あの女朗にやられてはろくに成仏できませんので」
そっか、ミヤ。いらなくないんだ。
「さて、そろそろ目に物見せてやりますよ」
小さな何かを握りこんだ右手に力を込め、雅と月代姫の笑みが重なった。