Princess duel12
目が覚めたら体が鉛のように重くなっていた。
開いた目はまるで水中で開けたようなぼやけたものだった。
耳から入ってくる音は小さくないのにはっきりと聞き取れなかった。
彼が目を覚ました時、感じたものはそれだけだった。
そう彼が目覚めると世界は変わり果てた姿をしていたのだ。
しばらくして何とか視界が安定し、目の前に必死の形相をした亀姫が呼びかけていることだけは認識できた。
彼はいう事をきかない身体をしかりつけるように起き上がった。が、以前のように満足に歩くことはおろか、立つことさえかなわなかった。
そんな彼の姿を見た亀姫は涙ながらに語りだした。
彼が優男と会った後自室に戻ってから彼は忍び込んだ賊に毒を盛られてしまった。その毒は身体を無理矢老いたものへと変化させるものであり、彼の姿は今にも枯れ果てそうな醜い老翁の姿になってしまっていたのだ。
何故彼が賊に襲われたのか?
今のところこの島で一番の権力を持つのは優男である。だがその地位を奪い取りこの島の権力者になろうとする一派があった。彼らは本来であればこの島の権力者になれるはずだった。それはその一派の男と亀姫が夫婦の契りをかわすはずだったからである。
しかし彼が現れ、長期間亀姫のもとに滞在したことによって彼らは不安を抱いた。優男が婚約を破棄し、その身元出不明の男を婿養子として迎え入れて引き続き島の権力者であろうとするのではないのかと。
そのため男を邪魔に思った彼らはその不安を消すために。
亀姫たちはみるみる老いていく男を救うために禁断の秘薬「玉手箱」を使ったという。
玉手箱、それは禁じられた秘術「錬金術」を用いて生み出された最厄の秘薬である。服用すれば不老不死になる。つまり死ぬことが許されなくなるのだ。
しかしその薬は老いることを止める薬であり、老いた身体を若返らせる効果はなかった。その結果男は醜い老翁の姿のまま永遠に生き続ける宿命を背負ってしまったのだ。
男は言った。貴方に非はないと。助けてくれてありがとうと。
その後、男は優男の提言により地上への帰還を決心する。玉手箱により延命に成功したがこのままではまた身柄を狙われる可能性があると。
そして、男は一人の少女と一つの難題を屋敷から奪い、地上へと向かった。