Princess duel8
作者のALL NIGHTが引きこもっているのでハゼンが代筆しております。
「よろしくね、雅ちゃん」
目の前の十代前半の男の人は愛想よくミヤにニコッと笑いかけてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ミヤは失礼の無いようにしないと気をつけて挨拶を返した。
ミヤは今日からこのお家にお世話になり、この人の妹になるって言われたんだ。
四日前、お母さんが死んでから。
「お父さんは何処に行ったの?」
私が小学校に行く前にはもうお父さんはいなかった。いつもミヤはお母さんと小さな部屋で二人きりで過ごしていた。
「お父さん?知らないよ、あんな男、そんなつまらんこと気にするな」
お母さんは別にいなくて当たり前のように振舞っていたからミヤは何もおかしいとは思わなかった。
でもミヤが小学校四年生になった時、クラスでガキ大将と呼ばれるような男の子に何故かミヤのお父さんがいないことが知られた。彼は両親揃っていないことがいわゆる身体障害だったり在日批判だったりすることと同列のことだったらしく、それをもとに何度も嫌がらせや誹謗中傷を受けた。
「お母さん、クラスのいちろーた君がね、ミヤにヒドイ事言うの」
「何だい?情けないね雅は、その一太郎君だかの脛でも思いっきり蹴飛ばしてやんな」
家ではミヤは何度かお母さんに相談して見たけれど、乱暴なことばかり言ってきてもらえなかった。
何度目かの相談に失敗して嫌々学校に来るとミヤの机はなくなっていた。
その時のミヤにはちゃんと友達がいて、クラスの皆から嫌われてるわけでもないなんて思ってた。でも違ったんだ。
みんな、父親のいないミヤなんていなくていいんだ……って
それから先生は一時間分の授業を使い、ミヤの机が無くなったことについて話し合うことになったんだけどミヤを含めて誰も何も言わず、ただこの事は先生が面倒になったのか、適当にお茶を濁され、大事にはならなかった。
その日から、いつも話していたえりちゃんとは顔も見なくなった。いちろーた君には横を通り過ぎるたびに舌打ちされた。お母さんは乱暴なことしか言わなかった。
ミヤは…お父さんに会いたくなった。
無性に会いたくなって仕方なかった。
どうして?どうしてミヤと一緒にいてくれないの?
なんでお母さんしかいないの?
お か あ さ ん な ん か い ら な い の に
ミヤはいらないしいらないものしかちかくにない。
「ねえ雅ちゃん、どうしたの?」
ミヤが部屋に入らずにボーっとしているとお兄ちゃんがいつの間にか横に立っていた。
「……るさい」
ミヤはいらない人だから、周りもいらないばっかり
「いらない…お兄ちゃんなんて、要らないの!!」
目の前の人から逃げるように部屋に入り、ドアを力強く閉めた。
「欲しいものなんて…どこにもないのぉ」
そう、ここはお父さんの弟の家、駆け落ちして家から逃げた挙句にお母さんを捨てた人、ミヤの会いたいお父さんを何処までも嫌っている人の家なんだ。
ミヤなんていらないに決まってるんだ。
あれ?ここ、何処だっけ林の中?
湿った地面から立ち上がり、周りを見渡すと木々に囲まれていた。少し風が吹いていて微かに磯の匂いがする。
確か今日は林間学校でレクリエーションで山の中で肝試しをしててそれから…
ペアの子がミヤをおいて先に行ったんだった。
その後にクラスの粗暴の悪いグループに水かけられそうになって逃げようとしたら足を滑らしたんだ。記憶を裏づけするように左足が痛む。なんとか立てるけどこの足場の悪い山の中だと歩き回るのは無理そうだ。
「どう、しようかな?」
ミヤは小さく独り言をこぼすと
『あらあら、丁度いいところに身体がありました。ちょっとお借りしますね』
姿を見せない声が返事をした。
「…だれ?そこにいるの?」
辺りを見回してもさっきと同じで人影は無い。
『ごめんなさいね、話している暇はありませんの』
声は前からするのか後ろからなのかも判別できない、まるで頭の中から聞こえているような気がした。……?あれ、身体が…動かない?
『申し訳ありませんがあなた様の身体はこの私、月代姫が拝借しております、下手に思考をなさらずにしばらくお休みください』
そう声がして、ミヤの意識はゆっくりと落ちていった。
「…きーー、ききぃーーーーーーー」
という声を耳に残して。
二週間前程前に頼まれたのですが…人の作品に手を入れるのは難しいですね。