表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Crazy doll  作者: 大夜
Princess duel
13/21

Princess duel5

「あれ…もう終わり?」

 原稿を読み終えた僕は思わず未来君を見た。この物語は、いや童話は短すぎる。

 というか曖昧すぎる。


「あぁ、それで終わりだ。感想を頼む」


 未来君はさも当然というように告げた。

 こんなつかみどころの無いただ文字を並べたような童話もどきでなんでそんなにも自信があるんだろう。

「うん、じゃあ童話はあまり読まないから感じたことを一つ、全く意味が分からない」



 がぁ~~~~~~ん



 なんて効果音がつくぐらい未来君は落ち込んだ。

 だって本当に意味が分からないからね、何か教訓めいたことも無いし。

 拾われた女の子の正体すら分からないなんて一種のナポリタン問題レベルだよ。

「分からない…?」

「うん、童話によくある悪いことをしたら報いを受けるみたいな教訓みたいなものものも無いし」

「それは…あれだ竹から女の子だぞ?幻想的じゃないか」

「だからなんなの?竹取物語のオマージュのつもり?」

「ええい!都は文句ばっかりだな!!もういい」

 未来君がすねた。

 ま…いっか。

 でも困ったな、この物語から読み取れるヒントは竹と老夫婦と女の子だけ、これだけの条件から次の主人公を探すのは難しそうだ。


「竹か……海辺沿いに大きな竹林がある山があったような……」


「海辺沿い?なんだそれ?」

 僕の呟きを聞いた未来君が反応していたが無視した。

 前のほうからため息が聞こえたから。


 前を向くとみくが微妙な顔をして原稿を机に置いた。読み終えたみたいだ。

 それに気づいた未来君が期待に満ちた目でみくを見た。

「なんか……悲しいお話だね、一体この女の子の正体はなんなのかな?あたしにはよく分からないや」

 みくはあははと小さく笑って原稿を未来君に渡す。

 未来君は期待していたような感想をもらえずにがっくりしていた。


「みゃー君、またいちゃもんつけてるの?」


 その様子を見ていた鳩子ちゃんが僕に言った。

 でも今回のは本当によく分からないんだよね。

「いちゃもんじゃないよ、僕みたいな凡人には未来君の書く物語は理解できないって言っただけだよ」

「みゃー君、なんかそれ気分悪いよ。あんまり人を馬鹿にしたような言い方はやめたほうがいいよ」

 む、真面目に怒られてしまった。なら謝らないとね。

「ごめんね鳩子ちゃん、僕が感じ悪かったよ、これから気をつけるね」

 何年も前から僕に注意してくれる鳩子ちゃんに対して何回言ったか分からない反省の言葉を返す。

 その言葉を聞いた鳩子ちゃんは呆れたように唸り、席に戻っていった。

「ねぇ楠木、気になってたんだけど、鳳さんとどんな仲なの」

 するとみくがどうでもいい質問をしてきた。

 なので簡潔に答える。

再従兄妹(はとこ)だよ」

 そしたらみくは「ふぇ?」とでも言いたげな顔をした。

 だが説明が面倒なので無視する。

 きっと今のみくの頭の中では再従兄妹ではなく鳩子という言葉が舞っていて、その言葉の意味を考えているのだろ。

「それってどういう意味なの?」

 どうやら考えても分からなかったみたいだ。

 面倒だけど教えてやるか。

「僕の、お爺ちゃんの妹の孫、分かる?」

 みくはその言葉でやっと気づいたようだった。

「ややこしい言い方しないでよ」

「悪かった、悪かった」


 僕の謝罪の言葉はとても軽かった。


 そんな会話をしていると授業開始のチャイムが鳴って、未来君はまた新しい原稿用紙を取り出していた。

 きっとまた続きでも書くのだろう……



 てか授業聞けよ



 という突っ込みはしないでおく、真面目に授業を受けていられるよりもそっちの方が僕としては助かるし。

 だけどあまりペンが進まず、に一枚目を書き終えないうちに授業は終了した。


「さて、帰るか」

 荷物をまとめて今後の予定を決めるために人形屋敷に行こうとするとみくに呼び止められた。


「待って」


 前を向いて、みくを見ると携帯電話を差し出していた。

 うちの学校、携帯電話の持ち込み禁止なのに。

「なに?日向さん」

 僕は全く意味が分からないという顔をして聞いた。

「明日、案内してくれるんでしょ?連絡先、教えてよ」

 なるほど、そういやそんな約束してたな、すっかり忘れてたよ。

「分かった」

 僕は携帯電話を受け取り、自宅の番号を打ち込んで登録して返す。

「ありがと……ってこれ家電じゃない?なんで携帯の番号じゃないの?」

 ふぅ、都会の女子中学生はこれだから困る。

「こんなド田舎の男子中学生は普通携帯電話なんて持ってないの、持ってるの一部の女子くらいだよ」


「え?」


 いやいや「信じられない!」みたいな顔しないでよ、持ってないが当たり前なんだから。僕も必要性を感じないから親にねだったりしないし。

「そうなんだ…赤碕さんと初めて会った時に持ってたから、みんな持ってると思ったんだけど…」

「赤碕さんはここら一帯の地主だからね、持ってないと危険なんだとさ」

「あたしってそんなすごい人に馴れ馴れしくしてたんだ……」

「僕だって驚いたさ、あの赤碕さんと一緒にみくが登校してきた時はさ」

「うん、あれは素敵な出会いだったなぁ…」

「…とりあえずまた明日の予定は今日の七時にでも電話してよ、その時に決めよう」

「わかった、じゃまた明日ね」


 いい加減だれてきた会話を打ち切ると僕は人形屋敷に向かった。



 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「おっそ~~~~~~い!!人形の分際であんまり待たせないでくれる?」


 急ぎ足で人形屋敷に着くとユウキが盛大に迎えてくれた。

 玄関を開けたら西洋、東洋問わずの人形のパレードが開催されている。

 子供が見たら怯えて逃げ出すような不気味な光景だった。

 てかどんだけ暇だったんだよ!!

「悪かったよユウキ、でも人形はお互いさまだろ、」

 どうどうと動物をあやすみたいに僕はユウキをなだめる。

「まったくもう……で?収穫は?」

 落ち着いたユウキは今日の情報をせがんできた。

 ちなみに学校にはユウキの糸が張ってあって、聞こうと思えば聞けるんだけど、常に糸に意識を集中していたら精神がもたないらしい。てな訳で、僕は未来君の書いた童話が完成して、読んだということと、その内容をユウキに伝えた。


「竹林…お爺さん…お婆さん、そして小さな女の子か…なんか聞いたことあるようなお話ね。にしてもオチが納得しないわ、何なの?何時までも輝姫の名前を呼び続けましたとさ…って?」


 ユウキも大体僕と同じ感想だった。


「心当たりのある場所は海辺沿いにある大きな竹林の山があるところなんだけど…結構遠いんだよね」

 鞄からH地方の地図帳を取り出して繰賀市のページを開いた。

「ここが僕たちのいる場所で、心当たりのある竹の多い山がある場所が……」

 何ページかめくり、海辺沿いの小さな山を指差した。

「ここの山なんだけど…ん?この山って……」


「どうかした?」


 急に言葉が途切れた僕にユウキが先を促すように聞いてきた。

 嘘…これってもしかして………



「雅ちゃんの……旅行先だ………」



 僕はこの時とても嫌な予感がしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ