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王立魔法調査院に配属されて、三年が経つ。
俺、ノア・オルセンには、どうあっても解き明かせない謎が一つだけあった。
——同じ職場に所属する上級魔法士、アシェル・ヴァイスという男の意図だ。
彼がなぜか、俺にだけ執拗と言っていいほど構ってくる。
「ノア」
低い、弦楽器の残響のような声が頭上から降ってきた。
羊皮紙の報告書から顔を上げると、影が差し込んでいる。
「はい? アシェルさん」
「昼食は」
「あ、これから食堂に行こうかと……」
「そうか。なら、一緒に行こう」
断る隙など初めから用意されていないかのように、彼は自然な動作で俺の隣へと腰を下ろした。
長身を滑らかに折るその仕草だけで、周囲の空気がわずかに変質する。
案の定、中央食堂を埋めていた同僚たちの視線が一斉にこちらへ集まった。
肌を刺すような好奇と羨望の眼差し。
無理もない。
アシェル・ヴァイス。
透き通るような銀髪に、氷原の湖を思わせる冷涼な青い瞳。
削り出された彫刻のように隙のない顔立ちと、気品に満ちた佇まい。
この王国で「美貌」という言葉を体現したような男だ。
さらに、入所からわずか一年で調査院の最年少上級魔法士へと駆け上がった、誰もが認める規格外の天才でもある。
そんな雲の上の存在が、なぜか平凡な俺の隣で並んでスープの匙を握っているのだ。
居心地の悪さに胃が縮む思いだった。




