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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
観測者編

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87/87

第87話 記録の継承

 目を開けた瞬間、アレンの頬を柔らかな風が撫でた。

 眩しい陽光が差し込み、崩壊しかけていた王都が、ゆっくりと色を取り戻していく。

 焼け落ちたはずの街並みが修復され、黒光に飲まれたはずの空が青へと戻る。

 そして、そこには――リリィ、シオン、ユリア、レイ、そして仲間たちの姿があった。

「アレン……! 生きてるのね……!」

 リリィが涙を浮かべながら抱きついてくる。

 アレンは驚きながらも、その小さな体をしっかりと抱きしめた。

「……ああ。終わったよ。全部」

 空を見上げると、黒光の欠片が光の粒子に変わって消えていく。

 まるで誰かが“ありがとう”と言っているように。

 戦いの記憶が脳裏に蘇る。

 観測の檻を破壊したあと、アレンは世界の“記録”そのものに触れた。

 そこには、数えきれない命の軌跡があった。

 生まれ、笑い、泣き、そして誰かを想い続けた記録。

 人間だけじゃない。獣も、精霊も、草木までも――この世界を生きた全ての記録が、彼の心に流れ込んだ。

“記録は、誰かに受け継がれることで意味を持つ”

 ルクレアの最後の言葉が響く。

 アレンは拳を握りしめた。

 彼女は消えたのではない。

 彼の中に、“観測者”としての意思を残したのだ。

 王城の会議室では、再建の話し合いが始まっていた。

 焦げた地図を前に、アレンは静かに椅子に座る。

「……新しい王国を建てよう」

 アレンが口を開くと、皆の視線が集まる。

「もう“強者だけが生きる”なんて世界は終わりにする。

 力が弱くても、生きることに意味を見出せる国にしたい」

 その言葉に、レイがにやりと笑った。

「お前らしいな。あの“最弱スキル”でここまで来た男だ。説得力あるぜ」

 シオンが頷く。

「あなたの記録が、私たちの未来の指針になる。……アレン様、いや、アレン」

 アレンは少し照れたように笑い、頷いた。

 その夜。

 王都の中央広場には、復興を祝う光の祭典が開かれていた。

 人々の笑顔が灯りのように輝き、音楽が響き渡る。

 アレンは少し離れた丘の上で、その光景を静かに見つめていた。

「……全部、記録しておきたいな」

 手にした古びたノートを開き、羽ペンを走らせる。

『王都、再建。

 皆、生きている。笑っている。

 俺はもう、観測者ではない。

 ただの一人の人間として、この世界に生きている。』

 ページの隅に、小さな文字でこう添えた。

 ──“ルクレアへ。ありがとう。”

 風が吹き、空へ舞い上がる光の粒が夜空を彩る。

 その中に、確かに彼女の姿が見えた気がした。

“あなたの記録は、もう独りじゃない”

 アレンは微笑み、ペンを置いた。

 翌朝。

 王都の鐘が鳴り響き、人々が新しい日を迎える。

 アレンは旅支度を整えていた。

「どこへ行くの?」

 リリィが心配そうに尋ねる。

「まだ記録してない世界がある。

 この国だけじゃなく、もっと広い世界を見て、記しておきたいんだ」

 リリィは少し寂しそうに笑った。

「そっか……また、帰ってくる?」

「もちろん。俺の“記録”は、ここから始まるんだから」

 アレンは背中に剣を背負い、空を見上げる。

 雲の切れ間から差す光が、彼の瞳に反射して輝く。

 ――その瞬間、彼の後ろで子どもたちの声がした。

「ねぇ、あれが“記録の英雄”アレン様だよ!」

「ほんとに一人で世界を救ったの?」

「うん! でも本人は“みんなで救った”って言ってたんだって!」

 その言葉を背に、アレンは小さく笑う。

「……そうだ。俺一人じゃなかった」

 風が吹き抜け、彼のマントがはためく。

 まるで世界そのものが、次の記録を待っているかのように。

 丘の上に立つ一本の大樹。

 その根元に、古びた石碑がある。

“記録とは、忘れないという誓いである。”

――初代王・アレン=クロウル

 年月が流れ、王国は繁栄を極めた。

 しかし、人々は決して忘れなかった。

 ひとりの“最弱の少年”が、世界を救ったということを。

 そして、どこか遠い異国の地。

 風の吹く丘の上で、一人の青年がノートを開いていた。

 その表紙には、あの名が刻まれている。

《記録》

 青年はページをめくり、静かに呟く。

「……これが、俺たちの始まりか」

 空には一筋の光が流れ、まるで“記録の継承”を見届けるように輝いていた。



――この物語は、誰かが記録し続ける限り終わらない。

 最弱だった少年が残した“証”は、未来へと繋がる。

 だから、今日も誰かがペンを取る。

 誰かの涙を、誰かの笑顔を、確かに残すために。

 そして、物語はまた始まる。


**「最弱スキル《記録》で最強になった俺」――完。**

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