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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
観測者編

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85/87

第85話 黒光の侵食

 王都上空を覆う“黒光”は、まるで夜そのものが形を持ったようだった。

 人々は恐怖に凍りつき、空を見上げて祈るしかできない。

「アレン様! このままでは王都全体が呑まれます!」

 シオンの叫びが響く。

 アレンは城壁の上で剣を握りしめた。

「わかってる……だけど、これはただの魔法じゃない」

 刻の核が胸の奥で激しく鼓動を打つ。

 黒光が近づくたびに、体の奥から何かが呼応している。

“これは……記録の反転だ”

 ルクレアの声が頭の中に響く。

「反転……?」

“あなたの世界が“何度も繰り返された”結果生まれた、拒絶の記録。過去の継承者たちの“絶望”そのものよ”

 空から降る黒い粒子が地に触れるたび、建物が音もなく崩れた。

 記録そのものが削り取られていくように――。

「……もう、許さない」

 アレンの瞳が光る。

「みんな、避難を! これは俺が止める!」

「でもアレン!」

 リリィが叫ぶ。

「ダメだよ、あんなの人の手に負えるものじゃない!」

「負えなくても……止めなきゃ、誰も残らない!」

 アレンは右手を胸に当てた。

 刻の核が砕けるように輝き、無数の記録が空へと放たれる。

 過去の戦い、仲間たちの笑顔、失われた命。

 全てを記録してきた彼の力が、今、形を成す。

「来い……俺の“記録”たち!」

 光が爆ぜ、無数の幻影が現れる。

 過去のアレン、倒れた仲間、そして記録された戦いの軌跡――。

 それらが一斉に黒光へと突撃した。

 衝撃波が王都を揺らし、夜空が白く染まる。

「すごい……アレンが“記録”を実体化させてる!」

 リリィが息を呑む。

 だがルクレアの声が再び響いた。

“その力を使えば、あなたの命も削られる。それでも抗うの?”

「当たり前だろ。俺の記録は、仲間たちと生きた証だ!」

 アレンの叫びに呼応して、光が黒を切り裂く。

 夜空が裂け、黒光の中心に巨大な“目”が現れた。

“――観測、続行”

 その瞬間、アレンの記録たちは弾かれ、吹き飛ばされる。

 黒光が逆流し、王都全体を呑み込もうとした。

「アレン!!!」

 リリィが駆け寄る。

 アレンは膝をつきながらも剣を支えに立ち上がる。

「……まだ、終わってない」

 瞳には、確かな“意志”の光が宿っていた。

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