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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
観測者編

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83/87

第83話 観測者ルクレア

 夜明け前の空気は冷たく澄んでいた。

 王都の復興が進む中、ただ一人、アレンだけが眠れずにいた。

 胸の奥――“記録の核”が、絶えず微かな音を立てている。

 まるで何かを訴えかけるように。

「……また、お前か」

 塔の上。月光が差し込む中、アレンは声を放った。

 風の揺らめきと共に、銀の髪が現れる。

「相変わらず感が鋭いのね」

 観測者ルクレア。

 白い外套を纏い、冷たい微笑を浮かべる女。

 その足元に影が伸び、空間がゆらめいた。

「お前は何者だ? 何のために俺を監視している?」

「監視ではない。観測よ。あなたの行動、その記録――それこそが私の使命」

 アレンは剣を構えるが、彼女は動じない。

「やめておきなさい。あなたがその剣を抜けば、この世界の“記録”が一ページ燃えるだけ」

「……どういう意味だ?」

 ルクレアの指先が光り、空に文字が浮かぶ。

 それは無数の線と記号で構成された“記録の写し”だった。

「あなたの世界は、すでに何度も繰り返されている。

 敗北、滅亡、やり直し。

 あなたは七度目の“記録者”――そして最後の一人」

 アレンの手が震えた。

「俺が……七度目?」

「そう。あなたの前にも“記録の継承者”がいた。

 だが、誰一人として真実に辿り着けなかった」

 ルクレアの瞳が、アレンを射抜く。

「アレン。あなたは、この世界を“記録”として残すの? それとも――破棄する?」

 その言葉に、アレンの脳裏に過去の映像が流れる。

 仲間の笑顔。失われた命。救えなかった人々。

「俺は……」

 拳を握る。

「誰も犠牲にしたくない。記録を残す。

 たとえそれが、俺の命を削ることになっても」

 ルクレアはわずかに微笑んだ。

「面白い答えね。ならば――次に会う時、あなたが“継承者”か“破壊者”かを見極めるわ」

 風が吹き抜け、彼女の姿は消える。

 ただ一つ、空に浮かぶ文字だけが残った。

――“観測開始”

 月明かりの下、アレンはその文字を睨みつけた。

 己の運命を、記録として刻むために。

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