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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
王国再建編

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74/87

第74話 闇の観測者

 夜の王都グレイザ。

 再建会議の翌日、アレンは一人、記録室にこもっていた。

 机の上には、無数の魔導紙。

 そのひとつひとつに、薄く青い光が刻まれている。

 それは戦闘中の映像――【記録】スキルで保存された灰鷹団の初陣データだった。

「……ここだ」

 アレンは指先で一枚の紙をなぞる。

 戦闘の終盤、音声記録の中に“声”が混ざっていた。

 ノイズとも違う、確かな意志を持った何か。

 ――『君の記録、面白いね。少し……見せてもらうよ』

 何度再生しても、その瞬間だけ異常反応が出る。

 まるで“外からの視線”が、データの奥でこちらを覗いているようだった。

「誰だ……? 俺のスキルに干渉できる存在なんて――」

 その時、背後から声がした。

「……見つけたのね、アレン」

 振り向くと、そこには長い銀髪の女が立っていた。

 彼女の名はセリア=ノルン。

 かつて王立研究院に属していた天才魔導士。

 だが戦乱の最中、消息を絶っていた人物だった。

「セリア……? 生きていたのか」

「ええ。でも、ただ“生きてる”だけ。

 私はもう、人の領域にはいないわ」

 彼女の瞳は、淡く光を放っていた。

 まるで星空をそのまま閉じ込めたような輝き。

 アレンは息をのむ。

「お前、まさか――」

「そう。私が“闇の観測者”よ。

 この世界の記録を“監視する者”。

 そして、あなたのスキル《記録》は、その本体に最も近い力」

「……どういうことだ?」

 アレンの問いに、セリアはゆっくりと歩み寄る。

「この世界は“記録”でできているの。

 過去も、未来も、存在も。

 あなたのスキルは、その世界の構造そのものに触れてしまっている」

 アレンは息を呑む。

 まるで冗談のような話――けれど、直感がそれを否定できなかった。

「じゃあ、俺の記録に干渉してきた声は……」

「それは“上位存在”。この世界の創造主の一端。

 彼はあなたを観測している。

 この世界の“矛盾”を解くために」

「……矛盾?」

 セリアは静かに微笑んだ。

「この世界は、もう一度壊れる。

 あなたがそれを“記録しなければ”、すべてが消えるの」

 沈黙。

 アレンは拳を握りしめた。

「ふざけるな。俺はこの国をやっと立て直したんだ。

 世界がどうとか、そんな理屈で壊されてたまるか」

「だから、あなたに託すの。

 “継承者”としての使命を」

 セリアはそっとアレンの胸に手を当てた。

 その瞬間、眩しい光が弾けた。

 記録の文字が宙に浮かび、アレンの体の中へと吸い込まれていく。

 視界の奥に、無限に広がる「記録の世界」が見えた。

 過去、現在、未来――すべての出来事が層のように重なり合っている。

(これが……記録の本質……?)

 目を開けた時、セリアの姿はもうなかった。

 ただ一枚の光の羽だけが、空中に残っていた。

 それは淡く光りながら、アレンの手のひらに落ちた。

「……観測者、か」

 アレンは深く息を吸い込んだ。

「いいだろう。

 俺はこの世界を“記録し続ける”。

 壊される前に、俺たちの生きた証を刻むために」

 その瞳には、恐れよりも強い光が宿っていた。

 ――再び、物語は大きく動き出す。

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