黒幕・カイン
倉庫の扉が軋む音を立てて開いた瞬間、アレンたちは素早く影に身を潜めた。中は松明の灯りに照らされ、武器や食糧の箱が乱雑に積み上げられている。その間を、数人の兵士が行き来していた。
「思ったより数が多いな……。」
ライエルが低く呟く。
アレンは額に浮かぶ汗を拭い、深呼吸をした。
「大丈夫だ。俺の“記録”で証拠を残す。それを持ち帰れば、王国に裏切りを証明できる。」
視線を巡らせると、奥の机に広げられた地図が見えた。そこには王国軍の補給路が赤い線で大きく示され、攻撃予定の印がいくつも刻まれている。
「……あれだ。」
アレンは仲間に合図を送り、静かに近づいた。
しかしその時、突然背後で声が響く。
「誰だ!」
巡回兵に気づかれてしまった。瞬間、ナリアが弓を放ち、兵士を沈黙させる。だが物音に気づいた他の兵士たちが一斉にこちらを振り向いた。
「くっ、バレたか!」
ライエルが剣を抜き、前に出る。
「ミカ、後方支援を!」
アレンは叫び、机に駆け寄った。目の前の地図を“記録”のスキルで写し取る。視界に浮かぶ文字と線が光に変わり、記録の本に吸い込まれていく。
「記録完了……!」
だが安堵したのも束の間、奥から現れた男が一歩前に出た。漆黒の鎧を纏ったその姿は、周囲の兵士たちとは明らかに異質だった。
「よくもここまで辿り着いたな……。なるほど、お前が“記録”のスキル持ちか。」
アレンの心臓が跳ねた。
「……まさか、お前が黒幕……?」
男は冷笑を浮かべる。
「名を覚えておけ。俺はカイン。王国を腐らせるために潜り込んだ者だ。」
仲間の誰もが息を呑んだ。
裏切りの刃編――その核心に触れる存在が、ついに姿を現したのだ。
「アレン。証拠を持ち帰れると思うなよ。ここがお前たちの墓場だ!」
倉庫の中、松明の炎が激しく揺らめき、決戦の幕が上がった。




