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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
裏切りの刃編

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第59話 記録が導く突破口

洞窟内に緊張が張りつめる。

 鉄格子の中で震える村人たちの視線が、俺たちに向けられていた。リゼルは妹の手を握り、涙で頬を濡らしている。

 「冷静に行く。罠にはめられても焦るな」

 俺は仲間たちに短く指示を出す。

 ガイルは剣を構え、フィンは弓の矢を一本ずつ確認する。リゼルの目は必死だが、少しだけ決意を取り戻していた。

 俺は【記録】を起動する。過去の戦闘や敵の動きを思い出し、洞窟内の地形、敵の癖、合図のパターンを脳内で再構築する。

 「奴らは必ず合図を出す。そのタイミングで動く。俺たちはその逆を突く」

 息をひそめ、まず入口付近の見張りを正確に仕留める。フィンが矢を放ち、瞬時に一人目が倒れる。残る二人もガイルと俺が対応し、倒すことに成功した。敵は洞窟奥で動揺している。

 「今だ、進め!」

 俺の声で全員が動く。岩の陰を伝い、慎重に奥へ。すると、人質の鎖を操る仕掛けが目に入る。細いワイヤーに連動した鉄の装置が幾重にも張られ、罠が複雑に絡み合っている。

 リゼルが前に出て、震える手で装置を見つめた。

 「ここ……私がやる。失敗すれば村人が……」

 「お前を信じる」俺は短く答えた。

 リゼルは深呼吸をし、記憶を頼りにワイヤーの順番を操作する。失敗すれば即座に鉄格子が落ちる危険がある。指先が触れるたびに、微妙に装置が動き、ギリギリの緊張が全員を包んだ。

 「……よし、通れる!」

 リゼルの声に、俺たちは続いて奥へ進む。だがその瞬間、背後で鈴のような小さな音が響いた。黒装束の幹部だ。目つきは冷たく、笑みを浮かべる。

 「さあ、最弱と最も信じられぬ仲間よ。ここからが本当の勝負だ」

 敵の周囲に罠が作動し、洞窟内の照明が一瞬暗くなる。岩が落ち、煙が立ち、俺たちは視界を奪われる。

 「暗闇でも【記録】を活かせ!」俺は低く叫ぶ。

 過去の断片、音の揺らぎ、敵の呼吸、足音――すべてを脳内で解析し、次の動きを予測する。

 幹部が近づく。左手に長剣、右手には短剣。彼の動きは規則的だが、合図を読めば隙は必ずある。俺は一瞬で動きを【記録】に刻み、タイミングを測った。

 「ガイル、右から!フィン、左から援護!」

 仲間たちは完璧に反応する。俺が先制で突っ込み、幹部の攻撃を弾き返す。衝突の衝撃で岩が崩れ、煙に紛れて敵の足元が見えなくなるが、【記録】は予測を外さなかった。

 リゼルは妹の腕を引き、後方に避難させる。恐怖に顔を歪めつつも、彼女は確実に行動していた。

 「アレン……信じていいよね?」小さな声が耳に届く。

 「ああ、絶対にな」俺は力強く答えた。

 戦いは数分の激戦の後、幹部を洞窟の壁に追い詰める。だが敵は最後の罠を発動させた。天井から鉄格子が落ち、人質が再び危険に晒される。

 「くっ……!」ガイルが叫ぶが、俺は焦らない。脳内で【記録】を解析し、罠の動き、ワイヤーの連動、落下のタイミングを瞬時に計算する。

 「リゼル、今だ!」

 彼女が指示通りに装置を操作。鉄格子は寸前で止まり、人質は無事だ。幹部は驚き、足元を崩して倒れる。

 洞窟内に静寂が戻る。煙と埃の中、俺たちは息を整える。リゼルの妹が抱きつき、涙を流して泣いた。

 「ありがとう……お姉ちゃん、アレンさん!」

 俺は彼女たちを守るように腕を広げ、仲間を見渡す。

 「まだ油断はできない。だが、今は――助けられた。次は、この幹部から組織の情報を引き出す」

 黒装束の幹部は動かない。恐怖か、絶望か。それとも俺たちへの侮蔑か。目の奥にわずかに焦りの色が見える。

 【記録】が俺に告げる。次の一手を、すべての動きから導き出せる、と。

 夜の闇の中、洞窟の出口から冷たい風が吹き込む。俺たちはまだ戦いの途中だ。だが仲間たちの絆は、揺らぎを超え、確実に強固になったのを俺は感じていた。

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