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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
裏切りの刃編

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55/87

第55話 疑心の罠

夜。国境の廃墟に身を潜める俺たちは、焚き火を囲んでいた。

 だが、そこに漂う空気は暖かさとは程遠い。炎が照らす仲間たちの顔には、警戒と疑念の影が濃く落ちていた。

「物資が焼かれたのは事故じゃない」

 俺は口を開き、皆の視線を集めた。

「内部から漏れた情報が、敵の襲撃を呼び込んだ。……誰かが裏切っている」

 沈黙が場を支配する。リナは唇を噛み、ミリアは祈るように手を組み、カイルは睨むように俺を見た。

「俺は何もしていない!」

 カイルの叫びが夜に響く。

「そう言うなら証拠を出せ。じゃなきゃ、俺を疑うのはやめろ!」

「証拠なら……これから出す」

 俺は淡々と答えた。

 実はこの日、俺は“ある仕掛け”を施していた。

 偽の地図を一枚、荷物の中に忍ばせておいたのだ。そこには存在しない遺跡の位置が記されている。もし情報が漏れれば、次の敵はその地点で待ち構えるはず。

「次の任務は、この地図に従って進む」

 俺は焚き火に地図をかざして見せた。

「誰かが裏切っていれば、その証拠は必ず現れる」

 仲間たちは一様に息をのんだ。俺が罠を仕掛けていることを知らない彼らにとっては、本物の地図にしか見えない。

「……そんな手を使うのか」リナが震える声で言った。

「俺たちの中に裏切り者がいるなら、躊躇してる場合じゃない」俺は静かに返す。

 その夜は誰も眠れなかった。

 疑念が渦巻き、焚き火の音だけがやけに大きく聞こえる。

 翌日。俺たちは地図通りに荒野を進んだ。

 やがて、偽の遺跡地点に近づいた瞬間――

「敵だ! 待ち伏せだ!」

 岩陰から武装した集団が飛び出してきた。彼らは俺たちを待ち構えていたかのように、完璧な陣形で迫ってくる。

(やはり……情報が漏れていた!)

 俺の罠は成功した。だが、ここで戦えば仲間が傷つく。

 裏切り者の正体を突き止めるよりも、まずは敵を退けねばならない。

「全員、陣形を整えろ!」

 俺は叫び、剣を抜いた。炎を裂くような鋭い音が荒野に響く。

 仲間たちは動揺しつつも武器を構え、敵を迎え撃った。

 だが俺の視線は戦場を越えて、仲間の一人ひとりを記録し続けていた。

 ――誰が、敵と通じている?

 次の瞬間、俺の耳に小さな声が届いた。

「……やっぱり、仕掛けてきたか」

 それは戦場の混乱の中で、確かに仲間の誰かが呟いた声だった。

 俺は剣を振るいながら、その言葉を脳裏に刻みつける。

(今……言ったのは、誰だ?)

 裏切りの影は、もうすぐ姿を現そうとしていた。

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