第52話 動き出す影
新章に突入して数日。
俺たちの周囲には、言葉にできない緊張感が漂い始めていた。
「記録」を通じて未来の断片を読み取ろうとしても、そこには霧のようなノイズがかかっている。
――誰かが、意図的に俺たちを撹乱している。
「なぁ、最近ギルドの様子おかしくないか?」
隣で剣を研いでいたリオが眉をひそめる。
「おかしい?」
「補給が遅れてるし、任務の割り振りも偏ってる。誰かが裏で手を回してるとしか思えねぇ」
確かに。思い返せば、ここ数日で小さな“ズレ”がいくつも積み重なっていた。
仲間の間に不信感を植え付けるような噂、情報の漏洩、そして……俺のスキル「記録」では本来消えるはずの未来の断片が、なぜか上書きされているように見える現象。
「……裏切り者がいるのか」
俺は低く呟いた。
その言葉に、仲間たちの表情が凍りつく。
沈黙の中で、ただ焚き火の音だけが夜に響いていた。
俺は拳を握りしめる。
「記録」が示す未来が歪められているのなら、誰かが確実に裏で動いている。
その正体を暴かなければ――このパーティは瓦解する。
そして俺の中で一つの決意が固まる。
「次の任務で、裏切り者をあぶり出す」
燃える焚き火に照らされ、俺の影が揺れた。
その影の中に、確かに“もう一つの影”が潜んでいる気配を感じながら。




