第48話 「烈火将ドルガン」
轟音と共に城壁が揺れる。
ドルガンの放った火球が次々と着弾し、石を砕き、兵士たちを巻き込んで爆ぜた。
耳をつんざく悲鳴と、焼け焦げた匂いが辺りに満ちる。
「消火班、急げ! 負傷者を運べ!」
副官が叫ぶが、次から次へと炎が襲いかかる。
リオナは必死に治癒の祈りを捧げていた。だが癒すよりも傷つく者の方が多い。
「このままじゃ……!」
ユウマが歯を食いしばり、剣を抜いた。
「ドルガンを止めるしかない!」
「待て、単独じゃ無謀だ!」
ライラが制止するも、ユウマの瞳には揺るぎがなかった。
「ここで怯えたら、みんな死ぬんだ!」
ユウマが駆け出した瞬間、アレンも後を追った。
「一人じゃ行かせない!」
――仲間を守る。それが自分の選んだ道だ。
帝国軍の前線に躍り出た二人に、ドルガンが炎を纏った槍を構える。
「ほう……小僧どもが俺を止めるつもりか?」
声は低く、だが威圧感に満ちていた。
ユウマは無言で剣を振るった。
火花が散り、空気が焦げる。だがドルガンの一撃は重く、剣ごと弾き飛ばされる。
「ぐっ……!」
ユウマの膝が地に沈む。
「ユウマ!」
アレンは即座に【記録】を発動した。
彼の瞳に、ユウマの剣筋とドルガンの動きが刻まれる。
(……速い。だが、読めない速さじゃない!)
ドルガンの炎槍が突き出される。
アレンは身を捻り、ギリギリでかわした。だが熱風が頬を焼き、皮膚が赤く爛れる。
「ちっ……!」
「なるほど、避けるか。だが……避け続けられるかな?」
ドルガンは楽しげに笑い、次々と炎を放つ。
矢のような火炎、薙ぎ払う火柱――戦場そのものが炎獄に変わる。
アレンは必死に【記録】を重ね、動きを見切ろうとする。
だが、記録するたびに頭が割れるような痛みに襲われた。
(耐えろ……今、止めなきゃ……!)
その時、後方から矢の雨が飛んだ。
「今だ、援護する!」
城壁の弓兵たちが一斉に矢を放ち、ドルガンを牽制する。
「チッ、鼠どもが……!」
ドルガンが一瞬注意を逸らした隙を、ユウマが突いた。
「オオオッ!」
渾身の一撃が炎槍を弾き、火花を散らす。
その刹那――アレンが踏み込んだ。
「これで……!」
記録で見切った軌道に合わせ、剣を振り抜く。
刃がドルガンの鎧を裂き、赤い血が散った。
「ぬぅ……!」
巨体がたじろぐ。だが、次の瞬間には口元が笑みに歪んだ。
「なるほど。面白い……ならば、本気で殺してやろう」
ドルガンの全身から炎が噴き上がる。
城壁の兵士たちが一斉に悲鳴を上げた。
燃え盛る巨人――まるで炎そのものと化した将軍が、剣を構えるアレンとユウマを見据える。
「ここからが……地獄の始まりだ!」
轟音と共に戦場全体が赤に染まった。




