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最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
戦乱編

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第43話「王都の影」

戦いの余波が残る村を後にして、俺たちは王都へ向けて進んでいた。

 道中で見たのは、避難する人々の列と、焼け落ちた集落の数々だった。戦乱はすでに水面下で始まっている――そう思わせる光景だった。

「……王都なら安全、ってわけでもなさそうだな」

 ユウキが馬上から呟いた。

「むしろ、王都の方が危険よ」

 エリスは険しい表情を浮かべる。

「戦争の火種は、まず権力のある場所で広がる。あの黒竜将軍も、必ず王都を狙って動くはず」

 その言葉に、皆が黙り込んだ。

 俺は拳を握り、心の中で誓う。――絶対に、誰も失わせない。

 一方その頃、王都アルヴェリア。

 壮麗な王城の謁見の間では、各地から集まった将軍や貴族たちが、激しい議論を繰り広げていた。

「敵国ゼルドリアが軍を動かしているという報告が入っております! 国境の警備を増強すべきです!」

「馬鹿な、王都の守りを削って国境に回す気か!」

「だが王都に籠っていては、民の不満が募るばかりだ!」

 怒号が飛び交い、議場は混乱の渦に包まれていた。

 玉座に座る国王ライナルトは、重苦しい沈黙の中で皆を見渡す。その隣には、第一王女セシリアが控えていた。彼女の瞳には知性と強い意志が宿り、時折、父に代わって言葉を発していた。

「諸将、静まれ!」

 セシリアの一声が、混乱を切り裂く。

「……情報が錯綜している今こそ、冷静な判断が必要です。黒竜将軍ヴァルガの存在を軽視すべきではありません。奴は必ず、この戦に介入してきます」

 その名に、場の空気が凍りつく。

 誰もが噂で耳にしていた。飛竜を操り、千の兵を一夜で焼き尽くす怪物の存在を。

「……王女殿下。もしヴァルガがこの国に現れるとすれば……どうなさるおつもりで?」

 ある老将軍が問うと、セシリアは一瞬の迷いもなく答えた。

「迎え撃ちます。ただし――そのためには、新たな力が必要です」

 その言葉に、場がざわつく。

「新たな力……まさか、例の勇者召喚計画を――」

「口を慎め!」

 だが既に遅かった。議場の者たちは互いに視線を交わし、囁き合う。

 ――勇者。

 遥か異界から呼び出される、伝説の戦士。だがその儀式は禁忌とされ、成功例は数少ない。

 セシリアは視線を逸らさず、まっすぐに国王を見た。

「父上……この戦を乗り切るには、勇者の力が必要です」

 王は深く目を閉じ、重い沈黙に沈んだ。

 俺たちが王都に着いたのは、それから数日後のことだった。

 巨大な城壁に囲まれた都は、表面上は賑わいを保っていたが、空気は張り詰めていた。兵士の数が多く、街角では密偵のような影が動いている。

「……やっぱりただ事じゃないね」

 リナが肩をすくめる。

 俺は仲間たちを見渡した。

「ここで得られる情報が、今後を左右するはずだ。慎重に動こう」

 だが、王都の奥で進行している陰謀を、この時の俺たちはまだ知らなかった。

 勇者召喚――その禁忌の儀式が、俺たちの運命を大きく揺さぶることになるなど、予想もしなかったのだ。

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