表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
戦乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/87

第40話「戦乱の爪痕」

 夜空を裂くように火の粉が舞い上がっていた。

 遠くの村が炎に包まれ、その赤い光が城壁の上からでもはっきりと見える。風に乗って漂う焦げ臭さは、否応なしに現実を突き付けてきた。

「……間に合わなかったか」

 リュウガが低く呟いた。拳を握りしめ、噛み締めるように唇を噛む。

 彼らが向かっていた村――フラウ村は、すでに魔王軍の前線部隊に襲撃され、壊滅状態にあった。戦乱の波は予想以上に速く、そして容赦がなかった。

「生存者を探さないと……!」

 ミアが真っ先に駆け出す。彼女の治癒魔法は仲間たちの命を何度も救ってきた。炎に照らされたその背中は、恐怖を押し殺しながらも必死に希望を探しているようだった。

 エリスも後に続く。

「敵の残党が潜んでいるかもしれない。リュウガ、私が先導する」

 彼女の剣には血が滲んでいた。だがその瞳には迷いはなかった。

 瓦礫の山と化した村の中で、呻き声が微かに聞こえた。ミアが駆け寄り、崩れた屋根の下から子どもを抱き出す。

「大丈夫、大丈夫だから……!」

 必死に呼びかけながら治癒魔法を放つ。温かな光が彼女の手から溢れ、泣きじゃくる子どもの傷を覆っていった。

 その様子を見守りながら、リュウガは奥歯を強く噛んだ。

(守るはずだったのに……。俺は、また……)

 過去の記憶が蘇る。かつての故郷も、同じように炎に包まれ、家族や仲間が失われていった。あの日の自分と、今の村人たちが重なる。胸をえぐるような痛みが走った。

「リュウガ!」

 声に我に返ると、仲間たちが必死に村人を救出していた。エリスが剣で瓦礫を払い、ミアが治療を施し、ユウキが残骸を力ずくで持ち上げる。

 その姿を見て、リュウガは深く息を吐いた。

「……俺もやらなきゃな」

 彼は剣を抜き、残っていた敵兵の影を追った。焼け落ちた納屋の裏に、魔王軍の兵士が数人潜んでいた。炎に照らされ、狂気を宿した目がこちらを睨む。

「ここで終わらせる……!」

 リュウガが駆け出す。剣が火花を散らし、夜の村に金属音が響き渡った。

 激しい斬撃の応酬。相手の槍を受け流し、逆に懐へ踏み込み斬り払う。二人、三人と倒していくが、息を整える暇もなく次が来る。

「くっ……!」

 額に汗が滲む。だが、背後から仲間の声が飛んできた。

「リュウガ、下がれ!」

 矢の雨が頭上をかすめ、敵兵を次々と貫いた。援護していたのは弓使いのリナだった。彼女は村の高台に陣取り、正確無比な射撃で仲間を守っていた。

「遅れて悪い!」

 リナが駆け寄り、笑みを見せた。

「これ以上、あんたを独りで戦わせない」

 リュウガは思わず苦笑する。

「助かった……」

 敵兵が全滅する頃には、東の空が白み始めていた。長い夜がようやく終わろうとしていた。

 だが、瓦礫に囲まれた村の光景はあまりにも痛ましい。

 ミアの治癒魔法でも助けられなかった者は多く、泣き崩れる生存者の声が辺りに響いていた。

「これが……戦乱の現実、か」

 ユウキが呟き、拳を固く握る。

 リュウガは村人の一人――震える老人に声をかけた。

「俺たちが必ず、この戦いを終わらせる。だから……どうか、生きてくれ」

 老人は涙を流しながら頷いた。その手が、リュウガの手を強く握り返した。

 その時、空に黒い影が差した。

 巨大な飛竜に乗った魔王軍の指揮官が現れたのだ。

「お前たちか……俺の部隊を潰したのは」

 その声は雷鳴のように響き渡る。鋭い眼光がリュウガたちを射抜いた。

 仲間たちの表情が一気に緊張に包まれる。

 戦乱は、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ