第30話 仲間の誓い――そして新たなる戦乱へ
ヴァルドの本拠地からの帰還。
塔を出た瞬間、俺たちの胸に去来したのは、勝利の余韻ではなく――燃え上がる決意だった。
あのヴァルドは逃げた。
しかも「次はもっと強力な配下を連れて戻ってくる」と言い残して。
つまり、戦いはまだ始まったばかりだ。
「助かった……本当に助かった」
塔の前で、カイル――あの囚われの戦士が深々と頭を下げた。
「俺はこの廃都の守護兵だったが、ヴァルドの魔力に囚われ、操り人形にされていた。お前たちがいなければ、ずっとあのままだっただろう」
その声には悔しさが滲んでいた。
「カイル、気にするな。俺たちは仲間を助けた。それだけだ」
俺はそう答えた。だが内心は震えていた。
ヴァルドの支配はこの廃都だけにとどまらない。
奴はもっと大きな計画を進めている――そんな嫌な予感がしていた。
町に戻った俺たちは、ギルドで報告を済ませると、一度宿屋に集まった。
テーブルを囲んだのは俺、ガイル、リィナ、フィン、ソラ、そして新たに加わったカイルだ。
「さて、これからどうする?」
ガイルが腕を組んで問う。
「ヴァルドの次の動きが気になるな。あいつ、ただの盗賊団の頭じゃない」
フィンが矢を手にしながら言う。
「私も同感です」ソラが頷く。「奴の魔力は異常です。あの迷宮の構造も、明らかに人為的なものだった。きっと背後に何かがいる」
背後――その言葉に、場の空気が一段と重くなる。
「一つ、話しておきたいことがある」
カイルが低い声で切り出した。
「俺が知る限り、この廃都は昔、王国の最前線基地だった。ヴァルドはそこに隠されていた“古代兵器”を探している」
「古代兵器……?」
リィナが息を呑んだ。
「もしそれが奴の手に渡れば、この大陸が戦乱に包まれることになる。だから俺は……お前たちと共に戦いたい」
カイルの瞳には強い決意が宿っていた。
「アレン」
リィナが俺を見る。「どうするの? 彼を仲間にする?」
「もちろんだ」俺は即答した。「俺たちはまだ弱い。でも、奴を倒すには力が必要だ。カイル、お前の力を貸してくれ」
カイルは少しだけ笑みを浮かべ、頷いた。
「任せろ。剣の腕には自信がある。これからはお前たちと共に戦おう」
こうして、俺たちのパーティは新たな仲間を迎え、正式に六人となった。
だが、その夜。
俺は宿屋の屋上で一人、夜空を見上げていた。
胸の奥に残っているのは、勝利の安堵よりも不安の方が大きい。
「アレン」
背後から声をかけてきたのはソラだった。
「眠れないのですか?」
「……ああ。ヴァルドが古代兵器を手に入れたらどうなるのか、考えてた」
ソラは静かに月を見上げた。
「きっと、大きな戦乱が始まります。王国だけでなく、帝国や他の国々も巻き込んで」
戦乱――その言葉が胸に重く響いた。
「でもアレン、あなたには仲間がいる」
ソラの声は穏やかだった。
「リィナも、ガイルも、フィンも、カイルも。そして私も。あなたが記録し、導く限り、私たちはきっと負けません」
その言葉に少しだけ肩の力が抜けた。
「……ありがとう、ソラ」
彼女は微笑んだ。「礼を言うのは、勝ってからにしましょう」
翌朝。
俺たちはギルドからの新たな依頼を受けた。
ヴァルドが北方の遺跡に向かったとの情報が入り、そこに古代兵器の手がかりがあるらしい。
そして、それを阻止できるのは俺たちだけだと告げられた。
「行こう」俺は剣を握りしめた。「ここからが本当の戦いだ」
仲間たちが頷く。
宿を出るとき、リィナが小声で言った。
「アレン、次はきっと簡単にはいかないわよ」
「ああ。だからこそ準備がいる」
俺は【記録】のスキルを発動し、これまでの戦いをすべて整理した。
戦術、魔力の流れ、仲間の動き――そのすべてを次に生かすために。
最弱のスキルと笑われた力が、今や俺たちの最大の武器になろうとしていた。
町を出る直前、カイルが俺の肩を叩いた。
「アレン。俺は昔、この遺跡の一部を見たことがある。そこには……とんでもない兵器が眠っていた」
「とんでもない兵器?」
「“竜王兵”だ。千年前、大陸を滅ぼしかけたと言われる伝説の兵器だ」
その名に、俺たちは息を呑んだ。
「もしヴァルドがそれを手に入れれば……」
フィンが言いかけ、首を振った。
想像するだけで恐ろしい。
「だから止める」
俺はきっぱりと言った。「絶対に奴に渡さない」
仲間たちの目に、同じ決意の炎が宿る。
こうして俺たちは出発した。
仲間が増え、目的が明確になり、そして次なる戦いはこれまで以上に過酷になる。
だが不思議と、胸の奥には確かな自信があった。
――もう、俺は一人じゃない。
仲間集め編、ここに完結。
次なる章「戦乱編」が、いよいよ幕を開けようとしていた――。




