第21話 双牙との死闘
倉庫に冷たい夜風が吹き込む中、双剣の男――ザハルがゆっくりと歩み出た。
その気配は、カラムの比ではなかった。
「蛇の牙幹部“双牙”ザハル……」
俺は低く呟いた。
彼は口元に笑みを浮かべ、二本の剣を月明かりにかざす。
「カラムの仇かと思ったが……ただの小僧か。ならばここで消してやる」
その言葉と同時に、ザハルの姿が掻き消えた。
「――速い!?」
刹那、左からの一撃。俺はギリギリで受け止めたが、すぐに右からもう一本の剣が襲いかかる。
双剣。攻撃が二重に重なるその連撃は、カラムの暗殺技術よりも遥かに苛烈だった。
「どうした? 記録の力とやらはもう尽きたのか」
ザハルの声は嘲るようで、だが余裕に満ちていた。
だが俺は【記録】を発動し、彼の剣筋を脳裏に刻み込む。
一撃、二撃、三撃――すべての軌道を読み取り、次の瞬間にはその動きを再現して回避した。
「……ふむ、なるほど。攻撃を“見て”学ぶわけか」
ザハルの目が一瞬だけ鋭さを増す。
「だが――学んだところで追いつけると思うな!」
ザハルは攻撃速度をさらに上げ、嵐のような連撃を繰り出してきた。
そのとき、倉庫の外から轟音が響く。
「アレン! 援護に来たぞ!」
ガイルの大声とともに扉が破られ、仲間たちが駆け込んできた。
「全員、散開して敵を押さえろ! ザハルは俺がやる!」
俺は叫び、迫る商人の傭兵たちをガイルやフィン、リィナが相手取った。
「了解だ!」
ガイルが大剣を振るい、リィナの炎が敵兵を焼き払う。
倉庫の中は一瞬で乱戦となったが、ザハルは一歩も引かない。
「仲間が来たか……ならばまとめて斬り伏せるまでだ!」
ザハルが床を蹴り、一瞬で距離を詰める。その双剣が稲妻のように走り、俺は何度も紙一重で受け止めた。
「くそっ……重い……!」
カラムの刃は速さだったが、ザハルの剣は速さと力の両方を兼ね備えていた。
リゼルが光魔法で援護し、ザハルの影を封じようとする。
「光よ、彼の剣を阻め――《ルクス・シールド》!」
だがザハルは影に頼らず、純粋な剣技だけで光の壁を突破してきた。
「小細工は通じん!」
彼の剣がリゼルの魔法を切り裂き、火花が散る。
「アレン、行くわよ!」
リィナが詠唱を終え、炎と雷の複合魔法を放った。
「――《フレイム・サンダー》!」
炎と雷の奔流がザハルを襲うが、彼は双剣を交差させ、まるで盾のように受け止めた。
「ぬるい!」
彼は爆風を突き破り、俺の真正面に迫った。
「これで終わりだ、小僧!」
ザハルの双剣が交差し、死の軌跡を描く。
俺は――その瞬間を【記録】した。
「今だ……!」
刻んだ動きを逆利用し、俺は彼の剣筋をなぞるように動き、死角から反撃を叩き込んだ。
刃がザハルの腕をかすめ、血が飛び散る。
初めて彼の動きに一撃を与えた。だがザハルの目は怒りではなく、愉快そうに光っていた。
「面白い……お前、カラムより骨があるな」
彼は後退し、血を拭いながら不敵に笑う。
「この勝負、次で決着をつけるぞ――!」
その宣言とともに、ザハルは双剣に漆黒の気を纏わせた。
次回、俺たちは本当の地獄を見ることになる――。




